~精神科一刀両断~ 精神科病院・クリニック経営コンサルティング ブログ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のメンタルヘルスについて

2020年04月28日(火)

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、日本での累計感染者数も1万人を超え、4月16日には緊急事態宣言が発令されました。

医療崩壊が危惧される中、それは精神科医療現場でも例外ではなく、日々感染症対策に追われる状況が続いています。COVID-19がもたらす国民のメンタルヘルスへの影響は大きく、この状況が長引けば、また仮に収束していった後も、メンタル不調をきたす患者数が増加していくことが予想され、精神科医療の重要性は今後ますます大きくなっていきます。

そんな中危惧されるのは、精神科医療現場にてCOVID-19に対応する医療従事者をはじめとする病院職員たちのメンタルヘルスです。

今回は、感染症対応に伴うメンタルヘルスについてご紹介させていただきます。日々現場で感染症と向き合う方々の一助となれば幸いです。

 

  • COVID-19対応者のメンタルヘルスの特徴

災害時の支援者は、支援のあいだ自分自身の健康の問題を自覚しにくく、また自覚したとしても使命感のために自身の休息や治療が後手に回りやすい傾向があります。この傾向は今回のCOVID-19の対応においても同様です。

しかし支援者には患者とはまた違った形のストレスも生じており、そうした支援者の健康問題にしっかり対応しないとCOVID-19収束後の、通常業務の再適応にも影響を与えてしまうことも考えられます。

適切なケアを行うため、支援者自身とその上司や管理者が非常時のストレス反応を知っておくことは、非常に重要です。

今回のCOVID-19への対応では、他の災害時ストレスに加え以下のような特殊性があります。

  • ~避けられない不安~

未知の部分の多いウイルスであるため、対応を熟知している医療従事者であっても常に不安が付きまとう状況。

  • ~得られにくい承認~

支援活動を公開できなかったり、他者に共有、発信できなかったりするため、他の災害時に比べ、対応者がリスクを負って頑張っているにも関わらず、承認を得られにくい。

  • ~孤独感や孤立感~

対応者は職務に従事することで、隔離を経験したり、地域住民から白い目で見られはしないかと怯えたりするかもしれない。働く人にとっての最大の健康資源である周囲の人間からのサポートが得られにくくなる。

  • ~立たない見通し~

ワクチンや治療薬が開発されていない現状では、見通しが立たない長期戦に発展する可能性もあり、支援者がストレスに長期間さらされ疲労が蓄積することが懸念される。

 

以上のような傾向を念頭に、具体的なストレス反応について書かせていただきます。

 

  • 支援者に生じうるストレス反応

上記のような特殊性以外にも、COVID-19特有ではない通常のストレス反応も当然生じる可能性があります。

具体的には以下のような反応が見られます。

  • (身体面)

呼吸が浅くなる、動悸、食欲や体重が変化する、胃痛、下痢、便秘、頭痛、寝付きが悪くなる、夜中に目が覚める、早朝に目が覚める。

  • (心理面)

無気力になる、不安、恐怖を強く感じる、わけもなく悲しくなる、憂鬱になる、イライラする、無感動になる、楽しみを感じない。

  • (行動面)

笑わなくなる、決断に時間がかかる、楽しんでやっていたことも億劫になる、身辺の整理ができなくなる、落ち着きがない、タバコ・お酒の量が増える、人を避けるようになる、遅刻、病欠が増える

 

これらの変化があるかどうかを、本人あるいは周囲が気づくことがケアの第一歩となります。

また①と②は、本人でないと変化に気づくことができない部分です。つまり周囲が気づくことができるのは行動面の変化だけということになります。

そのため、変化に気づくことと同じくらいに、ストレスへの対策が非常に重要となります。

 

  • 支援者のストレス対策

通常のストレス対策も当然必要とされることではありますが、ここではCOVID-19対応者に特化して、医療機関の職員それぞれができるストレス対策を以下にあげていきます。

  • 【支援者自身でできる対策】
  • ・職務の目標設定:業務の重要性や誇りを忘れない、日報など記録で頭を整理する。
  • ・生活ペースの維持:十分な睡眠と食事。非常時の中でも日常を保つことで変化の振れ幅を小さくしていくことは重要です。
  • ・感染症患者対応の知識を得る:知らないことは不安を増長させてしまいます。
  • ・自身の変化に気づく:上記のような変化がないか適宜確認し、変化があれば休むことを心掛けましょう。
  • ・周囲とのコミュニケーション:家族と話す、同じ境遇の人との共有、上司への報告や相談。
  • ・職場の同僚ができる対策
  • ・感染症に関する正しい知識を得る:知らないことは、偏見を生んでしまいます。また支援者は孤立しやすいことを知っておきましょう。
  • ・支援者の行動面の変化に気づく:上記のような変化がないか適宜確認し、変化があれば支援者に気づかせてあげることも重要です。
  • ・支援者と接する:普段通りの接し方を心掛ける。対象者が話したいときに話し相手になる。
  • ・上司(課長や看護師長etc)ができる対策
  • ・感染予防の明確なルールや業務手順の策定:対応が決まっていることは、支援者に安心感を与えます。
  • ・職場全体で気遣う環境づくり:他職種スタッフへの、支援活動の事前の周知。
  • ・支援活動後の配慮:健康観察期間中の自宅待機など。
  • ・支援者の行動面の変化に気づく:上記のような変化がないか適宜確認し、変化があれば休息を勧めましょう。
  • ・施設管理者(医局長、看護部長、事務長etc)ができる対策
  • ・COVID-19に関する最新情報の提供:日々変化する情報を、逐一提供していきましょう。わからんまい部分が多ければ多いほど、支援者の不安は高まります。
  • ・支援活動への承認、感謝の表明:世間から承認が得られにくい支援者に、管理者として承認欲求を満たしてあげることは、非常に重要です。
  • ・体制づくり:業務や担当の明確化、ローテーションの配慮。
  • ・労務管理:健康観察期間の支援や復帰調整。支援者本人に陽性反応が出た場合の配慮。
  • ・精神保健支援:支援に伴うメンタル不調が出た際の、内外の相談支援環境の提供。

 

今回のCOVID-19の流行により、当たり前のことが当たり前でなくなり、非日常が続いています。また未知のウイルスに対して、臨機応変な対応が次々と求められている状況です。

しかし精神科医療にとって、非日常に対する臨機応変な対応は得意とするところであるはずです。

困難な状況が続きますが、密に連携・情報共有し、事態が収束するまで乗り切っていきましょう。

2020年診療報酬改定 精神科領域 その2

2020年03月02日(月)

前回に引き続き精神領域の改定ポイントについて見ていきます。

 

※精神科身体合併症管理加算について、高齢化による病態の変化等を踏まえて対象疾患等の要件を見直し、算定可能となる日数の上限を見直します。

 

※栄養サポートチーム加算の対象となる病棟を見直します。

 

※精神科外来における多職種による相談・支援について評価されます。

 

※精神科在宅患者に対する支援が評価されます。

 

※精神障害を有する者訪問看護について要件が見直されます。

 

 

精神科身体合併症管理加算について

第1 基本的な考え方

精神病棟における高齢化等による病態の変化等を踏まえ、精神科身体合併症管理加算について、対象疾患等の要件を見直す。

第2 具体的な内容

1.精神科身体合併症管理加算について、算定可能となる日数の上限を見直す。

【精神科身体合併症管理加算】

 精神科身体合併症管理加算(1日につき)

              1  7日以内                   450点 ⇒ 450点

              2  8日以上10日以内 225点 ⇒ 8日以上15日以内  300点

2.対象に指定難病の患者を加える。

[算定要件]当該加算を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に、別に厚生労働大臣が定める身体合併症の患者のいずれに該当するかを記載する。

これにより、10日~15日までの加算が増益となります。

 

月額

現行(225点)

加算2 8日から10日まで

新点数(300点)
加算2 8日から15日まで

差し引き増益(円)

 

日数

金額(円)

日数

金額(円)

月10人

30

6,7500

80

240,000

172,500

月20人

60

135,000

160

480,000

345,000

月30人

90

202,500

240

720,000

517,500

           

年額

現行(225点)           加算2:8日から10日まで

新点数(300点)

加算2:8日から15日まで

増益(円)

 

日数

金額(円)

日数

金額(円)

月10人

30

810,000

80

2,880,000

2,070,000

月20人

60

1,620,000

160

5,760,000

4,140,000

月30人

90

2,430,000

240

8,640,000

6,210,000

 

対象患者が月30人いれば年額で620万円の増収となります。

 

栄誉管理サポートチーム加算について

第1  基本的な考え方

結核病棟や精神病棟の入院患者に対する栄養面への積極的な介入を推進する観点から、栄養サポートチーム加算の対象となる病棟を見直す。

第2  具体的な内容

算定対象となる入院料として、結核病棟入院基本料、精神病棟入院基本料及び特定機能病院入院基本料(結核病棟、精神病棟)を追加する。

 

 

精神科外来における多職種による 相談支援・指導への評価

第1 基本的な考え方

地域で生活する精神疾患患者の支援を推進するために、精神科外来における多職種による相談・支援等について新たな評価を行う。

第2 具体的な内容

精神病棟に入院中に精神科退院時共同指導料1を算定した患者に対して、精神科外来において多職種による支援及び指導等を行った場合について、通院精神療法に加算を設ける。

[算定要件]

通院・在宅精神療法1を算定する患者であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、当該保険医療機関における直近の入院において、精神科退院時共同指導料1を算定した患者に対して、精神科を担当する医師の指示の下、保健師、看護師又は精神保健福祉士が、療養生活環境を整備するための支援及び指導を行った場合に、療養生活環境整備指導加算として、初回算定日の属する月から起算して1年を限度として、月1回に限り250点を所定点数に加算する。

 

 

 

精神障害を有する者への訪問看護の見直し

第1 基本的な考え方

精神障害を有する者への適切かつ効果的な訪問看護の提供を推進する観点から、利用者の状態把握を行うことが可能となるよう、精神科訪問看護基本療養費、精神科訪問看護・指導料及び複数名精神科訪問看護加算の要件の見直しを行う。

第2 具体的な内容

1.精神科訪問看護基本療養費等について、訪問看護記録書、訪問看護報告書及び訪問看護療養費明細書へのGAF尺度により判定した値の記載を要件とする。

2.複数名精神科訪問看護加算について、精神科訪問看護指示書への必要性の記載方法を見直す。

  (別紙様式17) 精神科訪問看護指示書 複数名訪問の必要性 あり・なし

   理由: 1.暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者

       2.利用者の身体的理由により一人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者

               3.利用者及びその家族それぞれへの支援が必要な者

               4.その他(自由記載)

3.精神科訪問看護・指導料について、訪問した職種が分かるよう区分を新設する。

 イ 保健師又は看護師による場合 (1)~(4)

 ロ 准看護師による場合 (1)~(4)

 ハ 作業療法士による場合 (1)~(4)

 ニ 精神保健福祉士による場合 (1)~(4)

 

前回に引き続き、以上が2020年診療報酬改定の精神科領域での主な改定項目になります。

入院患者の高齢化や退院促進強化とリンクした改定内容だと思います。

2020年診療報酬改定 精神科領域 その1

2020年02月26日(水)

2019年末に政府から2020年診療報酬改定に関し、診療報酬本体部分で0.55%のプラス改定になるとの発表がございました。内訳は、医科プラス0.53、歯科プラス0.59、調剤プラス0.16と働き方改革への対応分プラス0.08と決定しました。更に2020年2月5日に「個別改定項目」、7日に答申が、中央社会保険医療協議会から決定し厚労省HPで発表になりました。今回の改定で精神科領域においては、大きな変更はございませんでしたが、概ね下記のようなポイントが要点となります。

 

 

* 精神科救急入院料は、病棟単位で市場に対して必要性が問われます。

* 精神科急性期医師配置加算において、クロザピン導入実績によって差が付けられる事となります。またクロザピン新規導入を目的とした転棟に対しては、在宅移行率における優遇策が設けられます。

* 精神療養病棟において、疾患別リハビリテーションや持続性抗精神病注射薬剤が算定可能となります。

* 地域移行機能強化病棟が、若干要件厳格化される一方で、令和6年3月末まで期限延長となります。

* 退院時における地域医療機関との連携強化に対し評価がされます。

* ギャンブル依存や公認心理師によるカウンセリング児童思春期対応が認められます。

 

 

 精神科救急入院料について

 

第1 基本的な考え方

地域における精神科救急の役割等を踏まえ、精神科救急入院料について、複数の病棟を届け出る場合に、病棟ごとに満たすべき要件を明確化する。また、届出病床数の上限を超えて病床を有する場合について、経過措置の期限を定める。

第2 具体的な内容

1.精神科救急入院料について、複数の病棟を届け出る保険医療機関においては、病棟ごとに基準を満たす必要がある旨を明確化する。

(下記をいずれも届出病棟数で乗じた以上とする)

ア 精神疾患に係る時間外、休日又は深夜における診療(電話等再診を除く。)件数の実績が年間150件以上、又は1の(12)のア又はイの地域における人口1万人当たり1.87件以上

イ 精神疾患に係る時間外、休日又は深夜における入院件数の実績が年間40件以上又はアの地域における人口1万人当たり0.5件以上であること

2.届出病床数の上限を超えて病床を有する場合について、経過措置の期限を定める。

令和4年3月31日までの間、当該時点で現に届け出ている病床数を維持することができる。

 

 

精神科急性期医師配置加算の見直し

 

第1 基本的な考え方

精神科急性期治療病棟入院料における精神科急性期医師配置加算について、実績に係る要件を見直す。

第2 具体的な内容

精神科急性期治療病棟入院料1における精神科急性期医師配置加算について、現行の要件である新規入院患者の自宅等への移行率に加えて、クロザピンを新規に導入した患者数の実績によって、3つの類型に分けて評価する。

 

(旧)精神科急性期医師配置加算(1日につき)                                  500点

               ⇓

 精神科急性期医師配置加算(1日につき)

 1 精神科急性期医師配置加算1 (精神科急性期治療病棟入院料1)          600点

 2 精神科急性期医師配置加算2

   イ 精神病棟入院基本料等の場合(精神科以外の病床100床以上)                 500点

   ロ 精神科急性期治療病棟入院料の場合                                                500点

 3 精神科急性期医師配置加算3                                                                   450点

 

[施設基準]

精神科急性期医師配置加算1  (2) 直近1年間にクロザピンを新規導入実績が6件以上

精神科急性期医師配置加算3  (2) 直近1年間にクロザピンを新規導入実績が3件以上

 

 

精神科急性期病棟における クロザピンの普及推進

 

第1 基本的な考え方

精神科の急性期治療を担う病棟の入院料について、クロザピンを新規に導入する患者の転棟に係る要件及び自宅等への移行実績に係る要件を見直す。

第2 具体的な内容

1.クロザピンを新規に導入することを目的として転棟する患者について、精神科救急入院料、精神科救急・合併症入院料を算定できるよう見直し、また、精神科急性期治療病棟入院料を算定できる期間についても見直す。

【精神科救急入院料】

[算定要件]

ウ ア及びイにかかわらず、クロザピンを新規に導入することを目的として、当該入院料に係る病棟を有する保険医療機関において、当該保険医療機関の他の病棟から当該病棟に転棟した入院患者

 

2.精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科急性期医師配置加算及び精神科救急・合併症入院料について、クロザピンの新規導入を目的とした入院患者を、自宅等への移行率の対象から除外する。

(精神科救急入院料2、精神科急性期治療病棟入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科急性期医師配置加算、及び精神科救急・合併症入院料についても同様)

 

クロザピンを投与中の患者に対する ヘモグロビンA1cの測定に係る要件の見直し

 

第1 基本的な考え方

クロザピンを投与中の患者については、定期的にヘモグロビンA1cを測定する必要があることから、ヘモグロビンA1cの検査について要件を見直す。

第2 具体的な内容

血液形態・機能検査のヘモグロビンA1cについて、クロザピンを投与中の患者に対しては、月1回に限り別に算定できるようにする。

【血液形態・機能検査】

9 ヘモグロビンA1c(HbA1c)         49点(変更無し)

 

 

精神療養病棟におけるリハビリテーションの推進

 

第1 基本的な考え方

精神病棟に長期に渡り入院する患者の高齢化及び身体合併症等の実態を踏まえ、精神療養病棟におけるリハビリテーションの算定要件を見直す。

第2 具体的な内容

精神療養病棟入院料について、疾患別リハビリテーション料及びリハビリテーション総合計画評価料を別に算定できるよう見直す。

[算定要件]

注2 (・・心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料、リハビリテーション総合計画評価料・・・を除く。)

 

精神療養病棟入院料等における 持続性抗精神病注射薬剤の取り扱いの見直し

 

第1 基本的な考え方

精神病棟からの地域移行・地域定着支援を推進する観点から、精神療養病棟入院料等における持続性抗精神病注射薬剤に係る薬剤料及び管理料の取扱について要件を見直す。

第2 具体的な内容

1.精神科救急入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料、精神療養病棟入院料及び地域移行機能強化病棟入院料について、持続性抗精神病注射薬剤に係る薬剤料の包括範囲を見直す。

[施設基準]

(追加)持続性抗精神病注射薬剤(投与開始日から60日以内に投与された場合に限る。)

2.持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料について、入院中の患者に対しても算定可能とする。

[算定要件]

 1 持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料                       250点

   ⇒ イ 入院中の患者                                              250点 

         ⇒ ロ 入院中の患者以外                                         250点 

2 治療抵抗性統合失調症治療指導管理料          500点 ⇒ 500点

 

 

地域移行機能強化病棟の継続と要件の見直し

 

第1 基本的な考え方

精神病棟の長期入院患者の地域移行を推進するため、地域移行機能強化病棟入院料について、当該入院料に係る実績等を踏まえ、届出期間の延長と要件の見直しを行う。

第2 具体的な内容

1.地域移行機能強化病棟入院料について、当該入院料の算定に当たって要件となっている許可病床数に係る平均入院患者数の割合を見直すとともに、長期入院患者の退院実績に係る要件を見直す。(令和6年3月31日まで延長)

 

(14)届出時点で、病床稼働率が0.9(⇒0.85)以上であること。なお、届出に先立ち精神病床の許可病床数を減少させることにより0.9 (⇒0.85)以上としても差し支えないこと。

イ 毎月の1年以上入院患者の自宅退院/稼働病床が1.5% (⇒2.4%)以上であること。なお、自宅等への退院とは、患家、介護老人保健施設又は精神障害者施設へ移行することをいう。

(15)算定開始以降、各月末時点で、上記数値が1.5% (⇒2.4%)以上であること

(16)算定開始以降・・・算定開始月の翌年以降の同じ月における許可病床数は、以下の式で算出される数値以下であること。 届出前月末日時点での精神病床の許可病床数-(当該病棟の届出病床数の5分の1 (⇒30%) ×当該病棟の算定年数)

2.当該病棟において、専従の精神保健福祉士の配置に係る要件を緩和する。

[施設基準] 二十 (1) 当該病棟に専従の常勤の精神保健福祉士が一名以上配置されており、かつ、当該病棟に専任の常勤の精神保健福祉士が一名以上配置されていること。

 

 

精神病棟における退院時共同指導の評価

 

第1 基本的な考え方

精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する観点から、精神病棟における退院時の多職種・多機関による共同指導等について新たな評価を行う。

第2 具体的な内容

精神病棟に入院中の患者に対して、入院医療を提供する保険医療機関の多職種チームと、地域において当該患者の外来又は在宅医療を担う保険医療機関の多職種チームが、退院後の療養等について共同で指導等を行った場合の評価を新設する。

 

(新) 精神科退院時共同指導料

 1 精神科退院時共同指導料1(外来又は在宅医療を担う保険医療機関の場合)

  イ 精神科退院時共同指導料(I)                                       1,500点

  ロ 精神科退院時共同指導料(II)                              900点

 2 精神科退院時共同指導料2(入院医療を提供する保険医療機関の場合)         700点

[対象患者]

1のイ 精神病棟に入院中の患者であって、「精神保健福祉法」第29条又は第29条の2に規定する入院措置に係る患者、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定する同法による入院又は通院をしたことがある患者又は当該入院の期間が1年以上の患者(「措置入院者等」)

1のロ 精神病棟に入院中の患者であって、別に厚生労働大臣が定める患者

 

 

ギャンブル依存症に対する治療の評価

 

第1 基本的な考え方

ギャンブル依存症に対して有効な治療の提供を推進する観点から、ギャンブル依存症の集団治療プログラムについて新たな評価を行う。

第2 具体的な内容

依存症集団療法の対象疾患にギャンブル依存症(300点)を追加する。

 

 

児童思春期の精神疾患等に対する支援の充実

 

第1 基本的な考え方

発達障害等、児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、小児特定疾患カウンセリング料について要件を見直す。また、被虐待児等の診療機会を確保する観点から要件を見直す。

 

第2 具体的な内容

小児特定疾患カウンセリング料について、公認心理師が実施する場合(200点)の評価を新設する。また、対象に被虐待児等を含むことを明確化する。

 

以上、2020年診療報酬改定の精神科領域での主な改定項目となります。各医療機関様の経営改善、また医療の質向上に繋がる項目があると思います。

当社支援先病院・地域連携室立ち上げケース

2020年01月22日(水)

現在ご支援にあたっているA病院は、中規模病院として地域の精神科医療を担い、外来は精神科、神経科、内科を開設し、病棟は精神科急性期病棟、精神科一般病棟などを有しておられます。地域に密着して、多くの精神疾患の患者さんを受け入れて安定的に経営を行ってこられましたが、病棟建替による資金借入や病床稼働低下などの要因によって、一時的に経営が厳しい状況となっておられました。

 

この現状を改善すべく、ご依頼を頂戴し、当院においてコンサルティングサービスをスタートさせました。今回は当コンサルティングサービスの中で最も重要であった渉外部門・地域連携室の立ち上げに焦点を当てつつ、改善に向けた取組みをご紹介させていただきます。

 

  1. 人口動態、診療報酬改定を始めとする厳しい外部環境の中、A病院が地域で安定的かつ継続的に医療を提供し続けるための事業戦略の策定を目的とする第1段階の調査分析を実施し経営陣に報告を行い、第2段階の実行支援としてまずは全職員対象の説明会を開催しました。

 

  1. 収益に直結する病床稼働率を向上させるための施策として、まずは渉外部署である地域連携室を立ち上げることで院内外との窓口としての役割を担って貰い、スムーズな調整を一番に心掛けて業務改善を図りました。また集患の前提として、当院医師や看護師、その他病院スタッフに受け入れ対象患者や目標数値などの共通の認識を持っていただくことで院内連携の体制を構築しました。

 

  1. これまで感覚的に行っていた他院からの相談内容や訪問記録などの営業活動を共有シートに記録し情報を蓄積していくことで、傾向が見えてくるため今後の活動の方針決めにも役立ちます。また受け入れ基準や当院パンフレットなどの営業ツールを新たに作成し、他院へ挨拶回りに伺い、包括向けに病院説明会を開催し、認知度向上を図りました。

 

  1. 自院の診療機能を丁寧にご説明し、連携先との需給関係を一致させるなどの明確な目的を持ち営業活動を行うことで紹介患者は増加するので、次はそこで築いた関係を崩すことなく継続して活動し、安定した病床稼働を確保しました。病床稼働安定化は収益向上に繋がり、これまでの課題であった人材採用や新たな広報戦略を打ち出すことが可能となりました。

 

 

連携強化のための第一歩

 

昨今の医療業界は何もしないで待っているだけの医業経営では生き残っていけない時代に突入しています。当院ではまずは院内の仕組み作りから着手し、これまで単なる挨拶回りに終始していた営業活動も明確な目的を前面に出しながら行い、病床稼働を上げ安定経営を目指すこととしました。

 

例えば営業の現場では、「外部環境を分析したところ、今後~~な患者が増えていく予想ですが貴院では実感としていかがでしょうか?」、「当院では~~の診療機能を強化したので今後~~の部分で貴院のお力になれると考えており、~~では引き続き先生のご協力をお願いいたします」というようにこちらの意思と需給関係を明確にお伝えすることが重要だと考えます。

 

「他院は当然当院のことを知ってくれている」と考える医業経営者はわりと多い印象ですが、名前は知っていただいているものの、意外と診療機能など重要なことが知られていないケースが大多数だと、営業同行を通しても感じております。(当然、院長同士が旧知の仲であることや昔から関係の深い医療機関も一定数あると思います)

 

また、季節ごとの挨拶回りはもちろんですが、初めのうちはちょっとしつこいかなと思われるくらい積極的に顔を出すようにしてもらいました。訪問頻度のイメージとしては1~2ヶ月くらいのスパンで、営業用パンフレットやチラシが完成する度に訪問し直接お渡しします。その際もただ単にお伺いするだけでなく有益な情報を得るよう心掛け、病院の連携室スタッフや開業医の先生方と情報交換を行ってまいりました。そして入院相談をいただいた際には迅速に受入れ、もしもタイミングが悪く受入れができなかった場合には訪問もしくはお電話でフォローを行います。

 

こうした地道な営業努力が必要となりますが、5年後10年後も安定して病院を存続していくために各医療機関が目指す方向性と存在意義を、時間をかけ丁寧に地域に浸透させていくことが大切であると考えます。

 

A病院の場合、当社が介入した時点で75%ほどであった病床稼働率は、地域連携室を立ち上げ営業活動を行った数か月後には90%を超え、安定した病床稼働を手にすることができました。今後の課題としては、この病床稼働を一過性のもので終わらせないために、地域連携室のスタッフが自発的に営業活動を継続していくことが求められます。

 

 

地域で愛される病院へ

 

こうして地域連携を通じて一時的な病床稼働が上がった暁には、次は『他院との差別化を図るためのアクションを起こす』ことを目指してもらえたらと思います。

 

まず医業経営を安定させたいということであれば、前述のように営業活動を見直し、病床稼働の上昇を促すことが第一歩であると考えます。

 

次(または同時)に行うこととして、営業で上げた病床稼働をより安定的にするために、他院との差別化を目指してほしいと思います。一例ではありますが、市の社会福祉協議会と連携した出張公開医療講座や健康相談会、また病院見学会を開催することを提言したいと思います。今後も認知症高齢者の問題が増加する現代社会において、例えば認知症に強みを持つ精神科病院であれば、ニーズの高い認知症ケアや介護サービスについての医療講座や相談会を開催することで、患者家族はもちろんのこと、一般科の看護師も積極的に参加して下さるでしょう。

 

こうしたイベントで地域の方々は医師や病院スタッフの人間性に直に接することができ、さらにその空間にご満足いただければ高確率で病院のファンになっていただけます。

 

さらにこれらを完全無償で行うことにより地域や行政からの評価は高まり、その効果は医療機関名の認知向上に繋がり、外部からの高評価は病院スタッフのモチベーションアップにも直結するでしょう。

 

こうして医療機関の利用者や地域住民から尊敬を集め、好循環を創出することで他院とは一線を画す『地域で愛され必要とされる病院』としての地位を確立する一歩となると考えます。

 

当社支援先での実例報告

2019年08月23日(金)

当社支援病院は、1968年「K」として48床でスタートし、増築、増床等をしつつ運営しておりました。ところが、事務長の不法行為、看護師の集団退職、医師の離職、新棟の建築でつまずき経営が悪化。病院ランキングでもワースト10に入ってしまうような医療機関となり、2007年5月に民事再生に陥りました。

その経営改善に際し、当社は、「外科的手法(大改革)」「内科的手法(じっくり改革)」「漢方的手法(体質改善)」という3つの柱を持って取り組みました。

  1. 外科的手法

 切った貼ったの外科的大改革として、民事再生による大幅は債務カット、ファンドより資金調達の実施、院長/理事長/理事の交替を敢行し、医師/看護師採用も急務としました。

 

  1. 内科的手法

 じっくりと投薬効果を見る内科的手法として、稼働率向上のために身体合併症や認知症対応を強化。また、特殊疾患入院施設管理加算等の算定に向けて施設基準の整備を実施。コストを見直すために、リネン等の業者入替も実施致しました。

 

  1. 漢方的手法

 内科的手法と併用して、漢方で体質改善を図るため、スタッフに「経営目標の提示」とその進捗報告、会議体の作成、就業規則の見直しをはじめとしたコンプライアンス整備を実施しています。

2010年には、心機一転、改名致しました。

当社スタッフは、民事再生後から事務長職として現場に数名常駐とし、一緒に汗をかいております。

上記、3.漢方的手法で記載致しましたが、会議体の作成について、いくつか事例をあげてみます。(「」内は当院名称)今まで、月例報告のような場がなかったので、「運営会議」を設け、月別の売上、予算達成度合、各部署からの報告事項を受けられるようになっています。こちらは、理事長/院長/看護部長/事務長に加え、各部署長が参加します。コメディカルを含めた他部署とは、別途、「診療協力部会議」を設け、各部署からの報告/相談事項を討議します。他部署が出席していることで、横のつながりから課題が解決することも多いです。

また、現場では、精神科特有とも言える苦労も多いです。

トラブルの中でも、一番困るのは「離院」でしょうか。あまり聞き慣れない言葉かと思いますが、その名の通り、「患者様が病院から離れていなくなってしまう」ことです。離院が判明すると、スタッフに緊急コールがなされます。病状によっては、自傷他害行為の恐れもあるため、警察にも届出ます。手の空いているスタッフと一緒に探し回るため、普段はあまり話すことのない病棟看護師とも、ある種の連帯感は生まれます。離院はあってはならないことなのですが、思わぬ副産物もあるような気もしています。

また、季節毎に様々な行事も企画します。主に、レクリエーション委員会が前面にたつのですが、当然事務長職も協力します。春にはお花見に同行、夏には移動水族館を手配。秋の収穫祭としてサンマを焼き、冬には駐車場にクリスマスツリーのイルミネーションを飾るなど、患者様とも一緒になって楽しんでいます。

様々な改革で、去って行く職員もありましたが、残ったスタッフや新しく参画してくださったスタッフの努力もあり、売上も順調に推移、滞っていた新棟建築も改めて図面を引き直して計画し、開発許可を得ることができました。2017年には新棟南館が竣工し、東館との二棟構成で合計378床での運営を行っております。2019年現在、最も古かった西館を解体し、跡地は東京都との協議により、緑地化することとし、2020年1月の完成を目指し、工事を進めております。

「心から笑い、ご飯が美味しいと思えるような人生を送って頂きたい。それが私達の望みです。」というスローガンを掲げ、南館には、精神科急性期病棟・身体合併症病棟を持ち、内科医の常勤も2名配置することが出来ております。病室は、室料差額を頂いておらず、経済面を気にせずに療養して頂けるよう運営の工夫も行っております。SSTや作業療法のプログラム立案も他職種で関わり、春のお花見や初詣、卓球大会参加など、外出レクリエーションにも注力し、退院後の生活を意識したプログラム作成に取り組んでおります。

 地域連携では、PSWを専属で配置し、「顔の見える連携」に力を入れた結果、精神病院や一般身体科病院からのみならず、近隣クリニックや行政(福祉事務所、地域包括支援センター)からもご紹介をいただけるようになりました。

 さらに信頼を得るべく、様々な仕掛けを実施していきたいと考えております。

第1回(「630調査」をみてみよう!その1)

2017年10月02日(月)

 

(本カテゴリーについて)
このコーナーでは、各種統計データを独自の視点で分析し精神科医療の現状と将来についての洞察を得ることを目指します。

 

(今回のテーマ)
今回は、「精神保健福祉資料」いわゆる「630調査」を取り上げます。
「630調査」は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課が実施している、精神科病院、精神科診療所等、精神障害者社会復帰施設等、精神科デイ・ケア等、精神科訪問看護、都道府県等の関連事務の現況に関する資料です。
直近の調査結果は平成27年6月30日付けのものです(概算値)。

 

(過去3年間の回答率)
直近の回答率を見ますと、平成25年98.2%、平成26年97.3%、平成27年93.8%と低下傾向にあります。
しかし、依然として90%超の高い回答率であり、精神科医療の現状を把握するのに有益なデータが収集されていますので、このデータを分析することで精神科医療の実像が浮き彫りにできると思います。

 

(精神科病院数・病床数・病棟数の推移(注意点))
早速、データを見てみますが、留意点があります。
精神科病院の全体観を把握するため、病院数、病床数等の推移を調べてみたいのですが、
【図1】を見て下さい。H26年、H27年と病院数が激減しています。単科精神科病院がH25-H26で▲13件、H26-H27で▲39件と、明らかに異常値が出ています。

 

 

これは、回答施設数が減少しているためであり、注意が必要な点です。病院数、病床数等の推移については医療施設調査を見る必要があります。
医療施設調査によれば、精神科病院数は【図2-1,2-2】のような結果となっており、H23年以降減少傾向にあることがわかります。

 

 

また、精神病床数も減少し続けていることがわかります【図3-1,3-2】。

 

 

(注: 図2,3いずれも「医療施設(動態)調査」(3年毎に実施)のデータ。H27の直近値があるため、H26-H27間のみ1年間の数値)

 

(稼働率)
「630調査」にもどり、稼働率をみてみます【図4】。

 

 

 

H23年以降、減少の一途を辿っています。H23-H27の4年間で2.6%減少しています。
精神科の施設数(病院数、病床数)が減少しているにもかかわらず、稼働率も低下している状況です。
これは、供給を上回るペースで需要の減少が進んでいることの現れと捉えられます。
従って、精神科病院および病床数の減少は、これからさらに進むことが予想されます。

 

今後、複数回にわたり「630調査」と関連データをもとに、精神科の実態を分析して行きたいと思います。

 

以上

精神科領域の全体観について

2017年03月06日(月)

【本ブログについて】

このブログでは、精神科領域の政策動向や各種トレンドの情報、私たちが実践の中から得た知見など、精神科医療機関とその周辺領域の運営に役立つ情報を発信して参ります。

今回は直近の精神科領域の全体観を取り上げたいと思います。

【精神科とその周辺で発生している主な出来事】

現在、精神科の領域では以下のような状況が生じています。

既存の長期入院患者の高齢化や精神科薬の向上により精神科の入院患者数は減少しています。一方で、日本はOECD諸国と比較し病床数が多く、その数もあまり減少して来ませんでした。

一般病床では、地域包括ケアシステムの構築が進められ、これらを背景に平均在院日数も短縮しています。精神科病床でも平均在院日数は短縮しており、全国平均では300日を切っています。

【精神科病院における各種政策動向】

直近の政策動向を見ますと、精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築が進められつつあることがわかります。

これに基づいて地域における精神科病院間の役割分担と、自院の医療機能の明確化が求められます。

具体的には統合失調症、認知症、児童・思春期精神疾患、精神科救急、身体合併症、自殺未遂、うつ、PTSD、依存症、てんかん、高次脳機能障害、摂食障害、災害医療、医療観察、についての役割分担が求められています。

また、1年以上の長期入院患者は「重度かつ慢性」の基準で選別され、該当しない者(1年以上の長期入院患者の約40%が該当するとされる)の地域移行がさらに促進される見込みです。

さらに、1年以内の早期退院率の向上が求められつつあります。あらたな長期入院患者の発生を極力抑えようという流れです。

【精神科病院に求められる対応】

まず早急な対応を要することとして自院の「重度かつ慢性」患者数の把握と、「重度かつ慢性」に該当しない患者への対応を検討することが求められます。

例えば認知症対応力の強化や身体合併症対応の強化など、短期(1年以内)での退院を想定した患者への対応をどうするか考える必要があります。

一般急性期病院、総合病院においても精神科疾患を持つ患者の対応は必須ですが、急性期後の対応に課題があります。これらの病院との連携強化を進める必要があります。

上記のほか、デイケア、訪問看護、アウトリーチ等の拡充、リハビリ機能の強化などを検討して行く必要があります。

今後も精神科医療機関の運営に役立つ情報を発信して参りますので、ご期待下さい。

精神科チーム 小塚正一