2017/09/25/月
製品開発
「診療圏調査」とは、その場所で開業した際に一日あたりどれくらいの外来患者数が見込めるのか(推定外来患者数)把握するための調査を指します。推定外来患者数は、周辺人口と受療率を掛け合わせることで算出します。周辺の範囲は、一般的には住民が通常利用する医療機関までの距離や時間、交通の便などに基づいて定義されることが多いです。
詳しくは「診療圏調査とは? 定性調査と定量調査」にて解説しておりますので、ぜひご覧ください。
当社ではクリニックの新規・承継開業を検討する、医師や関係者向けに診療圏調査が可能なアプリを開発しました。日本全国の外来患者の簡易市場調査を、住所の入力のみで気軽に実施できます。検索地域の周辺競合医療機関も見ることができます。クリニック開業向け物件・承継情報も確認できます。
利用するメリットとして、これまで業者等に別途依頼する必要があった診療圏調査をご自身のスマートフォンで手軽に行え、候補地を実際に移動、見ながら気軽に調査して開業立地を検討できます。また、検索地域のクリニック開業向け物件・承継情報も併せて確認できます。
診療圏調査においては、調査したいエリアが市街地か郊外かによって見るべき推定患者数が変わります。
市街地では、昼間に働きに来る人々によって人口が大きく増加します。それに伴い、職場や学校での怪我や病気、定期健診など、昼間に医療サービスを必要とする人も増えます。そのため、市街地では昼間活動している人口(昼間人口)をベースに算出した推定患者数を見る必要があります。
反対に郊外の場合、そのエリアに住んでいる地域住民がターゲットとなるため、そのエリアに住んでいる人口(夜間人口)をベースに算出した推定患者数を見るといいでしょう。
世帯特性を見ておくことも、診療圏調査においては非常に重要です。世帯特性には、年齢構成、家族構成、経済状況などが含まれ、これらは地域の医療ニーズに大きく影響を与えます。
例えば高齢者が多い地域では、慢性疾患の管理や在宅医療、認知症などの専門的な治療に対するニーズが増加します。ファミリー層が多い地域では小児科のニーズが増加します。
診療圏調査アプリでは年少人口(15歳未満)、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)、老年人口(65歳以上)、後期高齢者人口(75歳以上)が算出されますので、ぜひご活用ください。その他にも市区町村などが発表する統計情報も参考にするといいでしょう。
診療圏調査アプリでは、診療圏内の患者数を施設数で按分し、1施設あたりの推定患者数を算出しています。しかし、実際は競合の集患力は一定ではありません。また、診療圏調査アプリでは診療科で機械的に競合としております。そのため、競合の情報をご自身の目で見ることも、診療圏調査においては非常に重要になってきます。
クリニックにとって最も果的な競合戦略は、「強い競合に近づかず、自分が強い競合になること」です。クリニックは、意外と狭いエリアを診療圏として成り立っています。その狭いエリアで一番になれば、経営の安定度が高まります。
強い競合になるためには、競合が提供している医療サービスと自院が提供している医療サービスを比較し、どのような点で差別化できるかを考えます。特定の診療科や治療法、患者サービス等で独自性を持てるかどうかが鍵となります。同時にその地域で求められている医療サービスが何か、市場のニーズを把握することも大切です。
クリニックの一日あたりの外来患者数の採算ラインは、多くの要因によって異なります。
例えば一般的な内科のクリニックでは、一日平均40人の患者が診察されると採算が取れるとされております。院外薬局で単価5,200円程度の患者が40人来院し、かつ単価4,500円程度の健診を一日あたり0.5人受け入れている医療機関の売上は、月額525万円になります。この規模のクリニックの平均的なスタッフ数は、看護師1名、事務2名程度と考えられ、都心ならば坪15,000円で40坪の家賃(地方ならば坪10,000円程度弱だが、もっと広くなる)をみておく必要があります。この場合、院長の所得である「利益」が、月190万円程度となります。これは年収にして2,300万円程度に相当し、ここから税金を引いた上で借入金返済などを加味しても、リスクを取って開業した院長にとっても安心できる年収を確保できると言えます。
このようにクリニックの収支構造を把握したうえで、採算ラインを的確に捉えることが大事です。
スマホアプリ「診療圏調査」監修者
小松 大介
神奈川県出身。東京大学教養学部卒業/総合文化研究科広域科学専攻修了。 人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任。 コンサルティング事業部長。200箇所以上のクリニック新規開業・経営支援、300箇以上の病院コンサルティング、50箇所以上の介護施設のコンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。
主な著書に、「診療所経営の教科書」「病院経営の教科書」「医業承継の教科書」(医事新報社)、「医業経営を“最適化“させる38メソッド」(医学通信社)他