2017/10/25/水

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

医療関連IoTシステムについて

 選挙と台風であわただしい週末でしたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 メディヴァは先週、鴨川の亀田総合病院で社員研修を行いました。病院見学の後、亀田信介院長のご講話とJohn Wocher顧問のJCI勉強会をして頂きました。
 亀田先生方とは創業の時からずっとご一緒させて頂き、メディヴァのミッションである「患者視点の医療改革」の原点として定期的に社員研修で訪問させて頂いてます。(私は密かに「メッカ巡礼」と呼んでいます。)今年は、100人以上を引き連れての研修です。病院見学にこんな多くの人数を受け入れてくださって、本当にありがたいです。

 さて、この頃、気になっていること。
 来年の診療報酬改定で遠隔診療に報酬がつくのもあり、関連システム(メドレーのClinics、情報医療のCuron、インテグリティ・ヘルスケアYaDocのなど)が増えています。個人が自分の健康データを管理するシステム(後述するDiaryなど)や、多職種連携システム(エンブレースのMCS、カナミックのTRITRUS、EIRなど)も数多く出現しています。これらのシステムはターゲットや主用途は異なりますが、個人の情報と医療・介護の連携を実現するという意味では、類似のフィールドでせめぎ合いをしていることになります。
 スマホが普及し、センサー技術が発展し、クラウドが安くなることにより、このようなシステムは益々発展するでしょうし、楽しみです。普及のポイントは、まずは安さとUI(ユーザーインタフェース)になるでしょう。
 多職種連携システムの分野では、導入費がほとんど掛からずLINEのように手軽に使えるエンブレースのMCSが200個所以上の医師会・自治体を制覇しました。
 個人の健康管理分野では、私が注目しているものには、UIの良いThe Diary Corporationというアメリカの会社が作った DiaryとCareProというシステム(アプリ)があります。

 Diaryは個人の情報管理用で、CareProはその健康情報を元に医師等が見守り、介入をするためのシステムです。使い勝手の良さもあって、Apple社も積極的に後押ししています。
 iPhoneを持っている方は、画面に「ヘルスケア」と書いたハートのマークのついたアプリが入っているのをご存知でしょう。持ち主が意識してなくてもiPhoneは その人の歩数等のデータを(勝手に)集めています。 ただ、このデータは本人の同意が無ければiPhoneから出ません。
 DiaryとCareProはiPhoneのヘルスケアデータを、本人が許可した第三者に開示するアプリです。 データはApple WatchやFitbitだけでなく、オムロン等の機器メーカーのものやアメリカではすでに承認されているスマホに付けて図る心電計等から集積されます。これらのデータに基づいて、主治医や保健師、管理栄養士等が介入します。あらかじめ設定すると、「血圧が高い!」とかアラートも出ます。 インターネットにアクセスできれば、iPhoneだけでなくiPadでも、PCでも、古くなったiPodでも使えます。
 DiaryとCareProは、現在慶応大学病院で心臓疾患の患者さん向けに使われていて、聖路加、亀田を始め幾つかの病院、行政がテスト的に導入しています。うちでは、プラタナスの健診センター、イーク丸の内・表参道で使うことを検討しています。
 2010年に事業を立ちあげたHarmishさんはニュージランド人で、日本語教師として静岡で過ごしました。日本語がとても上手な日本ファン。会社自体はアリゾナ州にあり、現在事業はアメリカを中心に展開していますが、第二の母国日本でも広めたい!とメディヴァに説明にいらっしゃいました。
 色々な類似システムが出る中、UIとコストという必要条件をクリアした後は、それらのシステムを使ってどういうサービスが展開できるか、というコンテンツの優位性の戦いになるのではないでしょうか。システムは優れているが、ビジネスモデルが成立しないケースも出てくると思います。そうならないためには、何をどう考え、誰と組むといいのか?メディヴァでは引き続き、この分野に興味を持ってウオッチしていきたいと思います。
 またご報告させてください。

執筆:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)