2016/11/27/日
医療・ヘルスケア事業の現場から
医療コンサルティング事業部 西川
目次
メディヴァの医療コンサルティング部門では、医療機関やクリニックの運営支援に携わっています。地域密着型の中小規模の病院を例に、外国人患者さまに対する通訳サービスを導入した例をご紹介します。
外国人に対する医療サービスの最大の課題は言葉によるコミュニケーションがとれないことです。正しい問診ができないこともあり、最悪の場合は医療ミスに繋がりかねません。日本語がわからない人たちは、病院に行くことを避けるようになり、症状がひどくなってから診療にかかるケースも見られます。 日本語がわからない外国人は、日本語を話せる友人や知人を同行させるケースと、日本語が上手なボランティアが通訳を行うケースの2通りが存在します。しかしながら、前者を選択した場合、友人や知人が通訳をした場合、次のような問題が出てきます。
・医療用語の知識が不十分であるため、患者に正しい情報を提供できていない可能性がある。
・友人や知人に通訳を依頼するため、患者のプライバシーが守られない。
・子供が親の通訳をさせられる場合において、親が重症の場合の伝え方は、精神的影響が大きい。
この医療機関は、日本国内において、外国人(特に南米系)が市人口の約8%を占めているエリアにあります。そして外来患者の約2%が外国人であることから、現地の外国人にも満足してもらえるよう、支援開始1年後、ポルトガル語通訳担当者を採用しました。
通訳担当者には、外国人患者さまの診察対応や処方薬の説明補助だけでなく、病院案内パンフレットや各種検査の説明資料を2ヵ国語で作成してもらい、外国人患者さまが納得して診療できるよう取り組んだ結果、外国人患者さまからは、次のような声をいただきました。
・医師や看護師の説明でわかりにくいことがあっても遠慮して聞かなかったが、納得がいくまで説明を受けることができた。
・自分の症状やお薬のことがようやく理解できた。
・採血や検査などを受ける際にも必要であれば同行してくれるので、検査を受けることに不安がなくなった。
・母国ではなかなか受けられない検査もある。
・看護師、事務員みな、優しいと評判がいい。簡単なポルトガル語を覚えてくれている看護師もおり、母国より対応がいい
通訳サービスを導入することは、医療スタッフにも好影響を与えており、医師や看護師側の言葉の壁によるストレスがなくなり、外国人の対応にも余裕がでて、笑顔で会話ができるようになりました。
また、外国人を雇用する企業の方からも、満足度の高い声をいただいています。
・必ずしも会社の通訳担当者を同行させる必要がなくなったので、通訳者の業務時間の効率が良くなった。
・通訳担当者が職員のプライバシー(病状や既往歴)を知ることがなくなった。
通訳サービスの導入は、外国人患者さまからの満足度を得られていますが、いくつか課題もでてきています。
一つ目は外国人患者さまの増加による診療時間です。 外国人に対する通訳経費は診療報酬の対象外であるため、原則的に医療機関の負担となります。外国人を診療する場合は、通訳を介して行われるため、1人あたりの診療時間が長くかかってしまい、多くの外国人を診療し場合には、医業収益にも影響が出てしまいます。 当院でも例外ではなく、外国人患者さまの診療では通常の患者さまのおよそ3倍の時間がかかってしまいます。さらに、文化の違いか、時間に対して少し遅れてくることがあり、診察医との調整が困難なケースがみられます。
また、自費診療患者の割合がどうしても高くなってしまうことから、金銭的な問題で提供できる医療サービスの制限が出てきたり、未収金が増加するリスクもあります。
外国人診療を行う上では、これまでは少数だったことから、経営的な影響が少なくサービス面重視で行ってきた医療機関も多いと思いますが、今後は診療内容や経営上を考慮した上での医療提供が必要になってくるでしょう。