週末は晴れて温かく、東京マラソン日和の一日でした。
私も佃大橋のたもとで応援しました。一転、週明けからは天気が崩れてきて寒いですね。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
さて、2年に一度、定例の診療報酬改定の概要がおおよそ明らかになりました。メディヴァでは、毎回、記事や講演で新しい診療報酬の内容や、医療機関に与える影響を解説させていただいています。今回はまずは在宅医療の分野から。在宅医療を中心に活動している荒木のレポートをご覧ください。
平成28年度診療報酬改定を読み解く
前回の改定では、老人ホーム、サ高住、マンションに対する訪問診療の点数が4分の1へと大幅に切り下がり、その後緩和策として「毎日一人づつ訪問すれば高い点数」という非効率な緩和策が打ち出されました。それに比べれば、今回も厳しいことには変わりませんが、随分と合理的な点数になったと思います。
細かい点数は、レポートに譲るとして、診療報酬の趣旨、方針を解釈すると、下記のようなことではないかと思います。
(1)国全体の社会保障費は、これを抑えていかなくてはならない。
これは、医療費全体ではなく、入院、外来、在宅医療などの各分野別にそれぞれ効率化が求められる。
(2)前回の改定で定めた「毎日一人づつ訪問する緩和策」は、ただでさえ少ない在宅医の資源を更に非効率化するので、これは廃止する。
(3)もともと、居宅であろうと、施設であろうと、重い患者と軽い患者が同一報酬であることは、不公平であった。なので、重症度によって差を
つけた。これにより重症な患者さんを中心に診ている医療機関が報いられる形となる。
(4)軽い患者に対しても月2回訪問しなくてはならないことは、医療費や医療資源の無駄遣いであり、患者にも負担が増える。また、僻地などで、月2回訪問することが難しいケースも発生している。このため、月1回の訪問診療を可能とした。
在宅医療に熱心なクリニックであれば、一時的に報酬減となるが、空いたキャパシティを他の患者に回すことにより、トータルでは収入増の可能性がある。
(5)外来応需の義務を負わない、在宅専門クリニックを認めた。ただ、サ高住などに併設された専門クリニックを排するために、要件を厳しく設定している。
前回の診療報酬改定以降、メディヴァでは在宅医療に熱心に取り組んでいる多くの医療機関とともに、現場のデータを厚労省保険局に届けました。「重症な患者を熱心に診ている在宅医療機関」が報いられる方向性づくりには寄与出来たのではないか、と思っています。
「厚労省は現場を見ていない」とよく言われますが、個別に話をすると、現場への意識が高い方は多くいます。また、現場のファクトやデータを取りまとめた内容に関しては、それなりにきちんと反応してくれました。ただ、全体的な「社会保障費減」の中でどう折り合いをつけるのかと、入院、外来、在宅の「それぞれの部門での効率化」という原則が曲げられないのが、難しいところです。
本来であれば、入院と在宅は医療費で比較すると、3対1なので、在宅の点数を上げて(少なくとも、キーブして)入院から施設や居宅への誘導を図ったほうが全体的な効率は上がります。
また今回、ようやく認められた「在宅専門診療所」ですが、ハードルは非常に厳しく設定されています。特に納得がいかないのは、「施設比率」が決められていることです。施設であろうと、居宅であろうと、重症者が大半であれば、そこを専門に担当することは認められても良いのではないでしょうか。
特にこれから、病床が足らない地域が増え、独居も増える中で、一人暮らしの重症者を集めて看る施設の必要性は増します。医療機関によっては、社会的なニーズに対応して、自ら作ることも考えるでしょう。そういう場合に、ペナルティを受けるべきではないと考えます。
診療報酬の設計には、高齢者を支えるために今後どういう医療、介護体制が必要かという、ビジョンがさらに求められることでしょう。