2022/08/10/水

医療・ヘルスケア事業の現場から

オンライン診療 〜都市型家庭医クリニックでの対応例と今後の展望〜

コンサルタント 正者忠範

はじめに

2020年から急激に発生した新型コロナウイルス感染症。当然、どの医療機関も避けられることなく怒濤のように対応を迫られました。本稿では実際にAクリニックで行ったオンライン診療の実際に加え、今後のオンライン診療についてご紹介致します。

 Aクリニックは、東京都世田谷区にある開院から22年目を迎えた老舗クリニックです。都市型の家庭医クリニックとして、朝8時から夕方19時まで昼休みのない診療を行っております。当院の属する地域には比較的大きな医療機関が多く、ゲートキーパーとして日々地域医療、病診連携にも取り組んでおります。新型コロナウイルス感染症の流行期に入ってからは、朝8時から8時30分までを「発熱・かぜ様症状外来」とし、唾液でのPCR検査(翌日結果報告)を実施するとともに、オンライン診療にも積極的に取り組んでいます。

オンライン診療開始の経緯と実際の患者様像

 2020年の冬、例年であればインフルエンザ患者で診察までの待ち時間も増える時期の待合室ではありますが、この年は一日の患者数が昨年の5割くらいという日もあるくらい閑散としておりました。クリニック内での感染を恐れた受診控えが進んでいたからに他なりません。その中で、感染防止対策の一環として政府より、2020年2月28日の「電話再診における処方可能」という決定を受けて、同年3月3日にコロナウイルス関連の時限的措置として通知が発出されました。そこで、当院でも電話での処方対応を開始致しました。その後、4月10日初診からオンライン診療を可能とするいわゆる「0410通知」をきっかけに、A院でも対応を議論しました。開院以来のモットーでもある「患者さんの視点にたった医療」を提供するために「感染リスクをなくした診療」「受診を控えている患者様を呼び戻す」ということを念頭に、4月22日から電話等によるオンライン診療を開始致しました。

 Aクリニックでは、「すぐにでも開始することが先決」と考え、オンライン診療専用の電子カルテ等を導入するのではなく、「iPhone」と「既存の予約システム」を使ってスモールスタートを試みました。当初、問診等に時間がかかると考えており、予約枠時間を30分/人としておりましたが、実際に始めて見ると、思ったよりも時間はかからず15分/人と変更しています。その後、試行錯誤を経て今も継続しております。また、予約システムを改修し、事前に問診が取れるようにしました。利用を希望する患者様に入力頂くシステムですが、この事前問診をオンライン診療可否の判断としております。後述する「情報通信機器を用いた診療」でも算定する上で必須の項目となっておりますので、しっかり構築しておくことも重要です。

情報通信機器を用いた診療

 こうしてスタートしたオンライン診療ですが、大きな転換を迎えました。2022年4月の診療報酬改定です。いままでの「オンライン診療料」が名前を変え「情報通信機器を用いた診療」となりました。コロナ禍のオンライン診療(特例)(0410通知)と並行して運用されているため、現場では混乱しているところも多いかもしれません。「情報通信機器を用いた診療」は、研修受講や事前問診のルールなどがあり、厚生局への届出が必要です。とは言え、今までの「オンライン診療料」と比べて、ハードルは高くありません。今まで「オンライン診療料」を算定していた医療機関では、専用の電子カルテ等を使用していたと思われますが、前述したとおり、「iPhone(スマートフォン)」での対応が可能です。また、「オンライン診療の適応かどうか事前に問診が必要(概要)」、という基準がありますが、先述の通り、予約システムの改修構築等で態勢を整えます。事前問診を医師が確認し、「オンライン診療不適」とした患者様には、看護師等から連絡し対面診療を促すことが必要です。

 点数は251点と「0410通知(214点)」よりは加算されました。対面診療(281点)よりは低く抑えられておりますが、患者様の利便性を考えて、算定出来るようにしておいたほうがよいと考えられます。
また、この診療報酬では、「電話等で処方ができる」ことが明言されたとも言えます。地方では内規で認められていたところもあったようですが、「0410通知」で時限的な措置が認められ、今回の診療報酬で全国的にも認められることになりました。未だにコロナ特例と併用されているため、分かりづらいところです。これにより、院外薬局との連携も重要になってきます。患者様には、かかりつけ医のみならずかかりつけ薬局もお薦めしておくことが肝要かと考えます。

今後のオンライン診療

 本稿執筆時(2022年7月)、第7波のまっただ中です。発熱や咽頭痛の症状が出ても発熱外来を受診できない方が多くいらっしゃいます。様々な条件はありますが、対面診療より感染リスクを減らせるオンライン診療は、その解決策となり得る可能性は秘めております。東京都では、「陽性者登録センター」というサービスがスタートしました。これは自宅等での自主検査で陽性が判明したが医療機関にかかれないという方が、ご自身でアクセスして、医師に診断してもらい保健所に届出を行う、というものです。これと同じような「発熱外来オンライン診療」を弊社と医療法人社団プラタナスが協力し体制を構築しております。詳細については、お問い合わせ頂ければと存じます。