2022/09/29/木
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9月29日、メディヴァが提供する「認知症AR体験『Dementia Eyes』」がアジア健康長寿イノベーション賞2022のテクノロジー部門の準グランプリを受賞しました。 『Dementia Eyes』はAR(拡張現実)技術を搭載したフィルターを通して、奥行き知覚の低下など認知症による視覚的困難さを体感するプログラムです。VRとは異なり、実際の環境で体感することができることから、施設における介護の方法や認知症に配慮した居住環境の見直しなどに活用できる点が評価されました。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、小川朝生医師(国立がん研究センター)、スターリング大学から技術、および認知症に関する知見の協力を基に開発を行いました。
日本政府によるアジア健康構想の一環として、ERIAおよびJCIE が2020年に創設した表彰事業で、健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に資する取り組みをアジア各国から募集し表彰するものです。テクノロジー&イノベーション、コミュニティ、自立支援の3分野で、高齢化による様々な課題の解決となる革新的なプログラム、サービス、製品、政策を募集・表彰することにより、アジア地域内で優れた知見を共有、その実際の応用を後押し、この地域の共通課題である急速な高齢化に共に対応していくことを目的としています。
『Dementia Eyes』は、ARフィルタを通すことで、アルツハイマー型認知症当事者が体験している、「視野狭窄」、「コントラスト感覚の低下」等の視覚への影響を再現し、認知症当事者が見えている世界や、その結果生じる困難を模擬的に体験することができます。従来ある仮想空間で再現するVRとは、現実世界を通じて体験できるという点で一線を画しています。
現在、病院や介護施設での使用だけではなく、一般の方々への認知症の理解の促進にも活用されています。
認知症に関する研修は多々ありますが、座学を中心に受動的に学んだ知識が、学習者の理解として定着し、さらに実際の業務にまで落とし込まれるケースは多くはありません。
一方、体験型の学習には、動画視聴や、VRで認知症当事者が感じている困難を体験するツール等があります。ただし、いずれも実際の業務や状況と関連づけたり、自分事として捉えることは難しいという問題があります。
本サービスは、AR技術を用いることで、病院内の医療従事者が普段から認知症ケアを行っている環境で、認知症当事者の見えている世界や、感じている困難を体験できます。その結果、より自分事として捉えることができ、実際の環境面の課題に気づけるという点で研修効果が高く、知識の習得と共に、認知症当事者に共感し、日常的に行っている自身のケアや、院内の方針の振り返りに繋がります。
AR体験前後には、他の職員と認知症ケアにおける自らの業務を基に振り返る機会を設定したり、認知症ケアに対する知識の教育とも併せて行っています。また、環境アセスメントやAR等を通して認識した環境課題に対し、認知症にやさしいデザイン導入による解決を行なっています。