赤字病院の経費節減の方法「適切な経費コントロールという自助努力」

2019.06.05 [病院/診療所]

赤字病院の経費節減の方法「適切な経費コントロールという自助努力」

コンサルタント 小嶋 武仁

「病院現場業務」とは 

広義で申し上げると、病院の経営再建の為 我々がコンサルタントの立場で 現場に入り込み、様々な課題解決を通して 経営立て直しのお手伝いをする事です。経営悪化と一口に言っても、原因は様々です。診療報酬の改定への対応遅れ、人員過不足、施設の老朽化、市場を活かしきれていない等。今回は見落とされがちで、マイナス方向のイメージがある経費のコントロールについて述べたいと思います。

「経費コントロール」 

再生の現場において、最も重要な施策は「その組織の収益向上の為の施策」なのですが、反面 組織の自助努力ともいうべき施策があります。それが、経費コントロールです。これは経費削減、経費節減、はたまたリストラといった言葉で表現され、後ろ向き感が満載の言葉なのですが、その効用は中々捨てたものではありません。経費コントロールというと、一言で申し上げるなら「これまでの常識を一新する」という事になります。あくまでも、変えるのは意識です。

無理・無駄・ムラを無くすこと = 効率化 = 経費コントロール と巷では言われていますが、私見ながら、私は多少の無駄(余裕)がないと業務は効率化できないと考えています。経費コントロールの基本は 「無茶をしない」に尽きると思っています。無茶を定義すると 法令違反、組織の信用低下(モラルダウンや品質低下)、職員のモチベーションを激しく下げるもの、あとは大義名分のないものとなりますが、これらは論外です。

「コントロールの前提とその理由」

経費コントロールの前提は、職員を含めた「納得性」です。何故、実行しなければいけないのか?これを丁寧に説明する事が重要です。これを怠ると、組織内部から「うち、大丈夫か?」といった不安や不満が醸造されます。所謂、モラル低下です。

「経費コントロールを何故 やるのですか?」

この質問は、時折 職員の方から出るのですが、この回答がなかなかに難しいと思っています。利益の極大化は、分かってはいるが、腹落ちしない。
利益=売上―(原価+経費) と言っても何方の反応もイマイチです。

これは、医療機関に限った話ではありません。納得するのは、上層部だけで一般職員にまでは波及しません。利益=売上―(原価+経費)よって利益極大化は全てに優先するのでしょうか?

逆の立場なら、論に欠落があるものの その理論を私は論破できません。ですので、私の場合は “うちの組織の存在(理由)を継続させる為”などといっています。その組織が無くなれば、職員・関連業者・患者様・関係医療機関全てが困ります。
困る人がいる = 存在価値がある 。。だから、健全に継続させよう!
などと、説明して回っています。とはいえ、経費にも「削っていい経費」と「削ってはいけない経費」があるのも事実です。

「削ってはいけない経費」の具体例は、業務改善もなされず、適正人員も考慮されず、公正な評価もなされない中で、場当たり的に行われる“人件費のカット”です。これには全く納得性がありません。(既述した“無茶”に当たります。) 何でも削ればOKというわけではありません。ですから、過度ではなく 適切な経費コントロールというわけです。つまり、敢えて高い経費を投入するという事もあるわけです。

「経費コントロールの進め方」 経費コントロールは、思いつきや掛け声だけではまず効果が出ません。例示しますと通信費といった大きな括りではなく、固定電話の費用 携帯代 回線の本数といった微に入り細に入るといった、現場に入り込んだ現状把握があってこそ、成功率の高い立案とその実行が可能になります。

<経費コントロールを進める上でのポイント>

1)職員にコスト削減の必要性を訴え、職員のコスト意識を高める
広く意見を集める為に、委員会形式にするのもいいかもしれません。

2)ターゲットコストの見極め(特に削らないコストの選定)    
削っていい経費にも、上中下の種類が存在すると考えています。
上 ・・・ 職員に負担を掛けずに行うもの
      (保守契約の改定など業者契約により経費を落とすもの)
中 ・・・ 職員の手助けが必要なもの
      (通信手段の改変など一定の割合で職員に協力を願うもの)
下 ・・・ 職員を不安に陥れるもの
      (電気を消す、裏紙使う、手当を減らす等々)

3)成果を明示する事
 何の項目でどの程度効果があった。今後は、こういった制度にして、平準化を図る。といった事を明示することです。

キャンペーンで終わらせず、経費コントロールを「長続きさせる」コツを述べます。

  1. 経営陣が本気を見せる事 「何故行うのかを明示」
  2. 幹部職員はじめ一般職員まで、それぞれの立場で参加させること
  3. 効果の確認を必ず行う事
  4. 効果の“見返り“を明示すること(この難易度が高い)
  5. 継続させる為の仕組みを作る事

<具体例>

関東南部のケアミックスの中型病院の例を挙げます。その病院は、慢性的な経営赤字であり 特に直近3年間は、診療報酬改定への対応が遅れるとともに、改定の打撃を受け続け、減収減益、連続(経常)赤字を出しており、早急な改善が必要でした。収益アップ施策も提案しましたが、病床稼働率は95%を越えており 大幅な増収は望めない状況でした。そこで経費コントロールに着目しました。

まず経営者に現況を説明し、今期の黒字化の合意を取り、様々な経費コントロール施策に取り組みました。役員報酬カット、通勤費最適支給を皮切りに、総勘定元帳をチェックし 諸会費、新聞図書等を削減。更に、職員に協力を要請し 日常使用している医療材料の見直しを行いうと共に、業務改善を推進し消耗品、時間外手当の削減を行いました。

反発もありつつ、年間合計1億3000万円の経費削減(内訳: 役員報酬 20M¥、人件費 81M¥、原価 20M¥、経費 1.9M¥)に成功しました。翌期回しの効果もありましたが、何とか通期黒字化を達成し メインバンクを含めて組織内外で存続・発展の為の前向きな話ができはじめています。

<最後に>

経費コントロールは、類例が数多く存在します。しかし、その組織、組織に合った無理の無いものでなければ、効果が出ません。また、一部の部署・人の手で成り立つものではありません。経営陣・全部署一体となってアイデアを出し合い、その意味を理解して実行してこそ、継続された本当の意味での効果が出てくるのではないでしょうか。
決して大上段に構えた大仰なものではなく、そのネタは常に現場にあります。