2020/05/11/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

PCR検査は何故、増やせないか?

PCR検査は何故、増やせないか?
これ、日本国民がみんな(もしかすると安倍首相も?)が思っている疑問ですよね。

規制改革推進会議の医療介護WGにも「医師が検査をしなくてはいけない、という規制がボトルネックでは?」という意見が投げられます。
なので、まずは何が起こっているのか調べてみました。(追加情報があれば頂けると幸いです。適宜アップデートします!)

まず、検査自体は医師でなくても、医師の指示があれば看護師でも臨床検査技師でもできます。
(先日、「歯科医師」(=医師ではない)に解禁したというのは、医師がいなくても出来るということだと思います。)
問題は、検体の採取と取り扱いの要件です。

新型コロナは感染症法により「2類感染症」に指定されています。
「1類」はエボラ、痘そう、ペストなどの超ヤバいもの。
「2類」はそれに準じるSARS、MERS、鳥インフル(H5N1、H7N9)などのかなりヤバいもの。
その下の「3類」にコレラやチフスが来ます。

新型コロナは「2類」なので、そういうヤバいウイルスを扱うために仮設検査場を作るにも求めらるスペックが高くなり、また運搬するにも厳重な設備が必要となります。
その結果、検査場を作るスピードも運搬体制の充実も遅れます。
「新型コロナは、ヤバいウィルスだから仕方ないんじゃない?」と思われるかもしれません。
確かに生きているウィルスならそうでしょう。
ところが、綿棒を鼻に挿したり、唾を試験管に入れたりして採取された検体は、溶媒に入れた時点で死滅します。
死滅したウィルスは無害です。でも死滅した検体を運ぶにも物凄く慎重に運んだり、検査場もの「2類」に相当する施設が求められます。
日本の法律では、「2類」の死滅したウィルスをどう扱うか、についての明文化した規定はありません。
ただ、これはコロナとPCR検査に限った話ではないのですが、「明文化されていない場合は安全な方を取る」というのが業界通例で、その結果「2類」を死守してしまいます。
今、世界中でドライブスルーの簡易検査場が出来て、どんどん検査が進んでいます。検査が進まないと永久に無為に自粛せざるを得ません。
日本でも県によっては、独自の検査場を作ろうとしています。しかし、スピーディにローコストにては作れません。
先日、富士フィルム和光純薬からは全自動でPCR検査ができる機械が発売されました。75分、オンサイトで結果がでます。
またCR検査をモバイル化する装置も開発されつつあります。
でも、せっかくオンサイトやモバイルの検査装置が出来ても、「2類」適合を求められると検査数拡大は頓挫してしまいます。

また、もう一つのネックは「自治体との契約の必要性」です。各医療機関や医師会がPCR検査を行いたい場合は、自治体との契約が必要になります。医師会診療所で検査が始まっている場合も、行政との契約が必要でした。
掛かりつけ医クリニックが独自でPCR検査をするにも、自治体との契約が必要です。もしもやろうとしても、「民間検査会社と契約して、すぐできる」ということではないのです。
(個人的には、そもそも掛かりつけクリニックではやるべきではない、と思っていますが)
PCR検査数の拡大のためには、まず「PCR検体の扱いを明文化」し、仮設検査場をスピーディにたくさん作り、検体もどんどん運搬できるようにすべきと考えます。
「明文化されていない」ことによる規制は、他でも随所に見られる我が国特有の課題です。