2020/05/08/金

医療・ヘルスケア事業の現場から

ベトナム ビンズン省でのクリニック運営 開業までの道のり

メディヴァ海外事業部
コンサルタント 小池 依於奈

メディヴァはこれまで国内でのクリニック開業、病院経営支援、国内外の健診センターやデイサービス施設の開業支援や運営のコンサルティングを手がけてまいりました。
その中で、メディヴァ初の海外拠点として、2019年の2月14日にはベトナムのビンズン省・ビンズン新都市において、日系内科クリニックである「ビンズンアーバンクリニック」を開業し医療を提供しています。今回は開業までの経緯とクリニック概要についてご紹介します。

ベトナム ビンズン省にて東急グループが都市開発を進めるビンズン新都市

ビンズン省はベトナム最大の経済都市であるホーチミン市に隣接する省で、南部経済圏の主要省の一つです。ホーチミン市から北に約30km、車で1時間半の場所に位置するのが「ビンズン新都市(Binh Duong New City)」です。この新都市は、東急グループと現地の都市開発を担うベカメックスIDCとの共同出資により設立されたベカメックス東急の主導により、バス交通網や不動産開発など「東急ビンズンガーデンシティ」計画を進めている開発地区です。ビンズン省政府が2014年に行政機能を同新都市に移転し、その他商業地区、教育機関、居住区の開発が進められるなか、新都市での安心した活動や生活のための医療機能の設置のニーズが高まっていました。

メディヴァ単独出資での内科クリニック開業の決定

医療機関の設置に向けて、メディヴァは2017年より、市場調査・競合調査、クリニック開設の事業モデル・スキーム・コンセプト検討などの実証調査を行いました。
調査の結果、ビンズン新都市では医療機能として特にプライマリケアの提供が必要とされることから、風邪、腹痛、皮膚のトラブルなど軽度な急性期疾患の治療が簡易的に実施できる内科クリニックをまずは開設することとしました。総合クリニックや病院ではなく、単科のクリニックから出資を開始したのには大きく2つの理由がありました。

1.外国資本による医療施設開設に課せられる最低資本金設定

クリニックの開設と運営にあたりベトナム国内において現地法人の設立が必要ですが、ベトナムでは100%外国資本による現地法人の設立により外国組織が直接的に経営や管理を担い、会社の決定権を持つことが可能とされています。ただし、ベトナムのWTOサービス分野公約により、外国資本による医療施設開設には、形態に応じてそれぞれ最低資本金設定が課せられており、単科診療所で 200千USドル、複数科診療所では2,000千USドル、病院では20,000千USドルの設定が必要です。

2.流動的な居住者と旧市街地からの地理的関係

ビンズン新都市が位置するトゥーザウモット市ホアフー地区の人口年平均成長率は27.0%と非常に高い数値を示していた一方で、ビンズン新都市に相当するホアフー地区2、3丁目では、6ヶ月未満の短期滞在者数が多く見られ居住者数が安定していませんでした。また、既に都市として成熟しておりクリニックや病院が数多く開業している旧市街地からそう遠くない地理的関係より現時点でのビンズン新都市内の医療機関の利用者は限定的であると考えられました。

最低資本金の壁もありましたが、このように調査時点での新都市には大規模な医療のニーズはありませんでした。しかし、ビンズン新都市に関わる様々な国籍の人々が安心して生活でき、さらなる都市の発展を後押しするために、急を要するような症状や軽い症状であってもすぐに診療を受けることができる環境を整備することがまずは重要な目的であるとし、プライマリケアの提供が可能な内科のクリニックから開設することを決定しました。

ビンズンアーバンクリニックの開設

メディヴァ100%出資による会社設立、内科クリニックのライセンス取得を無事に経て2019年2月にビンズンアーバンクリニックを開設しました。

クリニックでは、日本人を始めとし、ベトナム人、台湾人、韓国人の近隣居住者の皆様に対して、ジャパンクオリティの医療を提供しています。多言語での診療に対応しており、海外旅行保険やクレジットカード付帯保険を利用したキャッシュレス受診も可能です。医師、看護師はベトナム人を採用し、メディヴァのスタッフが現地にて、スタッフの教育にあたりながら患者様のニーズにきめ細やかに対応しています。

今後は、日々発展するビンズン新都市の開発段階に合わせて、それぞれの段階で生じるヘルスケアの需要により、複数科クリニックや健診センターなどの開設の検討も進める予定です。

執筆者:小池 依於奈│Iona KOIKE
神奈川県出身。聖路加国際大学看護学部卒業。看護師、保健師資格を取得後、タイ国・マヒドン大学大学院アセアン保健開発研究所プライマリーヘルケア管理(MPHM)修了。医療の恩恵を受けられずにいる人々への革新的で費用対効果の高い医療提供に貢献したく2017年9月よりメディヴァに参画。