現場レポート

2020/12/18/金

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

オンライン診療は後退しているか?

今週に入ってから急に寒くなりました。新型コロナも心配ですが、今風邪を引いて熱でも出そうものなら大変なことになるので、注意が必要ですね。
さて、いろいろな方に聞かれるので、オンライン診療の恒久化に向けた検討状況を少し書かせて頂きます。新聞等には「オンライン診療恒久化の議論は後退している」と書かれていますが、特段後退はしていません。何を根拠に書いているのか、全く不明です。ただ、残念ながら進んでもいません。
オンライン診療については、政府内で2つの箇所で検討が進んでいます。一つは、規制改革推進会議です。もう一つは、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」という、何度名前を聞いても覚えられない検討会です。
厚労省の検討会は4月の特例措置よりもずっと以前から開催されていて、12月21日に13回目が行われます。保守的な委員が圧倒的に優勢で、コロナ禍が原因であったとして、自分たちの頭を飛び越えて、特例措置が「初診を含め全て解禁」という方向で政治決着してしまったことに心底腹を立てています。
特例措置は定期的に見直すことになっているので、厚労省が「オンライン診療を実施している医療機関の数」、「患者の年齢階層」、「不適切事例」などを分析し、資料を提示して今後の在り方について議論をしています。ただ、その内容が保守的過ぎるからか、10月から規制改革推進会議から私ともう一人の委員が追加されました。ここでは、「どういう対象がオンライン診療に適しているのか?」、特に「初診患者を診るべきか?」について議論をしています。「完全な新患」については制限を設けようという議論が優勢ですが、まだ結論は出ていません。早急に結論を出すことによって、保守派も革新派も「損するかも」という感覚が働いて、「一旦、コロナが収束するまでは現状の特例措置を続けて様子を見ませんか?」という案が双方から出て、議論が小休止に入り、11月、12月と2回検討会が飛びました。
一方、診療報酬は厚労省検討会では扱ません。私は個人的には診療報酬が低いことがオンライン診療の拡大を阻んでいる最大の課題だと思っているので、質問もさせて頂きましたが、きっぱりと「当検討会では扱いません」と言われてしまいました。一つの理由は、検討会を主宰する医政局は診療報酬を扱っていない、からだと思います。「診療報酬も上げる方向で検討すべき」という方向性は、今後もう一つの会議体である規制改革推進会議から出していきたいと思っています。
このような感じなので、オンライン診療に関する議論は後退も前進もせず、立ち止まって新型コロナが収まるのを待っている、というのが正しい状況説明だと思われます。また年始から年明けにかけて動く可能性もあるので、また何かあればご報告します。どうか宜しくお願いします。