現場レポート

2021/07/06/火

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

電動車椅子を阻むのは人ではなく環境

梅雨ですね。皆様はいかがお過ごしでしょうか。我が家はじんちゃん(ワンコ)が雨の中、勇猛果敢に散歩に挑んでいます。散歩が終わって、エレベーターに乗せるために抱っこすると。私もびしょ濡れになります、、。

さて、4月末に腸閉塞で開腹手術をし、その後1か月ほどの療養中にWhillの電動車椅子を使ってみました。同社は昨年、経産省の電動モビリティプロジェクトでもご一緒したベンチャー会社です。

前後だけでなく、横に動くomniwheelの特許を持っていて、車椅子の概念を変えるカッコ良い製品を作っています。定価は45万円(介護保険の対象者は、保険適用あり)ですが、この度は、同社のご厚意によりタダでレンタルさせて頂きました。経産省のプロジェクトで設定したターゲット像は、「500メートル以上歩くのが厳しい人」でした。ちょっとは歩ける。でも、長時間は歩けない。でも、活動範囲は広げたい!それって、まさにその頃の私でした。簡単にバラせて車に乗せられるので、マンションまで持ってきてくれました。

まずは、家の周りや駅前に買い物まで。これは問題なくクリア。時速4キロまで出て、そこそこ早足程度で軽快に走ります。通行人や店員に嫌がられることもなく、皆さん親切に対応してくれました。やや困ったのは、エレベーターがどこにあるのか、少し探さなくてはいけないこと。

退院後1週間くらいの時に小松さんと一緒に虎ノ門まで。電車に乗ると、急に不便さが増します。
・車椅子が通るデカい改札が何処にあるか、見えない
・電車に乗るための板を渡してくれる駅員さんが見つからない
・小松さんが階下の改札まで、駅員さんを探しに行くと、本人と車椅子が来てくれと言われる
・metroは電車とホームの間を近くして乗り降りしやすい場所がこしらえてあるけど、そもそもその仕組みが初め分からなかった
・かつ、どのドアがそうなのか、近くまで行かないと見つからない
・しかも、どうやらmetroはそうなってるけど、東急線は成ってない、みたい、、
・その結果、表参道のホームを田園都市線に乗るために、そのドアを探して端から端まで行ったけど、無かった、、、、orz
何度も乗り降りしていると分かるのかもしれない。でも、初めての場所だったり、急に車椅子状態になると、予測可能性が低く、分かりにくく、不安になります。

一方、
・たまたまホームにいて、追いかけてきてくれた駅員さん
・乗り降りする時に手伝ってくれたお兄さん
・場所を空けてくれたおじさん
など、皆さん親切で、温かい気持ちにはなりました。(ちなみに、、、一緒に行った小松大介さんから、お見舞いに福砂屋のカステラを貰いました。ちょっと嬉しい^_^)

一方、二子玉川から用賀まで一駅往復した時はもっと大変なことに。往復約4キロの道のりを、Whill自体は問題なく国分寺崖線の急傾斜も楽々登り、瀬田の交差点を越えて走りました。しかし歩道が狭い。狭いだけならまだ良いんですが、車道に向かってすごく傾いています。電動車椅子も傾くから、結構怖い。実際は転げることはほぼ無いはずなんですが、根性が試されます。

単車乗っていた頃の感覚で、傾いたらスピード出して乗り切る!を何度も繰り返しました。あとは歩道の真ん中に謎の電柱。横を通る幅がないので、しょうがなく車道に出ます。これはとても怖いなぁ。

マンションも問題があります。まず電動車椅子を置く場所がないです。廊下は共用部だから不可。地下の駐輪場も自転車、バイク以外は不可。電源を取る場所もない。しかたなく、玄関に置きました。我が家の玄関は比較的広いので、なんとか入りましたが、グレース用賀の玄関では無理でしょう。エレベーターも狭いので、中でドアを開けてくれている息子の足2度も踏みました、、。玄関のドアは重たく、開けながら入れるのは至難の業です。Whillは優れモノで、スマホで動かせるラジコン機能があるので、降りて自分でドアを押さえながら入れました。

Whill自体はとても良くできているので、ジョイスティック型の操作に少し慣れが必要ですが、軽快に乗れます。問題は、環境ですね。身体が不自由になっても、不安なく自由に行き来できる社会にはまだ遠いです。店舗、公共交通機関、道路、マンション。ちょっとしたサインや目印で随分改善するのでは?とも思うこともありますが、構造物に関わる問題も多く、特にマンションなどは高齢社会を見据えた設計が必要と痛感しました。皆親切に対応してくれただけに、残念な気持ちで、今後社会としてどう対応していくべきかを考える良いきっかけにはなりました。