株式会社メディヴァ

REPORT

現場レポート

22.06.07 tue

医療・ヘルスケア事業の現場から

介護保険の創成期から挑戦を重ねてきた法人の承継

はじめに

弊社は医療・介護などヘルスケア領域に特化したコンサルティングを行っていますが、様々なクライアント、金融機関、関わる業種・業界の企業と協業する中で事業承継に関してご相談を受けることが多々ございます。

その中でご支援した、とある看護小規模多機能や老人ホームなど複数事業を運営する法人の承継事例についてご紹介します。今回の売主様の動機と同様の悩みを抱える法人様は世の中に多くおられると感じ、悩み解決の一助になれば幸いです。

本件の承継背景

【外部環境の状況】

本クライアントは地方の歴史のある町で事業運営をしています。地域の少子高齢化は全国屈指の進展度合いです。高齢者は増加し介護需要が高まる半面、当該地域だけで募集活動を行っていても働き手の確保は年々難易度が上昇しています。一方同業者は本クライアントが創業した当初と比べ増加しており、利用者獲得競争は厳しさを増しています。

【クライアント内部の状況】

本クライアントは介護保険の開始間もなくデイサービスを開始、保険改定の度に理解に努め、老人ホーム、看護小規模多機能と新規事業に挑戦し約10事業所まで業容拡大されました。創業者の実直な人柄を背景に地域から高い信頼を得ておられます。

しかし地域一と言える規模へ拡大する中で、リーダー育成が追い付かず、創業者一人で十分に目が行き届く範囲を超えている状況でした。結果として利用者獲得面で同業者と比較して劣後しつつあり、最近では各事業の稼働が低下傾向です。

法人財務は稼働低下が影響し悪化しており、EBITDAが約15百万円/年であるのに対し、金融機関借入は250百万円と債務償還年数は長期化しています。

このような中で自身も引退を考える年齢に差し掛かりつつありましたが、事業を引き継いでくれる親族や社内における後継者候補はおられませんでした。

 育てて来た事業は地域にとっては、高齢者の生活支援、働く世代の雇用の場、両面から重要なインフラになっています。維持発展させることが創業者としての責任と考え、事業承継を視野に弊社へ相談を頂きました。

承継背景のポイント

・働き手の確保
・リーダー育成
・中規模法人の運営ノウハウ
・各事業の稼働低下
・後継者不在

承継者の選定

当該案件においては、最終的に非営利法人を主に全国で医療介護事業を運営しておられる法人グループへ承継を行いました。

承継者の選定は以下の視点から絞り込みを行いました。

①本クライアントが求める承継条件の優先順位の整理

②弊社による当該事業の客観的な課題分析と対策を実行できる法人の抽出

①本クライアントが求める承継条件の優先順位の整理

承継に際しては色々と条件を付けたくなるものです。従業員を継続雇用して欲しい、育てて来た事業を発展させて欲しい、株式の譲渡対価はたくさん欲しい、取引先を変えないで欲しい。たくさん条件を付ければ、もちろん承継候補が少なくなります。今回も会話をする中で条件の優先順位を付けました。本件において最も重視する条件は事業の維持発展で、次に譲渡対価でした。

②弊社による当該事業の客観的な課題分析と対策を実行できる法人の抽出

弊社はコンサルティングを業としており、実績データや会話を通じて課題と対策立案、財務健全化の道筋を整理することができます。

当該事業の大きな課題は2点です。一つ目に悪い財務の原因たる稼働低下、二つ目に少子高齢化が全国でも屈指の立地であることです。

①にて最優先は事業の維持発展です。当該事業は既に地域一の規模に拡大しており、維持発展をしようと思ったら中規模以上の法人を成長させられるリーダーやガバナンス体制を作れる法人である必要があります。その面では本クライアント以上の事業所運営をしている法人が望ましいと考えられました。

②にて確認できた課題のうち稼働については、同事業を上手に運営できている法人であれば問題が無いと理解できました。その面では多くの候補が考えられます。ただ立地の課題は複雑です。少子高齢化の最前線とも言える立地ですから、10年20年同規模での事業継続はニーズと働き手の両面から困難でしょう。とはいえ地域生活においては重要なインフラです。もちろん黒字を維持できる限りは維持した方が良いでしょうが、時期に応じダウンサイジングしながら多少の赤字でも地域生活を支えるため事業運営を続ける覚悟を持てる法人である必要があります。その意味で営利法人は選択肢とは言えず、非営利性の強い法人が望ましいと考えました。

 今回は弊社がコンサルティングを通じてお付き合いのある、全国規模で医療介護事業を行っておられる非営利法人へ提案を行い、検討が開始しました。

折衝、譲受

最終的に妥結した承継条件は当初本クライアントが考えていた条件とはかなり異なりました。

当初は株式100%の譲渡に伴い創業者は引退、役員貸付を精算、創業者個人が保有する事業用地は継続して法人と賃貸借契約を維持、職員は継続雇用するとの内容でした。

一方最終的には、株式100%の譲渡価格は当初提示額の半額、役員貸付は実質放棄、創業者個人が保有する事業用地は法人へ無償譲渡、職員はもちろん継続雇用です。加え本クライアントは取締役会長として留任することになりました。

折衝の過程では大きく二つの要因があったと感じます。

一つ目は承継に際し、創業者が最も重視していた当該事業の維持発展で、その考えを変えませんでした。目の前に承継対価という大きな金額が見える時に、翻意しないことは容易ではありませんが、本創業者にはそれができました。

二つ目に創業者が法人の維持発展のためには財務リストラクチャリングの必要性を理解し実行したことが挙げられます。承継候補は長期の稼働低下による財務悪化は著しく財務リストラを伴わないと承継は困難と考えました。そこで弊社は抜本的・広範囲に及ぶ財務リストラ案を作成し、本クライアント、承継候補者と折衝を繰り返しました。コンサルティングを通じて培って来た弊社のノウハウが生きた出来事に感じました。

 なお承継者側も創業者に取締役会長として留任頂くにあたり、比較的良い報酬をお支払いする決定をしたことも成功要因の一つでした。

さいごに

コロナ禍でご苦労をされておられる事業者さまがたくさんおられるものと推察します。

弊社は貴社のご希望に合わせ丁寧に、コンサルティング、事業承継など幅広くお手伝いさせて頂きます。上述の事例のように一筋縄で進まないと思われる場合も知恵を絞ることができます。運営を負担に感じている、資金繰りが厳しいなどお悩みがございましたら、お気軽にお問合せください。