2018/03/18/日

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

診療報酬改定について思うこと

 雪に覆われた厳寒の冬も終わり、ようやく暖かくなってきました。
 皆様、いかがお過ごしでしょうか。今年はインフルエンザに罹られた方も多かったのではないでしょうか。私は、インフルは無事だったのですが(周りが倒れるのに、私だけ無事なので、「体の中で培養して撒いてない?」と息子に言われました)、鼻風邪はひきました。息が出来ない のは辛いですね。花粉症の方に深く同情しました。

 さて、今年の診療報酬・介護報酬改定ですが、心配していた支援先への影響は、軽微のようです。政策の大きな流れを読んで先に先に対応してきたことが功を奏したと言えます。毎回の改定に振り回されず、時代を読む力が大事だと再確認しました。

 報酬改定時には、毎回「こんな点数にするんだ」と驚きとともに怒りを覚える項目があります。今回特に驚いたのは遠隔診療の報酬です。遠隔診療は、安倍総理の未来投資会議で報酬をつけることが決定され、厚労省に指示が下ろされました。昨年の初めから、厚労省の人が登壇するセミナーでは「次回の報酬改定で、唯一決まっているのは遠隔診療に点数がつくこと」と言われていました。

で、蓋を開けると、、、確かに点数はつきました。ただ、非常に低く、更にはそれを取るための要件がびっくりするぐらい厳しく設定されています。初診は対面、6カ月以上診ている患者、何かあったら30分以内に駆けつけ、厳しいシステム要件、、、等で、そこまでして遠隔診療を行うことが想定しにくく、最も効果が見込めるはずの未受診層が適用外になっています。

これは未来投資会議に反発した厚労省と、遠隔診療を恐れた医師会との利害が一致したのではないでしょうか。以前の改定で「在宅専門診療所」の制度が認めらえたときも、制度は出来ましたが、要件が厳しく、却って在宅医療専門の診療所が減りました。私も会議に参考人として呼ばれましたが、「在宅専門診療所」は規制改革会議から厚労省に落とし込まれた項目です。マクロ経済や患者さんにとってのメリットとは関係なく、物事が決まっていくさまを、また見た気がします。

以前の改定の時には、在宅医療の点数の在り方について調査を行い、ファクトベースの議論を行い、多少は反映できました。今回は看護小規模機能についてやってみましたが、残念ながら看多機への厚労省の関心は薄く、大きな成果はありませんでした。

2025年も間近なので、どうやって現場のファクトと一般患者や運営者の声を政策に反映させ、良い医療・介護のインフラを創っていくか、皆で再度考える必要性を感じました。

執筆:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)