2020/06/12/金
医療・ヘルスケア事業の現場から
緊急事態宣言が明けました。まだ新型コロナの感染者は発生していますが、世の中はだいぶ落ち着いてきたように思います。先週末は、近所のショッピングセンターの横を通ったのですが、以前とほぼ同じ数の人がいたように思います。これを「緩んだ」と思うかは人によって感じ方が違うと思います。ただ、一つ言えるのは欧米に比べて、日本は圧倒的に死亡者が少なかったということです。
何故、日本の死亡者が少なかったのかに関しては世界中が首をかしげています。緊急事態宣言は出したものの、強制的なロックダウンではなく、緩い規制だったのにも関わらず、何故、日本は無事だったのか?今後色々な論文が出てきますが、今のところは諸説入り乱れているという感じなので、主なものを、ここにご紹介します。
(1)感染しにくい
マスクを着用する。直接食事に触らない、箸で食べる。靴を脱ぐ。手を洗う、等のベーシックな衛生行動が功を奏した説。また、握手しない、ハグしない等の文化の違い説。
一方で、「世界で最も高齢者が孤独(=家族以外と接点が少ない)」という不名誉なランキングも要因として言われています。
(2)免疫がある
BCG接種が効いているという説。既に新型コロナは入って来ていた、SARS時から弱毒性のウィルスが入っていた等の説。ちなみに、私の周りにも「1月に掛かった酷い風邪は新型コロナだったに違いない」という人は結構います。
(3)重症化しにくい
重症化リスクである高血圧、心臓病、糖尿病が比較的少ない。またサイトカインストームに繋がりやすい肥満が少ない。
(4)ウィルスの毒性が弱かった
新型コロナ・ウィルスはどんどん変異し続けている。たまたま日本に来たウィルスは毒性が低かったという説。
(5)救命率が高かった
新型コロナが重症化すると、酸素を吸入する、挿管する、エクモを使う等、呼吸を助け、その間に身体が快復するのを手助けします。アメリカではエクモを使った患者は数パーセントしか救命できなかったそうですが、日本では同じような状態の患者さんで3分の2が救命できているそうです。
どの説が正しいのかは今後解明されるでしょうし、おそらくは複合要素だと思われます。興味深いのは、メコン3国では極めて患者が少ない等、地域もしくは人種によって大きな差が見られることです。アメリカやブラジルに住んでいる日系人はどうなのかも知りたいところです。
一方、政策に関していうと、クラスター対策は効果があったとされていますが、緊急事態宣言はほぼ効果に結びついていないようです。検査体制の整備、発熱外来等のpatient journeyの設計、病床の確保等は後手に回って、未だに課題を残しています。
いずれにしても、今回の波では新型コロナは日本には他の国と比べれば、比較的大きな爪痕を残さないで済みそうです。だからと言って第2、第3の波も無事かどうかは分かりません。一番怖いのは海外から来る変異したウィルスでしょうから、水際作戦を徹底することと、インフルエンザ等と重なっても検査、発熱外来、病床等のキャパシティを確保できるよう、過度に恐れる必要はありませんが、今から準備を怠らないことも必要です。