2020/06/04/木

医療・ヘルスケア事業の現場から

EUが発表した最新の「医療・介護施設における新型コロナウイルス感染予防・管理と準備に関するガイドライン」から参考にできること(全文日本語訳あり)

メディヴァ海外事業部
コンサルタント 内野宗治

日本では5月25日に全国で緊急事態宣言が解除されましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては感染拡大の第二波、第三波が訪れる可能性も叫ばれており、気が抜けない状況が続いています。特に、検査や感染者対応の最前線で働く医療従事者は高い感染リスクに晒されており、適切な予防が不可欠です。しかしながら、COVID-19を巡る様々な情報が世の中に溢れ返る昨今、何が正しい情報かを判断することは難しく、信頼できる情報源による体系的な情報が求められています。

本稿では、海外における情報の一例として、EUの専門機関であるECDCEuropean Centre for Disease Prevention and Control:欧州疾病予防管理センターが発表した、医療機関および長期療養施設(介護施設)におけるCOVID-19感染予防・管理についてのガイドラインを紹介します。

世界保健機構(WHO)の発表よると、5月24日時点で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死者数は全世界で33万7687人となっていますが、その実に過半数となる17万3886人が欧州に集中しています。特に英国、フランス、イタリア、スペインではいずれも死者数が2万5000人を超え、爆発的な感染拡大を背景に欧州各地で「医療崩壊」が起きていることは日本のメディアでも報じられています。ECDCのガイドラインは、欧州各国が感染拡大の真只中にあった3月末に初版が発行されました。

5月24日時点で3度の改定が行われているこのガイドラインは、欧州の医療・介護従事者が現場で取るべきCOVID-19感染防止対策を示したものです。短く簡潔にまとめられていながら、医療従事者だけでなく介護従事者も含めた包括的なガイドラインとなっており、現場で簡単に確認できるようになっています。

医療従事者向けの情報としては、感染の疑いがある患者や感染者が発生した際にどのように対処すべきか、トリアージやアセスメントなど患者との接触初期段階から検査時、病院への搬送時、入院中、そして退院時など、患者のステージごとに注意点が記載されています。特に、患者と間近に接する拭き取り(スワブ)検査時や、エアロゾル(空気中を浮遊する粒子)発生手技など感染リスクの高い状況については、着用すべきPPEPersonal Protective Equipment:個人防護具が事細かに明示されています。一方で、サージカルマスクやレスピレーター、PPEなどの医療物資不足が問題となっている中、各物質をどのような状況で優先的に使い、限られた物資をいかにして節約するか、という極めて実践的なノウハウも含まれています。

長期療養施設(介護施設)向けの情報としては、感染の疑いがある患者や感染者が発生した際の対応に加え、感染リスクを踏まえた施設の運営方法、スタッフに教育すべきこと、正しい手指衛生管理方法、行政や地域社会との連携方法などが記載されています。

欧州と日本では状況や環境が異なりますので、記載されている情報は必ずしも日本の状況にそうものとは限りません。しかし、参考になる点もあるのは確かです。日本の医療機関や介護施設でも、これまでの対応の振り返りや今後に向けての準備として活用できるものだと思います。以下、メディヴァにて翻訳したガイドラインの日本語訳を掲載していますので、よろしければダウンロードの上、ぜひご参考下さい。

■株式会社メディヴァ作成 ダウンロード資料

「医療・介護施設における新型コロナウイルス感染予防・管理と準備に関するガイドライン」日本語版(PDFファイル)

■参考文献:
European Centre for Disease Prevention and Control. Infection prevention and control for COVID-19 in healthcare settings – Third update. 13 May 2020. ECDC: Stockholm; 2020

執筆者:内野宗治│Muneharu UCHINO
東京都出身。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。IT系コンサルティング会社勤務、ニュースサイト編集者、スポーツライター、通信社記者(マレーシア支局)等を経て現職。メディヴァでは、ヘルスケア関連企業の新規ビジネス開発や先進医療の普及・実用化に向けた戦略策定支援、自治体の地域医療拡充サポート、中央省庁の調査案件等に携わる。

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