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募集職種・エントリー

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メディヴァの人事ブログ
私たちの日常、仕事、仲間、価値観などを
理解していただくために綴るブログです。

2018年08月17日(金)

取締役小松に聞いた「本を書く理由」

コンサルティング事業部長の小松は、全国の医療機関の運営に関わる傍ら、病院や診療所の院長先生、経営層の方々に向けた書籍を執筆しています。『診療所経営の教科書』(2013年、第2版2017年)『病院経営の教科書』(2015年)、そして2017年に『医業経営を“最適化”させる36メソッド』を出版しました。執筆のきっかけや、著書を通して伝えたいことを聞きました。

 

聞き手:山本桂子(株式会社メディヴァ・コンサルタント)

 

——小松さんはこれまでに3冊の著書を執筆されています。最初の1冊が、2013年に出版された『診療所経営の教科書』(日本医事新報社)です。

 

きっかけは、メディヴァが事務長を派遣していたクリニックでの経験です。運営支援に入り1年が過ぎたある時、看護師さん全員が一斉に辞表を出すという事態が起きたんです。急きょ、僕もその現場に入り看護師さんたちと面談を重ね、事実関係を確認し整理したことで、ある程度のところで離職を留めることができました。

 

クライアントであるクリニックとはその後もお付き合いが続き、円満な形で契約は終わったのですが、この時の出来事が、自分の中で消化できずにいたんです。大量離職を先導していたのが、信頼していた師長さんだった。振り返ってみれば前兆がなかったわけではない。とはいえ、なぜこんなことが起きたのだろう。なんとなく、しっくりきませんでした。

 

そこで、今回の件でコンサルが果たした役割等を、一度まとめようと思ったんです。誰に頼まれたわけでもなく自分のために、1つコンテンツを書きました。その後「せっかく書いたものだし」と、知り合いのドクターにご紹介いただいた出版社さんに持ち込み、出版に向けて動くことになりました。

 

——執筆には、どのくらいの時間をかけましたか?

 

企画が通ってから出版までは、2年かかりました。でも2年のうちの1年半以上は、やる気がわかずうじうじしていたので、実質2ヶ月です(笑)。1冊目の本の文字数は、18万字。図表は100点ほど。図表はセミナー等で使用していたものがありましたから、さほど苦労はしませんでしたが、文章は自分で書きました。ほとんど、移動中に書きましたね。土日に書斎にこもるようなこともありませんでした。

 

——この本はとても評判がよかったため、出版社からの強い依頼もあり2015年には『病院経営の教科書』を執筆されました。

 

これは『診療所経営の教科書』が出るころには、自分の仕事の領域が「病院経営」に移っていたというのが大きいです。今にして思えば当たり前のことですが、診療所の経営と病院の経営はまったく異なります。病院の経営に関わる方からのご相談も増えていたことから、執筆に至りました。

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普遍性×網羅性×実践性

 

——『診療所経営の教科書』と『病院経営の教科書』は、数値と事例が合わせて紹介されている点が興味深いと思いました。

 

普遍性、網羅性、そして実践性のある本を目指したんです。この3点を押さえた本は、当時まだありませんでした。経営に成功したドクターの「こんな苦労をこうして乗り切った」という伝記のような本はありました。しかしそれでは視点にもデータにも偏りがあります。その点、メディヴァは全国の病院さん、診療所さんに関わってきた実績があります。そこから普遍性と網羅性のあるデータを抽出できると考えました。

 

また、実践性について書かれた本も、すでにありました。「これを考えなさい」「この公式を覚えなさい」といった経営の本はあったのですが、「具体的にこういうことをやるとちょっと良くなるよ」「この数字をこうみておかないとまずいんじゃない?」みたいな実践性があるものがほしかった。

 

普遍性をもたせるためにも、要所要所の数字を抑えつつ、網羅性と実践性のある、一通り読めば「医療機関の経営ってこう動いているんだ」と全体感をつかめるものにしたかった。編集者の方のご協力もあり、目指したものになったと思っています。

 

——私の個人的な感想として、この本に出てくる数値は、とても具体的でわかりやすくて納得感があると感じます。たとえば「診療所の経営を成り立たせるための採算ラインは、1日40人」など、思わず「確かに!」と膝を打つ感じでした。

 

1日40人が採算ライン。これは、色々なクライアント先での現場経験から「感覚的に40人が採算ラインなんだよな」と思っていた。で、そのたびに現場でちょこちょこっと電卓を叩いてみると「やっぱり40人じゃん」と。

 

——同時に、事例も載っていますね。「数値が得意な人は現場感覚の事例を分析するのが苦手。逆に現場に踏み込んでいったり、事例を語るのが得意な人は、数値が苦手」という印象を持っていました。普遍性、網羅性、実践性の3つをおさえた本がそれまでなかったのも、両方を扱える人が少なかったからではないでしょうか。

 

そこを特別に意識したことはありませんでしたが、もしかしたら「物理が好き」というのが、影響しているかもしれません。

 

——物理ですか?

 

物理学は、起きている物事と数字をつなぐ学問です。動いた物があった時、それを数式にする作業が、基本となる学問です。僕は高校生の時に、これがすごく楽しいと感じたんです。

 

あと、数字は覚えられる方でした。今も「どこどこ病院の、この年の○○の売り上げは?」と聞かれれば、ほぼ答えられます。会話の内容とかはあまり記憶に残らないのですが(笑)。これは僕の特性かもしれませんね。起きていることを数字にするのが好きです。

 

——その特性が、実際のコンサル業務ではどのように生かされているのでしょう。

 

例えばですが「何年何月に人件費が上がった」という数字が頭に入っている。その数字には「それは職員を1割増やしたから」とか「給与が高い人の割合が1割増えた時だ」といった、現場で起きた物事が紐づけられています。すると、別の病院で「人件費○○円を減らしたい」という時に、逆に何ができるかを考えられるようになります。数字が、実際に現場で起きる物事・現象に変わっていくわけですね。komatsu2

——2017年に出版された『医業経営を“最適化”させる36メソッド』は、それまでの2冊はと少し違った本に仕上がっているように思いますが

 

『診療所経営の教科書』『病院経営の教科書』よりもさらに広い話題を、例えば戦略やビジョンからコスト削減まで、幅広く取り上げています。

 

もともとは、雑誌の連載記事として執筆していた記事をまとめ直したものなので、章ごとに読みやすい構成でありつつ、知識としては整理されたものになっています。出版社の方に「そのまますぐ出せます」とお声がけいただき着手したのですが、掲載するデータを更新したり、最終的には15本分を書き足したり(笑)。

 

——執筆の経験から学ぶことはありますか?

 

これまで多くの医療法人の中に入り事業に関わらせていただき、自分なりの病院・診療所経営に対する全体感は持てるようにはなりました。とはいえコンサルって、クライアント1件1件のために、オリジナルでカスタマイズするものですよね。

 

現場に近づくほど、対応すべきことは個別的で具体的になります。日々の患者さんをみながら、ドクターや看護師がどう動くべきかとか、この機器を買うべきかとか。医療機関として目の前のやるべきことをやっていく必要があり、その中には「昨日言ったことと今日言ったことが違う」みたいな矛盾したことも起こりえるのですが、それでも、毎日を成り立たせるためのロジックやビジョン、ストーリーは、持つべきだと考えています。

 

執筆は、現場での経験からルールを引っぱり出そう、普遍的に抽象化しようと、一歩引いて考える作業。自分の中の判断の軸になり、その判断軸を使って、今度は現場で「先生、このくらいの規模の病院であれば通常は…」みたいな話もできるようになったように思います。

 

——執筆された本をどのような人に読んでもらいたいと思っておられますか。

 

診療所経営や病院経営の本は、経営コンサルタントが読めばよいものだと思われる先生もいらっしゃるかもしれません。でも僕の考えとして、経営者の方とコンサルは同じ目線であるべきだと考えています。たとえば患者さんお一人の診療に1時間かけてしまうドクターがいたとして「それでは先生のお給料も出せないから…」と言わなくてはいけない時、これを言えるのは、経営者かコンサルタントしかいないんですから。なので、経営者の方には医療機関経営について理解を深めるためにぜひ読んでもらいたいと思っています。

 

現場からの要望を聞きながら、先生がやりたい医療をある程度でき、あるいは折り合いをつけ、それでも採算が合うところで経営を続けていくためにも、コンサルと経営者は同じ目線であってほしい。ベースには「みんなでいい医療をしようよ」という思いがありますので、僕の書いた本がその一助になるといいですね。

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<インタビュアーの一言>

本を書くという行為が、コンサルという仕事の中でどのような位置づけにあるのか、忙しい日々の中であえて時間を使って書いてこられた動機やその意味を知りたくて、お話を聞きました。本の中で示されている「普遍性×網羅性×実践性」は、病院・クリニックの経営に関わるコンサルタントとして、日々の業務の中でもぜひ意識したい視点ですし、本を読まれた方々の満足感が高い理由もここにあるのだと思います。
「執筆は、現場での経験からルールを引っぱり出そう、普遍的に抽象化しようと、一歩引いて考える作業」という言葉は、目の前の事案に目を奪われて、どんどん視野が狭くなりがちな私にとって、とても参考になる言葉でした。現場の視点を大切にしながらも、一歩引いて考えることで色々見えてくる景色が違ってきそうです。

協力:プラタナスの広場(https://hiroba.plata-med.com/