2021/12/08/水
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令和2年度老人保健健康増進等事業
株式会社メディヴァ
少子高齢社会において介護人材の不足が予想され、現状、介護現場の人員不足や時間外業務の増加が問題となっているが、介護分野でのICT機器・介護ロボット等(以下、「ICT機器等」という。)の導入・使用が進んでいない。この現状を放置すれば、将来的に介護サービスの維持が困難となることが懸念される。
そこで、本事業では、介護施設における介護業務のデータ化(見える化)に基づく業務課題把握およびICT機器等活用による生産性向上モデル(適正な人員配置等)について検討することを目的とする。
特別養護老人ホーム(3か所)でタイムトライアル調査により業務をデータ化(見える化)し、業務課題抽出とICT機器等活用を含む解決策の整理・優先順位付けと生産性向上効果の試算を行った。その結果、業務課題で「準備・片付け業務」「職員間の連絡」「訪室業務・定期巡回」「服薬準備」等が抽出され、課題解決策導入による生産性向上効果試算は、3施設平均で23時間(1定員あたり0.41時間)となり、うちICT機器等活用の寄与度試算は平均50%であった。
また、生産性向上効果(時間的余裕)の使い方は、3施設とも人員削減ではなく、職場環境改善もしくは介護ケアの質向上を選択した。以上の結果から以下3点の考察を行った。
施設種類(従来型/ユニット型)が異なる多様な介護施設で、ICT機器等活用による生産性向上効果が期待できるが、導入領域・効果は施設毎に異なり、画一的にICT機器等を導入しても生産性向上に寄与しない可能性が示唆された。また、ICT機器等導入による生産性向上への寄与度試算は約50%であり、既存業務の整理やアウトソーシング等の解決策との組み合わせ最適化により、高い効果を得られると考えられる。
定員数や施設構造施設種類、既存業務オペレーション状況により、課題業務やICT機器等活用領域と活用効果が異なり、施設毎の個別性があることが示唆された。業務のデータ化(見える化)に基づき、施設状況・目的、効果予測に合わせ解決策を最適化・実施していくモデルの有用性が改めて確認された。
また、介護現場において生産性向上の定着・普及を目指す上では、一律的に人員配置を目的とするのではなく、地域・施設毎の生産性向上の目的設定とその手段としてのICT機器等活用を含む解決策の選択、という検討プロセスの実践が有効である。
ICT機器等活用には複数業務領域での導入が望ましいが、価格が高く費用負担が大きい。また、各機器のOS規格や回線・サーバー設置数等の判断が必要で介護現場では対応が難しいが、各メーカー単位では機器横断的なサポートが十分ではない。ICT機器等活用推進には、資金面およびコンサルテーション機能の支援が望まれる。
調査研究報告書はこちらからダウンロードいただけます。