コラム

2021.03.05 コラム

今知っておきたい「Afterコロナ」を見据えたM&Aのポイント~買手はどこに注目するのか?~

現在コロナ禍において、M&Aをご検討されている売手側のクリニック関係者の方に是非知っていただきたい、「Afterコロナ」を見据えたM&Aのポイントを解説します。

新型コロナウイルス感染症が全世界で猛威を振るい続け、我が国においても感染終息の兆しが見えない状態が続いています。
医療現場では一部の施設において病床逼迫・人出不足が顕在化する一方で、別の施設では患者さんが戻ってこないという状況が発生するなど、
多くの医療関係者が厳しい状況におかれています。また医療機関の中でも、特に、小児科・内科・耳鼻咽喉科を中心としたクリニックにおいては、「外来患者数・収入の大幅減」という別の課題が聞こえており、経営難による事業縮小などを余儀なくされるケースも見られます。


このような状況下において、近い将来に不安を感じ、ご自身のクリニック経営を今後どのようにすべきかお悩みの方も非常に多いのが現状です。
その選択肢の1つとして、クリニックを売却されることを検討されている関係者の方も非常に多く見られます。


本日は、現在M&Aをご検討されている売手側のクリニック関係者の方に是非知っていただきたい、「Afterコロナ」を見据えたM&Aのポイントをお伝えします。

買手が注目するポイント
~黒字回復する見込みがもてるクリニック~


コロナ禍においても
売れるクリニックには、一体どのような特徴があるのでしょうか。
売却がうまくいく条件として、やはり大前提として、そのクリニックの経営状況が「黒字」であるかどうか、というのが重要な指標になってきます。とはいえ、全てのクリニックが黒字で順調な経営をされているわけもなく、経営難・赤字状態が続き、M&Aを検討され始める方が多いのも事実です。

ここで注目すべき点が、一言で「赤字」と言っても、「コロナの影響で赤字なのか、はたまたコロナ前からずっと赤字なのか」とでは、意味合いが大きく異なるということです。
さらに買手の視点から、Afterコロナにおいて「黒字回復する期待がもてないのか、もしくは黒字回復する期待がもてるのか」と、より細かく分類分けができると思います。

 

【分類分けのイメージ】

本日はまず始めに、前述した分類分けの中でも「コロナ後から赤字経営になり、売却を検討している」クリニックにフォーカスを置き、
図①の「
Afterコロナで回復の期待がもてないクリニック」と、②の「回復の期待がもてるクリニック」により細分化したいと思います。

①と②と比較した際はどちらが売却しやすいでしょうか。当然、黒字回復の期待が持てる②のほうであることは容易に想像がつくことかと思います。実際、やはりコロナの影響で今後は回復しなさそうと買手から判断されてしまうと、なかなか譲渡までいきつくことは難しいのが現状です。

それでは、回復の期待が持てるクリニックとはどういうクリニックでしょうか。
弊社は3つの特徴や共通点があると考えています。

 

1つ目:厳しい状況でもニーズに対して対応しているクリニック
2つ目:感染対策をしっかりしているクリニック
3つ目:コロナ禍のなかでも改善傾向が見えているクリニック

 

1つ目は、厳しい状況でもニーズに対して対応しているクリニックがあげられます。国民の感染症予防の意識が強まり、新しい生活様式が功を奏しているためか、多くの方が体調を崩しにくくなったり、軽傷であれば一旦は家で様子を見る、という方が多くなったかと思います。その結果、コロナ禍においては小児科・内科・耳鼻咽喉科系クリニックは特に外来患者数の減少が目立っておりますが、Afterコロナにおいても、コロナ前と同じような軽症患者需要は戻ってこないと考える必要があるかと思います。

そのため、今後を見据えていち早くオンライン診療に取り組む、または物理的・時間的なゾーニングを行いながら発熱外来を行うなど、ニーズに対して取り組んでいるクリニックについては、その対応力や組織力がひとつの魅力となり、買手からも好意的に見られる傾向にあります。感染症対策として注目されている「電話・オンライン診療」も、黒字回復の決定的な打開策にはならないかもしれません。時限的に診療報酬点数が上がっているものの、検査や処置ができず、トータルでは対面診療に比べ低くなること、また医療現場としてはまだまだオンライン診療のほうが手間がかかるのが現状です。しかし、患者さんにとっては、オンライン診療の利便性は間違いなくあるため、積極的に診療の幅を広げることが地域の患者さんにとっても好意的な印象に繋がり、結果として買手にとってもプラスの材料になると考えています。

2つ目は、感染症対策がしっかりされているクリニックになります。例えば、クリニック内でのアルコール消毒や換気などの目に見える形での感染症対策の徹底は勿論ですが、スタッフや医師がマスクを正しく装着できているか、患者同士が密にならないような院内スペースが確保できているか、などの細かい点まで患者側は厳しく評価するようになっています。患者1人1人の直接クリニックに行くことのハードルが上がってしまったため、感染症対策が不十分で、自分がクリニック内で感染するリスクがあると感じてしまった(もしくはそのような噂を聞いた)場合、再診やリピート患者の獲得は非常に難しいと考えられます。特にしっかりとした感染対策がとれていないクリニックですと、風評被害的な噂に繋がることもあるため、逆説的ではありますが、非常に大事なポイントになります。

3つ目はコロナ禍のなかでも改善傾向が見えているクリニックになります。
1つ目、2つ目の取り組みの効果とも言えるかもしれませんが、既に1年近く続いているコロナ禍において、すこしでも改善傾向が見えているクリニックについては、買手からすると好意的な評価につながります。最初の緊急事態宣言が発動された、2020年4月、5月頃は、世の中の活動自体が大きく止まったため、大幅な収益減となったクリニックが多かったと思います。その後、何度か流行の波がありましたが、少しずつでも改善したという実績がなによりも買手にとってのアピールポイントとなります。

以上3点が、私たちが実際に医療関係者の方とお話しさせていただく中で、「Afterコロナにおいて黒字回復する期待がもてるクリニック」の共通点と言えると感じています。

現時点で厳しい経営状況であっても、コロナ前からずっと黒字経営を続けてきて、コロナが終息すれば、またいずれ元に戻るだろうという「信頼残高」があるクリニックに関しては、買手側の期待値も下がりづらいと考えています。

実際に、先日私たちがご支援させていただいた耳鼻科系クリニックにおかれましても、昨今のコロナの影響を大きく受け、赤字経営が続いていました。しかし、コロナ前はずっと黒字経営を続けてきたという実績があったのと、医業承継後も元々在籍している院長ふくめスタッフの方が残ることにより、患者をしっかり引き継ぐことが期待できたこと、また徐々にではありましたが、経営的にも改善傾向がみられたことより、買手側としては「回復する見込みは大いにある」と判断し、譲渡・承継がうまくいきました。

以上のように、現時点でたとえ財政的に厳しい状況が続いていたとしても、コロナ前はずっと経営良好であったという実績があることや、医業承継後もスタッフ・医師・患者の引き継ぎがスムーズに行われるであろうという見込みがあれば、M&Aがうまくいくチャンスは大いにあります。

 

最後に

先行き不透明で、たとえ現時点で財政的に厳しい状況が続いていても、M&Aが成立する場合も大いにあります。コロナ前とはM&Aを検討する際の状況が大きく異なりますので、上記のような特徴・ポイントを押さえつつ、情報収集・計画をすることが非常に重要です。

本前編では、コロナの影響で経営難・赤字状態に陥っているクリニックのケースを取り上げ、その特徴や共通点などを概観しました。
続く後編では、「コロナをきっかけに赤字になった」のではなく、

  • 元々コロナ前から赤字のクリニックが、Afterコロナで引き続き赤字経営であっても、M&Aを見据える場合に押さえておくべきポイント
    そして、
  • そのような赤字状態が続く中でも売却できるケースには、一体どのような特徴があるのか

をご紹介したいと思います。