コンサルタント 田中 傑
- はじめに
スマートフォンの普及が進み、企業におけるマーケティングの手法として、webマーケティングの重要性は、年々高まっています。そしてそれは、病院やクリニック等の医療機関においても例外ではなく、web上での集患対策を行いたいと考えている医療機関も多いのではないでしょうか。
弊社も、支援先の病院から、集患対策として、何かインターネットでの対策は行いたいけれど、何をすればいいのか分からない、あるいは、ホームページを用いた広報にはSEO対策が重要だと聞くけれど、具体的には何をすればいいのか、といったご相談をいただくことがあります。
そこで、この記事では、webマーケティング、その中でも特に重要と考えられるSEO対策に絞り、どのように行っていけばよいのかについて、以下のような項目で3回に分けて述べたいと思います。
1.SEO対策の重要性
2.SEO対策に関する基本事項 病院・クリニックのSEO対策について(1)
3.具体的なSEO対策の内容 病院・クリニックのSEO対策について(2)
4.MEO対策について
5.終わりに 病院・クリニックのSEO対策について(3)
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1.SEO対策の重要性
患者獲得に向けた広報戦略として、webマーケティングの中でも、なぜSEO対策が重要なのでしょうか。
webマーケティングの手法には、大きく分けて次の3つがあります。
①ホームページのSEO対策
②リスティング広告
③SNSの活用
これらの手法を、効果範囲・効果の出る時間・費用の観点からまとめた表が、図1になります。まずは、それぞれの手法の特徴を考えてみましょう。
- SEO対策
SEOとは、「Search Engine Opitimization」の略で、ホームページの検索エンジンへの最適化を表しています。具体的には、ユーザーがあるキーワードで検索した際に自院のサイトを上位表示させ、ホームページを閲覧してもらいやすくするための対策です。
SEO対策は、無料でも可能であり、かつ、きちんとした対策ができれば、ある程度の期間は検索順位も維持されるため、ホームページのへの流入、ひいてはクリニックの集患が見込まれます。
ただし、SEO対策を行ってから効果が出るまでには、数ヶ月から長くて1年ほどの時間を要するため、すぐに増患につながるわけではありません。
- リスティング広告
リスティング広告は、検索画面の上部に表示される広告のことです。SEO対策を行った場合と同じような効果が得られますが、地域や性別、年代など、ターゲットを絞って効果的に広告掲載ができるため、自院の患者層に効果的にアプローチすることが可能です。
ただし、即効性がある反面、効果は広告料を払っている間しか出ないため、継続的な効果を求める場合は、それだけ費用がかかることになります。
- SNSの運用
SNSの運用は、簡潔な投稿や写真の掲載が可能で、院内の雰囲気を伝えるには、とても有効な手段です。SNSは拡散力も高く、また、気軽に双方向のコミュニケーションを取ることができるため、自院を受診したことがない方ともつながることが可能です。
しかし、ホームページに比べて、載せられる文字数や情報に限りがあり、自院の基本的な情報を伝えるには不向きです。FacebookやInstagramを使い、院内の雰囲気やリハビリの様子などを伝えている医療機関も存在しますが、やはり基本的な情報はホームページに掲載しているところが多く、SNSとホームページで棲み分けを行っていることがほとんどです。加えて、SNSには拡散力があるとはいえ、日常的な投稿の多くは、もともとSNSを使っていて、自院に興味を持っていただいている方にしか伝わらないため、SNSの利用が集患に影響する範囲は限定的だと考えられます。
また、SNSを活用する際には、継続的に更新を行うことが望ましく、そのためには院内のマンパワーが必要です。SNSを始めたものの、診察や請求の業務が忙しく数ヶ月で更新が止まってしまうと見栄えも悪く、日常的な投稿がしやすいというSNSのメリットも薄れてしまいますので、注意しましょう。
集患においては、広く情報を公開できる方が望ましく、SEO対策やリスティング広告の運用の方が、SNSの運用に比べて訴求力が高いと考えられます。また、SEO対策もリスティング広告も、検索画面の上部に表示されるという点では変わりはないですが、継続的に費用がかかり続けるリスティング広告と比べ、無料でも可能なSEO対策をきちんと行ったほうが、より費用対効果が高いと考えられます。
もし即効性が欲しい場合には、SEO対策の効果が出るまでの間はリスティング広告を用い、並行してSEO対策を進めるなど、組み合わせでの対策も有効です。
(図1:webマーケティングの手法)
病院側からの視点だけではなく、受診者の視点でも考えてみましょう。
webマーケティングにおいて、消費者の意思決定プロセスを示した「AISCEASの法則」というフレームが存在します。このフレームは、消費者が商品を認知してから購入に至るまでの検討プロセスを表したもので、「AIDMAの法則」のWebマーケティング版(かつ「AISASの法則」の詳細版)になります。
このフレームをもとに、受診者が実際に受診を決めるまでのプロセスと、それにあたってどういった検討を行うのかを考えてみましょう。
(図2:AISCEASの法則)
図2に、「AISCEASの法則」において定義されている、一般的な消費者の行動パターンと、それを受診者に置き換えた場合にはどのような行動になるのか、を記載しています。
商品を認知し、それについて検索し、他の製品との比較検討を踏まえて、購入に至るという、webマーケティングで定義される一般的な商品購入のプロセスを医療機関の受診者に置き換えてみます。医療機関を受診する場合は、一般的な消費者と異なり、身体に違和感を覚えていたり、既に病気に罹患したりしており、治療を受けたいという動機が定まっている場合がほとんどのため、認知や興味のプロセスはなく、受診先を決定する場合は、近隣の医療機関や症状の検索とその比較検討が重要と考えられます。
そのため、自院を受診していただくには、ホームページの検索順位の向上および充実したコンテンツや情報の提供によって、自院サイトを閲覧し、検討の俎上に載せてもらうことが重要になります。この点で、SEO対策は大きな効果を発揮します。
SEO対策は、コストパフォーマンス良く集患対策を行うには、現在では王道かつ必須の施策となっています。
2.SEO対策に関する基本事項
具体的なSEO対策についてお話しする前に、SEO対策の基本事項として、検索エンジンがどのようにしてホームページを評価しているのかについて説明します。
検索エンジンは、独自にウェブサイトのデータベースを持っており、そこに登録された内容を、独自の評価基準に基づいて評価することで、検索順位を決定しています。このデータベースへの登録作業のことをインデックスと呼び、ウェブサイトの内容をインデックスするために、クローラーと呼ばれるロボットを用いて情報を収集しています。
検索順位を向上させるには、まずはウェブサイトをクローラーに巡回してもらい、インデックスしてもらうこと、そしてウェブサイトの内容が検索エンジンの評価基準に合うよう対策を行うことが重要になります。
このうち、クローラーの巡回を促すには、後述する内部対策と呼ばれるSEO対策が鍵となります。内部対策を行うことで、クローラーがウェブサイトの構造を把握して巡回しやすくなり、必要なページをインデックスしてもらうことが可能となります。
また、評価基準については、検索エンジンごとで異なっています。現在日本で使われているPCの検索エンジンのシェアは、Googleが75%で、Yahoo!が12%ほど(statcounter(https://gs.statcounter.com/ )で2022年1月~3月の結果を集計)ですが、Yahoo!も検索エンジンのシステム自体はGoogleのものを使用しているため、実質的にはGoogleが日本の検索エンジンのシェアの9割弱を占めています。そのため、SEO対策においては、Googleの評価基準に則り、対策を行う必要があります。
Googleのウェブサイトの評価ポイントは、基本的には「いかにユーザーにとって有用な情報を提供しているのか」という点にあり、細かな評価基準は時々にアップデートされますが、このユーザーファーストの姿勢は変わりません。そのため、ユーザーに分かりやすく、かつニーズに合った情報を提供することが重要となり、医療機関においては、患者さま目線でホームページを作ることが、とても大切になります。
加えて、医療系のコンテンツは、Googleの分類上では、YMYL(=Your Money Your Life)と呼ばれる、お金や生活に関わる領域に分類されており、このYMYLに関係するサイトに関しては、「EAT」という指標が重視されています。
「EAT」とは、「Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)」の3つを指します。人の生活に関わるカテゴリに関しては、誤った情報が広く伝播してしまうと、多くの人に大きな損失を与えてしまう可能性があります。それゆえ、通常より正確かつ信頼できる情報を提供するために、「EAT」が揃っているほど評価されるようになっています。
ホームページの内容を記載する際には、医療に関する正しい情報を記載する、記事の執筆者を明記するなど、「EAT」を満たすことを意識して記事を書くようにしましょう。
以上が、医療機関に関係する、主なSEO対策の基本事項となります。