仕事に悩んだときに見てほしい映画

先日、仕事について実に色々と考えさせてくれる映画を観ました。といっても、ビジネスを題材にした映画でもなく、シリアスで深遠な映画でもなく、数年前に日本でヒットした「カメラを止めるな」です。
製作費300万円のインディーズ映画がクチコミで広がって最終的に30億円以上も興行収入を上げたそうです。フランスでリメイクされてカンヌ映画祭のオープニング作品として上映され、最近また話題になっています。

その影響で二度目を観たのですが、正直「二度見る映画ではないな」と思いながら家のテレビで流れているのを横目で見ていました。

【以下、ネタバレを含みますのでご注意下さい】

映画は、B級短編ホラーの撮影現場が舞台となっていて、撮影が進むうちにスタッフ、出演者が次々にゾンビになっていき、現場がカオスに陥っていきます。そしてカオスが終わった後、実はそれがゾンビチャンネルという専門テレビ局の番組であることが明かされ、時間を最初に戻して番組制作の舞台裏が時系列で紹介される構成になっています。

番組はカメラ1つで全編ワンカットでの撮影、かつ生放送なのが売りで、トラブルがあってもカメラを止めずに最後まで撮影する舞台裏の苦労や、作っている人たちの背景が本当の映画のストーリーなのです。「なるほど、裏ではこうなってたんだ」「こうやってストーリーを進めてなんとかワンカットで最後までいったんだ」とタネ明かしを楽しむというのがミソですから、一度目は「へー」と思いましたが、二度目はタネを知っているので楽しめないんじゃないかと思っていました。

ところが、二度目は一度目とは違った面が見えてきてびっくりしました。違った面というのは、映画の内容が、プロジェクト的な仕事の典型をうまく切り取って「あるある」と感じさせてくれ、これまでやってきた数々の仕事と重なって見える部分がたくさんあったことです。

まずは、参加メンバー。

メンバーがプロジェクトに最適な人選で、充分な数だけアサインされていて、全員意識が高く、同じ目的に向かって意思統一されている。。。なんていうことは全くなく、それぞれデコボコあり、力不足、適性違い、思惑違いの、寄せ集めチームから始まります。

低予算のB級映画ですから、主演はB級アイドルで、脇役も搔き集めた無名の役者ばかり。アイドルの相手役にはまあまあ売れている若手俳優が付きますが、本人は「俺がなんでこんなB級番組に、、」と不満たらたら。。不満に加えて自分のこだわりで作品にテーマ性を求め、監督にとっては使いづらい存在です。アイドルは自分がどう映るかを気にするばかりで演技に身が入りません。

脇役も、酒癖が悪いベテラン俳優や、神経質で自分の都合ばかり主張して協調性のない俳優などなど。スタッフもやる気がなく適当に仕事をこなすだけだったり、プロデューサーは、難しい設定を押し付ける割にはヴィジョンも責任感もありません。そんな中で苦労して番組を成り立たせるべく奮闘する監督が主役なのですが、監督自身も「速い、安い、質はそこそこ」を身上としており、言わば同じ穴のムジナ的です。

メンバーの次はプロセスです。

チームが組まれ、番組作りがスタートしますが、磐石とは程遠い体制ですから、途中に大小様々なトラブルに見舞われ、ある者は、自分勝手な都合に合わせて内容、やり方をねじ曲げようとします。その度に、なんとか対応していきますが、途中で「もうこんなの無理ですよ。やめましょう」と言い出すメンバーも出てきます。監督は、なだめすかしながら、メンバーをなんとか元に引き戻そうと頑張ります。

撮影当日にもメンバーが急遽来ない、俳優が酔い潰れて使い物にならない、といったことが勃発し、監督自身が劇中劇の監督として出演することになり、さらに家族まで代役に使うことになります(奥さんは役が憑依しすぎて何度もトラブルを起こした元女優、娘はこだわりが強すぎてどの職場にも適合しない助監督)。

カメラを止められないワンカットの撮影の中でトラブルに応じてリアルタイムに脚本を書き換え、予想外の出来事も作品中のシーンとしてなんとか使いながら生放送は進み、どうにか最後まで進めて作品として成立したところで映画は終わります。

面白おかしく描くために誇張されていたり、これほどトラブルばかりが重なることは無いだろうと、リアルに現実を描いているわけでもありませんが、ああ、こんな感じのことあるよなーとか、こんな感じの人いるよなーといったことが散りばめられています。

でも、私が「仕事について色々と考えさせてくれる」と言ったのは、そういった断片的な「あるある」ではありません。映画を見終えた後に、仕事との関連で思ったことは、以下のようなことです。

  • トラブルは必ずあるが、それは途中で投げ出す理由にはならない。むしろ、それをなんとかするのが仕事で、走りながら考えて修正して結果まで持っていくのが普通。
  • 初めから完璧なチームやメンバーなどいない。強みはバラバラ、足りないことがあっても組み合わせると良いチームを作ることは可能。
  • 一つ仕事を仕上げるたび、一つ修羅場をくぐり抜けるたびに人は成長していく。
  • 何かを作り上げることは、他では得られないものを人に感じさせ、人を輝かせる。

映画の中でも、トラブル対処しながらなんとか番組を成立させただけではなく、むしろ不測の事態に対処するたびに出演者がリアルな反応をすることで、当初思ってもいないような迫真のシーンが作られていきます。

当初は意識不足、能力不足、偏屈で意味のないこだわりばかり、、と、ろくでもない集団に見えたメンバーが、終わるときには、個性豊かでそれぞれの強みを持つ、輝く集団に見えました。

「速い、安い、そこそこ」が売りの監督も、実は秘めた情熱を持っており、プロデューサーから適当にトラブルを収めるように指示された時に、「これは番組じゃなくて作品なんだよ!」と啖呵を切っていました。私は思わず心のなかで「そうだそうだ。」と応援していました。他のメンバーも、この作品を終えた後は、それぞれ一皮剥けていい仕事をしそうだな、と想像させてくれました。

ということで、この映画は荒唐無稽なドタバタを描いた喜劇ではなく、どんな仕事も大なり小なり、このようなツギハギ、ドタバタであり、それを乗り越えてゴールを目指せばきっといいことあるよ、という応援歌のように感じました。

仕事について迷ったり、悩んだりしたときに、
「色々あって当たり前。その中で何ができるか、自分は何を目指すのか?」と、開き直りつつ自分について考えさせてくれる映画ではないかと思いました。

一度観た人も、まだ見ていない人でこのネタバレを読んでしまった方も、そういう目線でこの映画を観てみるといいことあるかもしれません。なかったらゴメンなさい。最後まで読んでくれてありがとうございました(岩崎克治)

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