2021/10/25/月

医療・ヘルスケア事業の現場から

クライアント主導型コンサルティングの事例

東北地方、100~200床、病院建替の基本計画の策定ご支援

経緯・ニーズ 

 現病院の建物老朽化に伴い、建て替えを検討しておられる法人さまから支援のご希望をお受けしました。 法人さまは複数の病院と介護事業所を運営しており、職員規模は300名程度です。職員教育に大変熱心で、地域住民に対しより良いサービスを保険の枠にとらわれず開発する意欲も高いと感じました。 

 病院の建て替えは数十年に一回のプロジェクトで、担当する方々にとっては初めての経験です。加え大きな資金を要すため、念を入れ多角的に検討したいとの思いから、第三者からのアドバイスを求めて、弊社にお声がけくださいました。 

法人さまの担当内容と弊社のご支援内容 

 計画を作成するためには基本的に以下の整理が必要です。 
  ・外部環境分析 
  ・内部環境分析 
外部環境分析を通じ将来の市場を理解し、競合・協力先を把握し、内部環境分析を通じ自院・自社の強み弱みを理解します。2つの分析を合わせ対策の方向性を見極め、新しい拠点を作るまでにすること、新しい拠点ですることを決めます。 

 分析する過程では様々なデータの集計や、様々な部門への聞き取りが必要です。また集計結果や聞き取りから言えることを考え資料化し、内部で議論・目線合わせをする必要があります。 

 従来の弊社の支援では、弊社側で分析を実施し、対策の方向性を挙げた後に、法人さまと議論を重ね方向性を固める、という進め方が多かったです。しかし今回のご相談では分析時のデータ集計や資料化は法人さま自身で行いたいとのことで、弊社は法人さまが作成した集計結果の分析の評価、分析の抜け漏れがないか、対策の方向性は市場と競合の観点から妥当と言えるかなどを確認し、アドバイスする役割とさせて頂きました。 

 アドバイスやディスカッションは月2回のweb会議にて実施し、着手時点で作成頂く資料の雛形を提供しました。会議時には次回までに進めて頂く内容、作成頂く資料を明確にし、次回会議前に送付頂きました。弊社は送付頂いた資料を読み込みアドバイスや深掘りするポイントを資料に書き加え、法人さまへ返送します。会議は弊社のアドバイスコメント付きの資料を互いに見ながら、ディスカッションを中心に行えたことで分析の深掘りや、実現確度を意識した計画作りに繋がったものと感じます。 

 また法人さまに疑問や相談ごとがあれば、会議以外でも電話やメールを通じ、タイムリーに解決頂けるようしました。 

結果・効果 

 今回の取り組みでは現在複数拠点保有するデイケアが地域において競争が激しくなっていること、地域の年齢構成の変化を受け回復期の病床が不足すること、在宅医療の供給が満たされていないこと、保有する拠点間の機能が重複しており、棲み分けを明確にする必要があることなどが見えて来ました。 

 クライアント内のプロジェクト参加者や弊社からの質問やディスカッションを通じ、クライアントご自身で苦労しつつも導いた分析結果でしたので、外部環境や内部環境に対し広く深く理解がなされており、対策案の作成はスムーズでした。加え計画を実行するフェーズにおいても効果を感じました。時に計画を作成し満足してしまい、その後の実行がなされない場合が見られますが、本取組においては実行フェーズにおいても計画で実施するとした施策に対する意識の高さを感じました。 

 また、その後クライアントが保険外の新規事業を検討した際に、今回の事業計画作成のプロセスを自ら応用し、多角的な検討を単独で行うことができた点から、今回の取り組み方法の有用性を感じました。 

 世の中に経営に関する書籍はたくさんあります。そういったものを読み活用する努力はとても重要ですが、独力で学びを現実に適用するには難しい面もあります。 その意味で今回の取り組みを通じクライアント自身が手を動かし事業計画を作成したり、難しいプロジェクトに挑戦したりする際でも経験を豊富に有する第三者からのアドバイスや質問を受け、分析や対策の幅や深さを得る意義は大いにあると実感しました。 

効果の抜粋 

・クライアント自身が分析し対策を考えたため、コミットメントの高い計画が作成できた 
・クライアント内で課題を指摘し合い改善策をともに考える場面が徐々に増加した 
・別のプロジェクトにおいて本プロジェクトにて実施した情報整理手法を応用した 
・KPI目標が明確になり、達成に向かって行動量が増加した 

ご留意点抜粋 

・弊社の関与度が高い進め方と比較し時間を要す場合があります。(分析や対策を考える際の視点やスキル(MECEや仮説立案など)に対し不慣れである場合) 
・日常業務を行いながらの計画作成になりますので、負担感が増加することがあります 

執筆者:江原修司 
株式会社メディヴァ コンサルタント。神奈川県出身。早稲田大学社会科学部卒業。大手介護事業会社にて経営企画、購買、IT責任者、会計系コンサルティング会社にて事業再生を担当。現在の社会保障制度の課題に対し、より広く貢献したいとの思いからメディヴァに参画。地域社会に求められる医療、介護、障がい福祉事業者の経営改善支援を担っている。