2023/06/23/金
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2023年5月30日から6月1日にかけて、上海で行われた中国における最大規模の高齢者産業EXPOに出展しました。 JETRO日本館の中の共有ブースで、日本国内で強みのある認知症にやさしいデザイン、機能回復型のディサービスとリハビリ、在宅医療、健診センターの設立などの発表、資料展示と商談を行いました。
認知症にやさしいデザインの発表
弊社の展示:共同ブースの入り口
展示をきっかけに、現地企業や行政機関、高齢者と意見交換をしました。今回は、中国の高齢者産業の動向を紹介します。
中国では、高齢者サービスの全体を“養老”と言います。従来は福祉サービスとして政府による介護施設の設立と運営が多かったですが、現在多くの民間企業が産業に参入しています。主なプレーヤーとして、不動産企業(主に高齢者住宅、CCRCなど中心)、保険会社(元気高齢者向けサービス付き住宅中心)、医薬企業(施設介護中心)、介護事業者(施設介護以外に、一部介護保険テストエリアに在宅介護サービスも提供)などがあります。
各企業のアピールポイントとしては、環境・設備、大病院受診のアクセス、娯楽設備などが多いですが、自立支援やリハビリなどを概念がまだ薄い状況です。
その理由としては、主に3つが考えられます。
1つ目は、高齢者とその家族の意識は、高齢になったら楽にしたい・させたいとの認識にあります。
2つ目は、専門的な人材の不足です。自立支援やリハビリを取り入れたケアは、職員の知識および技術の専門性を要しますが、中国では多くの現場で出稼ぎを中心とした職員構成のため、高度のケアサービスが困難と考えられます。
3つ目は、運営事業者側のオペレーションの課題です。高齢者を動かすようなケアは、事故のリスクが伴うことであり、専門人材に加えて運営と管理上のハードルもあります。
一方、現在では多くの元気高齢者は、機能の維持と向上はQOLにつながることを理解し、自立を求める人も増えています。弊社の自立支援介護およびリハビリの専門な人材教育および運営の仕組みを紹介したところ、多くの企業や高齢者の関心が寄せられていました。
中国の文化においては、家族との関係性は日本よりも緊密であり、高齢の両親を施設に入居させることは拒否がある人も多いです。ただし、自宅で暮らす高齢者を支える仕組みはまだ不十分です。一部の介護保険試行都市では、訪問介護(基本的な家政、ケア)が提供されていますが、看護や医療的な処置が必要とすると、護理院(日本の介護医療院的な存在)に入院するか、医師が駐在する介護施設に入所することとなります。2020年に、政府より「高齢者の在宅医療サービス強化通知」が出され、通院不便の高齢者向け在宅医療の開設が推奨されていますが、医療保険での金額設定が定まってないところが多く、実際の在宅医療サービスの展開は少ない現状です。
専門人材の不足を補完するために、多くのロボットやICT機器が開発されています。また、この分野では欧米企業からの参入も激しいです。
現地の大手ロボット企業は、介護施設向けの人間の代わりに夜間巡視するロボット、歩行訓練とリハビリを一体した機器などが開発されていますが、まだ実用が少ないようです。介護施設のペインポイントの解決に繋がるような機能開発と実績作りにかなり苦労している様子です。
一方、テクノロジー×高齢者サービスで、日本の参考になるようなケースもありました。天与社は、全国30都市で在宅介護サービスを提供するとともに、センサー(人間、転倒、バイタル)、タブレットで在宅高齢者の健康と安全をモニターリングしています。展示会では、転倒感知の仕組みを紹介してくれました。レーダーを用いて、高齢者の転倒が感知したら、訪問介護ステーションのスタッフからタブレットを通して声かけします。50秒間高齢者の返答がなければ、自宅まで駆け付けするようになっています。ただし、現在では訪問介護サービスは中国において一部のエリアのみで介護保険対応となるため、展開の限界を迎えているようです。日本においては、訪問介護に限らず、訪問看護、定期巡回、訪問診療など、在宅高齢者に多くのサービスを届いていますが、ICTの活用が少ない状況です。今後、ICTやセンサーなどの活用することで、ケアの質の向上および提供効率化に寄与できると思いました。
(移動介助ロボット)
(転倒感知システムのデモ)
メディヴァは、日本での経験とノーハウを活用し、中国での高齢者事業を積極的に手掛けています。新型コロナ前には、天津でのデイサービスのフランチャイズを通して、現地高齢者に良いサービスを届けながら、日本式介護の考えを広めてきました。これからは、在宅高齢者に向けての仕組みとサービス作りを進めていく予定です。また、中国にある新規性のある製品やサービス、現地の産業動向も日本に紹介していきます。ご興味があれば、是非ご連絡ください。