2016/02/24/水
医療・ヘルスケア事業の現場から
介護事業部・海外事業部 コンサルタント 鈴木勝也
外国人を介護人材として受け入れる、という計画が年の日本再興戦略に記され、多くの介護事業者の関心を集めました。実現には様々な制度の見直し等が必要で、現時点(2016年2月)でまだ受け入れ方針は決まっていませんが、外国人が介護現場で働くことの現状と、制度が改正された場合の課題を、現在議論されている内容から整理します。
現在、日本で働いている外国人は、以下の5つに分類されます。
(1)就労目的で在留が認められる者・・・いわゆる高度な「専門的・技術的分野」
(2)身分に基づき在留する者・・・日系人や、日本人の配偶者など
(3)技能実習
(4)特定活動・・・経済連携協定(EPA)など
(5)資格外活動・・・留学中のアルバイトなど
このうち、EPAの枠組みで受け入れられる3国(フィリピン、ベトナム、インドネシア)以外の外国人が、介護職として働く事ができるのは、(2)の身分に基づき在留する者の勤務、そして(5)の資格外活動のみです。つまり、現時点では介護職として勤務する事での在留資格はなく、別の在留資格を持っている場合のみ、介護職として働けるという事です。
この状況に対して、(3)の技能実習制度の改正に合わせて、介護職も新たに対象職種に含める事が計画され、2015年度内の法改正に向けて審議されている状況ですが、その後、公表されている情報はなく、また「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会(厚労省)」でも、2015年2月に中間まとめが発表されて以降、技能実習制度での受入れに関する議論は進められていないようです。
次に技能実習制度に介護職が追加された場合、どのような要件を満たせば日本で働く事ができるのかについて、これまでの議論の内容をまとめてみます。
介護という業務は、これまで技能実習制度で受け入れられてきた業種と異なり、初の「対人サービス」ということで、既存の制度には無かった、様々な要件が検討されています。
(1)日本語によるコミュニケーション能力
介護業務では利用者だけでなく、他スタッフ、家族とのコミュニケーションが必須となります。そのため、入国時点で日本語能力検定(JLPT)がN4レベル、入国1年後には、N3レベルに達していることが必要ではないかとされています。
N4・・・基本的な日本語を理解することができる)
N3・・・日常的な場面で使われる日本語をある程度理解する事ができる)
(2)介護スキルの評価
他の技能実習制度でもスキルの評価はありますが、介護では、介護職員初任者研修の内容での評価項目や評価基準が設定するべきとされています。
また、その他の要件にも、EPAでの介護職の受入制度に倣ったものも検討されています。
例えば、
・ 受入施設は、原則施設型サービス
・ 受入施設の職員数と受入人数に独自の制限を設定
・ 受入施設の職員に占める介護福祉士の割合が一定以上
・ 賃金は日本人と同程度
などが、挙げられます。
技能実習制度自体には、たしかに様々な問題点が指摘されており、本来の異議と実態がかけ離れている現場があることも明らかになっています。介護分野においては、これまでの反省を踏まえて規制を強化するところはきっちりと強化し、その上で、一部の例外的な受入れではなく、広く活用されるような制度が作られることが望ましいと考えています。
一部からは「他の国には介護職という概念自体がない。技能実習の意義に反しているのではないか」との指摘もありますが、今後、アジアの各国でも急速に高齢化が進むことは明らかです。その中で、日本の介護サービスを学ぶという事は、自国の介護業界をリードする人材を育てられる可能性を秘めたことではないでしょうか。
もちろん、そのためには本人の意識だけでなく、受入施設側の意識や制度の整備や適切な運用も不可欠です。span lang=””EN-US”” style=””font-size: 10.5pt;””> span style=””font-size: 10.5pt;””>日本で外国人介護職を受入れて教育し、その人材とともに海外での介護サービスの運営に乗り出すという、大きな構想を持った方々を私たちも応援していきたいと思います。
以上、技能実習制度での介護職の受入れに関する現状と議論の流れを整理させて頂きました。
また状況の変化等がありましたら報告させて頂きます。
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執筆者:鈴木 勝也│Katsuya SUZUKI
愛知県出身。株式会社メディヴァ コンサルタント。名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業、同大学院医学系研究科修了。痛みに関する基礎研究を行う。在学時より理学療法士として介護老人保健施設に非常勤勤務し、地域医療・介護問題に関心を持つ。医療従事者と利用者の満足を両立し、誰もが質の高い医療・介護を受けることができる環境の実現を目指す。