コラム

2020.06.26 コラム ノウハウ

第三者への医療法人承継

親子間承継との違いを解説

医業承継には「親子間承継」「第三者への承継」があります。それでは医療法人における第三者承継は、親子間承継と比較してどのような特徴や注意点があるのでしょうか。親子間承継を行う場合は、出資持分を譲渡すればオーナーとしての承継作業は完了しますが、第三者承継はそれで終わりではありません。最大の関門と言われる社員・理事・理事長の交代など、「親子間承継」にはないポイントを挙げながら解説します。

 

一筋縄ではいかない、社員・理事・理事長の交代

社員・理事・理事長の交代をする場合、最初に検討すべきは社員です。社員の交代は、旧社員が退社届を提出し、新社員の入社を社員総会で承認します。旧社員の退社は特に重要で、退社には各人からの同意が必要です。この同意を得られなければ、事業承継が進み体制が変化した後も旧社員が在籍し続けます。これは、旧社員が社員総会の議決に反対票を投じることが可能であることを意味します。そのため第三者への事業承継を決めたら、社員への説明を行い、早めに退社届の提出を促しておくことが非常に大事です。

 

また、理事・理事長の交代に関しては、旧社員への「退社」を促すパターンと異なり、事業への影響を加味しつつ「継続・交代」を相談していきます。特に病院やクリニックの管理医師(院長)は、新たに理事または理事長に就任することが求められるため、こうした医師まで理事交代を強引に進めると、その後の事業存続自体が危ぶまれる可能性があるので注意が必要です。

 

理事長自身は医師かつオーナーで、さらに創業メンバーでもあるパターンが多いです。仮に事業承継によって重要ポストから外れても、一定の期間は経営において頼れるアドバイザーとして、事業に関わり続けてもらうことをお勧めします。

 

第三者への医業承継に必要な3つのポイント

第三者への医業承継を行う際には、事業そのものが存続可能かどうかはもちろん、現在の社員や関係者への対応が特に重要となってきます。医業承継に必要なポイントを3つに絞り、解説します。

 

 

事業そのものの魅力と持続性

 

譲渡する側とされる側両者にとって重要なのは、事業自体が魅力的であることです。そしてその魅力は長期的に持続することが肝心で、将来が見込める事業である必要があります。また、財政上の課題がないことや、コンプライアンス違反をしていないなど、健全な経営を長期的に行っていくことが、将来事業を承継する際の手助けになります。

 

 

社員の退社手続き

 

早めに社員交代を行うことも重要です。家族経営で社員が数名程度であれば、そこまで苦労することはありません。しかし、遠い親戚や事務長、知人などを社員に選任している場合、いつ意見を変えるか分かりません。社員は原則、強制的に退社や除名を行うことが難しく、自主退社と死亡退社が原則なので、事業承継を決意した時から早めに退社手続きを進めることを心がけましょう。

 

 

関係者への説明

 

行政や従業員など関係者への丁寧な説明も、必要不可欠です。譲渡が明確になった時点で筋を通しておくのが無難ですが、事業承継の最終契約が締結される前に幅広く周知してしまうと、思いもよらぬ出来事や譲渡自体の破談が起きる可能性もあるので、注意が必要です。

 

親子間承継と第三者承継の違いとは

第三者への医業承継を行う場合、すでに関係性ができあがっている親子間承継よりも注力しなければならない点がいくつかあります。その中でも重要な2つのポイント「デューデリジェンス」「税務リスク」について説明します。

 

デューデリジェンス

第三者への事業承継を行う場合、親子間承継とは異なり、必ず行わなければならないことがあります。それは、譲受側によるデューデリジェンスです。「デューデリジェンス」(Due diligence)の「Due」は「義務」、「Diligence」は「努力」という意味を持ちます。つまり、企業などに要求される「当然実施すべき注意・義務および努力」であり、M&Aにおいては、取引対象の資産価値・収益力・リスクなどを経営・財務・法務・環境などの観点から詳細に調査・分析することを指します。

 

親子間承継の場合、身内で財政状況等を把握しているケースが多く、譲受側によるデューデリジェンスを行うことは稀です。しかし、第三者への事業承継の場合は、承継対象である医療法人の実態を把握していないことがほとんどで、デューデリジェンスを実施することはとても重要です。デューデリジェンスを実施すると、譲受側は、事業承継の可否や承継対価を検討することができます。その上で譲渡側と交渉し、譲渡の条件について合意した段階で、契約書を締結します。

 

税務リスク

もう一つ親子間承継とは異なるポイントとして、税務リスクについてお伝えします。通常、医療法人社団(持分あり)の第三者承継は出資持分の譲渡を通じて行われますが、譲渡する側は役員が退職するので、譲渡対価の一環として役員退職金の支給が行われる場合もあります。この際、退職金にかかる課税は、親子間の医療法人承継と同率です。

また、原則として役員退職金を支給した場合は、支給した医療法人の側で損金算入が認められますが、退職金の支給金額が他と比較して不相当に高額であると認められる場合には、この「不相当に高額であるとされた部分」の金額は損金に算入されません。その意味で、事業承継後の税務リスクを抱えるのは、第三者である譲受側であると言えるでしょう。

 

 

親子間承継よりも留意点が多い「第三者承継」

親子間の事業承継であれば、問題が生じても都度協議して解決できるケースが多いかもしれません。しかし、第三者への事業承継の場合、譲渡する側とされる側はいわばお互い「他人」でありそのたびに協議ができる保証はなく、コミュニケーションの不一致によって争いごとに発展する可能性もあります。

円満に第三者承継を行いたいのであれば、親子間承継とは異なる特徴や仕組み、注意事項を事前に把握しておくことが重要でしょう。

メディヴァでは、第三者承継の知見と経験を持つコンサルタントが医業承継のアドバイスやサポート、承継後の運営支援まで行います。第三者承継をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。