2017/02/01/水

大石佳能子の「ヘルスケアの明日を語る」

メディヴァ「自立支援介護」への取り組み(4)オランダの施設De Hogeweyk

 高齢者が、「自分らしく過ごす」を可能とする「施設」介護の形態を求め、アメリカやヨーロッパを見て回りました。その中で印象に残ったのは、オランダのDe Hogeweykです。(※De Hogeweykでネットで調べると、英語の資料と画像が出てきます。)

オランダの介護施設De Hogeweyk

 De Hogeweykはアムステルダム近郊にある、認知症対応のビレッジ。約5千坪に、152人の重度認知症の高齢者が23戸の小規模住宅に分かれて暮らしています。
 コンセプトは、「施設」ではなく「コミュニティ」で、高齢者が認知症になっても自分のライフスタイルに合わせて、安心な環境下で、できる限り自由に自立して、QOLの高い普通の生活を送ることを目指しています。
入居者は、オランダの典型的な7つのライフスタイルから自分により合うものを選定し、同じようなライフスタイルの人と同居します。ライフスタイルは、過去の経験によるものと、価値観によるものの組合わせで、入居に当たって調査票等を用いてマッチングします。

7つのライフスタイルとは、次のようなものです。

・都会型モダン型
・上流階級型
・植民地スタイル
・文化教養型
・伝統的
・屋内活動型
・クリスチャン

 たとえば植民地スタイルは、蘭領インドシナ(インドネシア)で過ごした経験のある人たちが住み、住居はインドネシア風でエスニック料理が提供されます。上流階級型だとシックで暗めのインテリアにまとめられ、シャンデリアが輝くダイニングルームで食事をとります。
 入居者は、それぞれは個室(16.5~20m^2)を持ち、リビング・ダイニング(65~95m^2)やキチンは共同、トイレ、シャワーは2~3名に1つあります。独りでトイレ、シャワーを使う人ことが出来る人は限られているので共同にしましたが、それによりリビング、キチンをより広くとることができたそうです。

お世話ではなく、自立支援

 介護スタッフは、基本的には「お世話」でなく、「自立した生活」を支援するために存在します。例えば夜間は5名で対応しますが、各戸・居室の見回りはしません。入居者には、自分のやりたい時間にやりたいことをする自由があります。戸外への外出も自由で、塀に囲まれているため、安全に散歩し、自転車にも乗ります。迷子になった高齢者は、スタッフが誘導して帰します。
 レストラン、カフェ、バー、シアターだけでなく、スーパーもあり、高齢者は自由に買い物も可能です。スタッフは原則的に「買い物を代行してはいけない」ことになっていてるので、高齢者の自立を促します。認知症のせいで、同じものを買いすぎたら、スタッフがこっそり戻してくれます。自立支援の一環として、入居者に可能な限り、ご飯の準備、庭の手入れなど、生活する上の役割を担ってもらいます。

 日本では、「塀で囲まれた認知症施設」は批判を呼ぶかもしれません。
 しかし、塀で囲まれた中は安全、安心です。ライフスタイルや価値観の合う人と過ごし、自分もできる限りのことは自分でする。最後まで「自分らしく」過ごすことが出来る場所のように見えました。昼間の活動量が多いので、薬に頼らなくても寝付く、という好ましい結果も生んだそうです。
 日本にこのような施設を作ることができないでしょうか。文化的に「塀」は無理でしょうが、少なくともライフスタイルや価値観が合う少数の人と共同で住む、シェアハウス的なグループホームはできるのでは。メディヴァでは、ぽじえじ等で培った「自立支援」のノウハウと、「見守り」システムなどを使いながら、可能な限り安全と自由度の両立を目指した「施設」を作ってみたいと思っています。
 (医)プラタナスの青葉アーバンクリニック(横浜市青葉区)の移転に合わせて、クリニック併設型も考えています。もしも企画にご興味を持った方(介護、不動産、IT、システム関係等)がいらしたら、是非ご連絡ください。一緒に考えましょう!

執筆:大石佳能子(株式会社メディヴァ代表取締役)