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2024/05/10/金

働く人たち

福岡市認知症フレンドリーセンターを見学してきました!~開設運営責任者の想いとセンターの意義~

こんにちは。採用チームの大迫です。

メディヴァは昨年9月、またひとつ無人島に新しい街を創り上げました。
それは、「福岡市認知症フレンドリーセンター」。
福岡市に約4万人いると言われる認知症の人とそのご家族のサポートを目的とした施設で、“認知症フレンドリーシティ”を宣言する市と協力してメディヴァが開設支援を行い、その後の運営も受託しています。

認知症について様々な相談ができるだけでなく、認知症のことを学び、体験し、当事者同士や企業などとの交流もできる多機能な施設です。

<福岡市認知症フレンドリーセンターの詳細はこちら>

今回、初めて現地を見学してきたのでレポートさせていただきます。
少し長めですが、開設の経緯やこれからのことについても責任者に聞きましたので、ぜひお読みください!

場所は、福岡市の中央区舞鶴。

福岡市地下鉄「赤坂駅」からすぐ近くで、福岡空港からも30分かからないところにあります。綺麗なビジネス街にあるビルに入っていて、フレンドリーセンター以外にも福岡市の関連施設があります。

受付に入ると、大きな文字とピクトグラムが!

いたるところにこのような表記(手がかり)があり、記憶に頼らず行きたい場所がわかるようになっています。この「認知症にもやさしいデザイン」は、英国スターリング大学認知症サービス開発センター(DSDC)の認証を授与されています。

認知症の人たちが企業の製品開発に携わって生まれた、道具や器具たち。
結ばなくてもいいエプロン、安全で操作しやすいガスコンロなど、認知症でなくても便利に使えそうな物ばかりです。

企業にとっては認知症の人が本当に必要としているものを製品開発に活かせ、認知症の人にとっては自分にしかできない経験を役立てられる機会になっています。その開発プロセスにも、展示エリアの企画・デザインにも、メディヴァの社員が関わっています!

洗練された中に、シンプルさも感じるインテリア。

緻密に計算されたデザインは居心地の良さだけでなく、空間を認識しやすい配色がされており、働くスタッフにとっても快適な環境のように感じました。古い写真たちはインテリアの一つかと思いましたが、認知症の人が過去を思い出し、会話のきっかけになるよう掲載しているそうです。

こちらは認知症の世界を体験できるブース。
認知症を自分ごととして考えるきっかけを与えてくれます。慶応大学とメディヴァが共同開発したARシステムを、私も体験してみました!

感じたこととしては・・

<視野がかなり狭くなる>

すぐ脇に立っている人も見えなくなります・・。

感覚をつかもうと意識を集中しているときに、人が急に目の前に現れたり、肩を叩かれたりすると思いのほかビックリします。認知症の人に話しかけるときは、視野に入る正面から声をかけ、驚かせないようにすることが大切なのだと分かりました。

<距離感がつかめない>

視界が常にぼんやりしていて、前に歩いても進んでいる感覚がありません。正面の椅子まであと何歩なんだろう・・とかなり慎重になってしまいました。

ただ、椅子の色が見えやすく、座るときにもグラグラせず安定していたのは安心感がありました。まさにこれは認知症の人にとって安心できる要素で、配慮すべきことなのだとも思いました。

<色のコントラストがはっきりしない>

濃いめの色はすべて「黒」に見え、こげ茶や紺色などが並んでいると区別がつきません・・
また、視界がぼんやりしていることで物の輪郭や模様もハッキリわかりません。

この床の黒いカーペットが、まるで大きな穴のように見えます。
当事者の中には、カフェなどのお店の入り口にこのような黒いカーペットが敷いてあると避けて入ろうとする人もいるそうで、その気持ちがとても理解できました。

よくあるトイレのピクトグラムも背景と色調が似ていると、離れたところからでは真っ黒にしか見えず・・

ここまで近づいてようやく判別できました。
(やはりこの時も、壁までの距離感がつかめず・・)

この体験で、認知症は”記憶”だけでなく、”視覚情報の処理”にも障害が現れることがわかりました。街中にたくさんある道案内やトイレ表記などは当事者にとって相当見えづらいのではと感じ、認知症の人に対しても世の中のバリアフリー化がどんどん進んでいってほしいと思いました。

言葉ではなかなか説明しにくいですが、少しでもイメージが伝わっていれば幸いです。

ーーー開設までのこと、これからのことを責任者に聞きましたーーー

【コンサルタント・K】

福岡市とは、2018年から認知症分野の課題に一緒に取り組んできました。

市の理念である「認知症当事者が住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせるまちづくり」に深く共感し、この分野のさらなる普及・発展に向けて取り組む中で、市の機能を集約した拠点を創る機会に恵まれました。それが、この福岡市認知症フレンドリーセンターです。
AR認知症体験といった様々な機能は高い評価をいただいており、1年で1,000人を想定していた来館者は、たった半年で4,000人を超えています。

このプロジェクトが成功した要因の1つは、担当者との密なコミュニケーションだと思います。
今回、特に大きな命題だったのはセンターの開設を当初の予定(’23年9月)に間に合わせることで、関係者たちの目指したいものを具現化すべく、丁寧にプロセスを進めていくことが求められました。
方向性について合意を得たあと、各部屋のレイアウトや配置、床や壁の配色、サインの内容、ライトの照度や色など、細かな点を含めて一つ一つ慎重に相談し決定していった結果、遅れなく開設できただけでなく、当初のイメージ以上のセンターを実現できたと思っています。

その後の運営をメディヴァが受託していることも、予想以上に良い影響が出ているのではと思います。その例としては、センターの情報や取り組みをSNSなどで広く発信し、一般の方だけでなく企業の担当者、福岡市以外の行政の担当者、海外からの視察など、幅ひろい方々にお越しいただいていることです。
もう一つは、仲間たちとの出会いです。メンバーは入職してから1年も経っていませんが、一人ひとりが当事者の視点に立ち、どうしたら認知症の人の生活を改善できるかをゼロから考えていて、センターの雰囲気づくりにも貢献してくれています。
そんな仲間たちと出会えたことは、本当に幸せなことだと思います。

そして、これから取り組もうとしているのは若年性認知症の人の支援です。
人数は認知症全体の数%ですが、働き盛りの人がほとんどで、家族もまだ若く、中には小さい子供がいる家庭もあります。認知症高齢者とは違う課題を、様々な分野の関係者と連携しながら解決する必要があります。「働き続けるにはどうしたらいいか?」「家族とどう関わったらいいか?」「社会に関わり続けるにはどうしたらいいか?」など様々な相談を受け、必要な機関に繋げる体制を目指します。
しっかりとしたサポート体制があれば、若年性認知症の人も、その人らしい豊かな人生を送れると思っています。

日本は世界の中でも高齢先進国であり、認知症先進国です。
フレンドリーセンターを拠点として、認知症とポジティブに向き合える仲間たちのネットワークをどんどん広げていき、認知症とともに生きる社会創りに貢献していきたいです。
また、これから高齢化が進む諸外国にとってもモデルとなるような取り組みを、今後も続けていきたいと思っています。

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いかがでしたでしょうか。

ここで働くスタッフたちは、認知症の人やご家族の相談対応はもちろん、上述のようなSNSでの情報発信、イベントの企画運営など、幅ひろい業務に取り組んでいます。
「このお仕事にやりがいと楽しさを感じる」と話し、仲間と明るくコミュニケーションを交わす姿や、来館者の相談を親身になって受ける姿勢がとても印象的でした。認知症の知見がないまま入職した者もいますが、この分野の発展に熱意を持ち、新しいことにワクワク感を持って挑戦しているからこそ、やりがいや楽しさを感じられているのではと思います。
この姿勢はまさにメディヴァの理念そのもので、無人島にできた新しい街がどんどん発展していくさまを見ているようでした。

そして、私自身の認知症への理解もとても深まりました。
それまで私の中では「認知症になったら自分だけでなく家族も不幸になってしまう」というネガティブなイメージが強かったですが、一人ひとりの理解と適切なサポート体制があれば皆が安心して暮らせるのだと知り、認知症に対しても未来に対してもポジティブなイメージを持つことができました。
このようなセンターが全国各地にでき、認知症の人に優しい日本社会が創られていくことを願ってやみません。

ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひ福岡市認知症フレンドリーセンターに足を運んでみてください。言葉以上に、この分野への理解を深めていただけると思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。