現場レポート

2020/05/11/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

緊急事態宣言は5月中旬に解除できる?!(新指標のご紹介)

「8割おじさん」こと西浦北大教授が主張されているように、ウィルスの感染というものは指数関数的に増えるものです。
ただ新型コロナに関しては、自粛の効果や(多分)自然免疫等によって「指数関数的な爆発」は避けられているのではないか、ということを皆さんも薄々感じてらっしゃるのではないか、と思います。もちろん、ハイリスク者が多くいる病院や施設等がクラスター化することはあり得ますし、それを全力で防ぐ必要はあります。
ただ、今のような社会活動全体を止めるという自粛活動が正しいのか?を判断するには、新型コロナとの闘いの「現状と将来」を正しく捉える必要があります。
ところが、今まで「新型コロナは収束しつつあるのか、指数関数的に患者が増えるのか?」を正しく把握するための「指標」がありませんでした。
毎日の感染者数に一喜一憂し、100人越えたの、越えてないのと騒ぎ、、。(でも月曜日は必ず少ないですよね)
これで日本の将来を決めようというのは、羅針盤も無く、大洋に漕ぎ出すようなものです。

今回ご紹介するのは、大阪大学教授(核物理研究センター)の中野貴志先生が考案された「K値」という指標です。
え、医学部の先生じゃないの?と思われるかもしれませんが医学部の先生でなく、さらには感染症の方でないから気づかれたのではないか、と思っています。ちなみに、大阪大学では金田安史副学長(元医学部長)、吉森生命機能研究科長はじめ医学部の先生方にも全面的にendorseされています。
「K値」とは、過去一週間の類型感染者数の増加率を、今日の感染者数を基準として評価したもの、です。
数式としては、X=累計感染者数 Y=1週間前の累計感染者数 
       K=(X-Y)/X=1-Y/X
K値は時の経過ともに安定的に推移し、収束に向かっていきます。また、その速度が国によって異なり、「その国がまだ危うい状態かどうか」を把握することができます。
勿論、突然ある地域にクラスターが発生するなどのことが起こるとK値はブレますが、その後また一定の速度で収束に向かいます。
その収束予測数値と現状のブレにより、予定外が起こっているのか?が把握できるのです。
私はこの指標を中野先生から、1か月ほど前に聞きました。過去のトレンド共に、ゴールデンウイーク明けの数値予測を伺ったのですが、これがドンピシャリの大当たりでした!
中野先生のご説明によると、「日本ではCOVID-19が感染収束に向かって順調に進展していることが分かる」とのこと。
「日本におけるK値の推移は極めて安定的で、ヨーロッパのいくつかの国で見られたような社会活動の制限等の施策による感染収束速度の増加もなければ、米国で見られるような感染再拡大の兆候も見られない。このまま順調な推移が継続すれば、5月中旬には多くの国で感染収束宣言が出ているレベルまで達するであろう」
実はK値を見ると、緊急事態宣言の前後で感染者数の増加パターンは変わっていません。これは、宣言前から手洗いマスク等で国民を自主的に努力していた。または自然免疫がついていた等々の理由はあり得ると思います。理由はともあれ、収束しつつあるなら緊急事態宣言を継続して各種活動を制限し続けることは害の方が大きくなります。

勿論、海外から変異したウィルスが入ってくるなど、コロナの危険性が去ったわけではないので、K値をしっかりモニターし続け、それに応じて臨機応変な対応をとる必要はあるでしょうし、引き続き3密を避ける、手洗い、マスク等は気を付けるべきでしょう。
でも、最も力を注ぐべきは社会全体のロックダウンではなく、病院や施設等、「ハイリスク×構造的3密環境」でクラスター爆発が起きないよう資源を集中すること。そのためにも、医師が必要と思った人に対しては早期に検査が出来て、早期に介入できる体制を早急に整備すべきと思います。

K値の詳しい解説は、大阪大学准教授(経済学)の安田洋祐先生がブログに書かれているのが分かりやすいのでご紹介します。そこから、中野先生の論文も辿れます。
国に先んじて、地方自治体では指標としてK値の活用に積極的です。厚労省でも議論は始まっています。久しぶりの明るいニュースです!
※ちなみに、「8割減らす」は「人出を8割減」ではないこと、ご存じでした?
「8割減らす」べきは「接触」です。人出が半減し、減った分だけ接触が半減すると0.5×0.5=0.25で、ほぼ8割です。マスコミは「人が8割減ってない!」と言っていますね。「8割おじさん」も政府も、誤解を放置していますが、悪い意図を感じます、、。