株式会社メディヴァ

REPORT

現場レポート

22.07.14 thu

医療・ヘルスケア事業の現場から

『リハビリ部門の収益改善と生産性向上(前半)』

コンサルタント 長島花奈

【1.注目されるリハビリテーション部門の生産性】

近年、地域医療構想の文脈において、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟を中心とする回復期病床への転換が進められています。回復期機能を充実させる病院では、リハビリテーション部門が看護部門に次ぐ人員数を抱えることも少なくなく、経営的な視点からも、リハビリテーション部門の生産性に注目が集まっています。

【2.リハビリコンサル】

それに伴い、「現場からは人を増やしてほしいと言われるが、今の人員でも十分なのではないか」「リハビリ収益が落ちているが、これ以上収益を上げることはできないのか」といった悩みを、病院の経営層から相談されることも増えています。

弊社では、リハビリテーション部門に特化した生産性向上や、それによる収益改善のご支援をしています。具体的には、部門別収支管理表やDPCデータを用いた机上調査と、業務調査アプリを用いた業務調査から、潜在的なリハビリテーションニーズの推計や、間接業務の削減施策のご提案をしています。今回は、その中からDPCを用いたデータ分析について、ご紹介いたします。

【3.病院間の比較から見るリハビリニーズ】

支援先の複数の病院間を比較することで、ある傾向が明らかになってきました。今回は、リハビリ部門の収益改善に関して、よく耳にする悩みと合わせて、急性期病床(急性期一般入院料・地域一般入院料)を対象としたリハビリニーズに関する分析結果の一部をご紹介します。

《その1》整形外科がないから、リハビリ対象患者が少ない?

これは最もよく聞かれる悩みの一つです。日本のリハビリテーションは整形外科系の医師を中心に発展してきた歴史的な経緯もあり、リハビリの中心は「整形外科疾患」というイメージをお持ちの方も少なくありません。

以下のグラフは、急性期病床(急性期一般入院料または地域一般入院料を算定する病床)を対象として、「筋骨格系疾患」「外傷・熱傷・中毒」「神経系疾患」「呼吸器系疾患」のリハビリオーダー率と、患者1日あたりリハビリ単位数を示しています。縦軸は入院実患者数に占めるリハビリオーダー率を、横軸は患者1日あたりリハビリ単位数を示しています。各病院は一つのプロットで表されており、グラフの右上に位置するほどリハビリオーダー率も高く、患者あたりリハビリ単位数も多い病院だということを示しています。

一般的な「リハビリ=整形外科」のイメージの通り、変形性関節症などを含む「筋骨格系疾患」と、骨折を含む「外傷・熱傷・中毒」は高いリハビリオーダー率を示します。

一方で、脳梗塞等を中心とする「神経系疾患」や、誤嚥性肺炎などを含む「呼吸器系疾患」の中には、オーダー率も高く、患者1日あたりリハビリ単位数も多い『リハビリ充実群』と、どちらの値も低い『リハビリ後進群』が存在することがわかります。意外なことに、両群の間に、専門診療科やリハビリテーション医の有無、併設する病棟の機能に明らかな相違はありません。違いとして挙げられるのは、『リハビリ充実群』に含まれる病院は、疾患別リハビリテーションのうち、運動器だけでなく、脳血管や呼吸器リハビリテーション料でも施設基準Ⅰを取得していることです。

縦軸:リハビリオーダー率、横軸:患者1日あたりリハビリ単位数 自社調査データより作成

整形外科疾患以外の疾患で『リハビリ充実群』を目指していくためには、単価の高い施設基準の取得に必要な人員配置を整備すると同時に、リハビリ専門職だけでなく医師や病棟看護師も、入院によるADL低下のリスクを理解し、リハビリテーションの必要性を理解することが重要です。その上で、オーダー漏れやオーダーの遅延を防ぐ仕組みづくり、間接業務の削減などのオペレーション改善を行うことで、整形外科がない病院や、整形外科の患者数が少ない病院でも、十分にリハビリテーション部門の生産性向上、収益改善が期待できます。(具体的な生産性向上の施策は、次回ご紹介します。)

《その2》手術をしていないから、リハビリ対象患者がいない?

「うちは手術が少ないから、リハビリが必要な患者も少ない」という声も、少なからず耳にします。

整形外科疾患を中心に、実患者数に占める手術件数の割合と入院中のリハビリオーダー率の相関を見たところ、相関があるのは、「足関節・足部の骨折・脱臼」と「鎖骨・肩甲骨の骨折」のみでした。この2疾患は比較的若年層に多く、術後早期の退院が可能という特徴があります。一方で、高齢者層に多い「股関節・大腿骨近位部骨折」や「胸腰椎位以下骨折損傷」などに着目すると、手術率が高くない病院においても、リハビリオーダー率が高い病院が見受けられます。すなわち、手術をしない保存療法の患者に対しても高い割合でリハビリオーダーが出されていることが推測されます。高齢者特有の疾患において、手術割合とリハビリオーダー率の間に相関がない要因としては、高齢者の場合は特に、手術有無に関わらず入院自体がADL低下のリスクになることから、積極的なリハビリテーションが推奨されていることが考えられます。

自院のリハビリスタッフの稼働に余裕があるようであれば、手術有無に関わらず高齢患者を中心にリハビリを提供する、入院前からフレイルが疑われるような方をスクリーニングして介入するなどして、リハビリスタッフの稼働を上げると良いでしょう。

【4.まとめ】

 リハビリテーションの発展とともに、その対象疾患はますます拡がっていますが、実際にご支援をさせていただくと、意外なほどにリハビリオーダーの出される疾患や提供単位数は、病院の慣習によるところが大きいことを実感します。次回は、掘り起こした潜在的なリハビリニーズにどのように対応していくか、生産性向上の観点でお話ししたいと思います。

リハビリ部門の収益改善と生産性向上(後半)』に続く