2022/07/14/木

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

30年間の健診データから見えること

7月に入り、早くも今年の半分が過ぎました。毎日が真夏日のように暑く、湿気もすごく、過ごしにくい日々ですね。節電意識が高いからではなく、単にエアコンが苦手だというだけですが、まだ扇風機だけで頑張っています。合計6台が回っていて、ワンコにもマイ扇風機が!

この度、メディヴァは「人生100年プロジェクト」で経済産業省の補助金事業に採択されました。同事業では、高齢者が健康な時から自分の状況は周囲のリソースを意識し、長く自分らしく自宅で過ごすお手伝いをします。健診や在宅医療の機能を持つ医療機関と協同で行う取り組みになるので、先日ある会員制健診センターを訪問しました。

当該健診センターは約30年前に開設しました。興味深いのは、約30年間のMRI、CTデータ、20年間のPET-CTデータがあること。脳や内臓脂肪の画像もすべて有ります。しかも会員に、丁寧にフォローしているので、その方の家族歴から生活習慣から性格からが全て先生の頭の中に入っています。

幾つかの興味深い症例を見せて頂きました。例えば、若いころから内臓脂肪が溜まっていて、運動をしない方の数十年の経過。どんどんお腹の内臓脂肪は増え、腹筋背筋が細くなり、頭にはモヤモヤとしたものが浮かびます。生活習慣が、腰痛や脳梗塞に繋がるのが見て取れました。運動習慣の有無は明らかに意味がありそうとのこと。

最近は自宅で血圧と体重を測って毎日送信してもらう、ということも実験的にやっていて、元気そうに見えている人でも意外と不整脈が発していることが判明したそうです。特に深酒した次の朝がまずいそう。

一方で、生活習慣が悪いと帰結が悪いかというと必ずしもそうではなく、実は「性格による影響が相当ありそうだ」ということ。几帳面で気にしすぎ、自分にも他人にも厳しい人は悪化しがちで、反対に明るくて、大らかな(大雑把ともいう)人は数値が悪くても、症状が悪化しにくいとのこと。私たちが欧州の事例から学んでずっと提唱している「認知症が脳内で進んでいても、社会的に有意義な生活を送っている人は症状が出にくい」ということに通じるものがあるような気がしました。

このクリニックに集まっているデータは非常に貴重で学術的に分析し、医学に貢献したいと考えているそうです。日本全体では健康診断や検査結果、特定保健指導等で分かった生活歴など貴重なデータが多々あります。これらを一元化し、分析できれば、健康寿命延伸に繋がるであろうことが、この健診機関のデータからも示唆されました。メディヴァも何らかの形でこのデータの分析と国としての取り組み方法を考えるのにご協力できればと思ってます。