限られたデータを活かす —地域医療連携室の活動を例に—

2018.09.19 [病院/診療所]

コンサルティング事業部
コンサルタント 浅野 悠

はじめに

今回は、連携室が日頃から収集されているデータの活用方法を、弊社の支援先である病院の事例とともにご紹介します。

 

稼働率低下が課題の中小病院の例

その病院は、ここ数年にわたる稼働率の低下により、売上が年々減少している中小病院です。メディヴァが経営を支援させていただくことになり、弊社メンバーは、院内で開かれる会議への参加(大小含む)や、稼働率上昇施策の立案・実施、病棟転換準備などに取り組んでいます。

中でも喫緊の課題は、売上を回復させるための稼働率上昇でした。当然のことですが、稼働率を上げるためには、入院患者さんを増やすことが1つの方法としてあげられます。入院の経路は主に3つあり、外来、他院からの紹介、そして救急による入院が考えられます。

今回のケースでは、経年比較やベンチマーク比較から、紹介による入院患者さんの減少が明らかとなり、中でも病院からの紹介患者が顕著に減っていることがわかりました。そこで病院からの紹介患者を増やすべく、連携室だけでなく医局、事務管理部門も参加する委員会を組織し、営業活動に力を入れることになり、そのサポートをすることになりました。

 

集めたデータの活かし方

営業活動といっても、ただ闇雲に病院を訪問し紹介依頼をするだけでは効率的ではありません。そこで連携室で管理されていたデータから、どこをどのように営業をするのかを検討することにしました。

手元には、これまで紹介実績のある連携先病院からの複数年にわたる相談件数や紹介件数、紹介患者の背景の情報があったので、まずはそれらから見直すことにしました。視点としては、どこの病院からの実績が多く、それらがどのように変化し、現在の減少につながっているのか(いないのか)、相談を受けたうち、紹介までいたった比率はどれほどで、どのように推移しているのかなどという点から総ざらい点検しました。

すると、今回の事例では、支援先に以下のような傾向があることがわかりました。

・上位5施設(A・B・C病院)で全体の紹介件数の75%を占める
・A病院は紹介件数、相談件数ともに増えている一方、数年前までは特に紹介件数が多かったB・C病院からは年々減少しており、A病院の増加分を打ち消しているだけでなく、全体の紹介数の減少の大部分を占めている
・B病院からの紹介数の減少は2015年秋から、C病院からの減少は2016年春から
・B病院の患者は整形外科の手術後の患者が多く、C病院の患者は脳神経外科の患者が多い

上記の傾向に加えて、院内でのヒアリングを通じ、数字の背景を把握しました。

・B病院では、競合病院が回復期リハビリテーション病棟を設置したため、当院への紹介対象となる入院患者が大幅に減少していた。
・C病院から紹介数の多かった脳神経外科では、2016年春から当院の医師が大幅に入れ替わり、患者の受け入れ方針が変わっていた。

こうして、当院の紹介件数の大きな位置づけを占めていた連携先病院のうち、B病院とC病院は、競合の出現、医師の退職等によって、当院への紹介が減っていたことが推察されました。

一方、これまで紹介実績の少なかった近隣の病院のうち、比較的規模の大きい病院の近年の動きを調べると、2件(D病院・E病院)で当院への潜在的な紹介患者が見込めることがわかりました。

これらをもとに下記のような施策を実施することにしました。

1、 当院の受け入れ体制の見直し・改善(C病院対策)
2、 新たな病院との関係構築(D・E病院)
3、 連携先病院へのヒアリング・アンケート調査によるニーズや当院の競合優位性の   把握、およびそれを基にした改善の実施

具体的には、院内受入体制整備においては、浮き彫りになった問題点を見直すべく、関係者へのインタビューや紹介患者さんの受入についてルール見直しを実施しました。また、ヒアリングやアンケートを実施することで他病院からの自院の強みや弱みの確認、他の紹介先病院の情報入手などを定期的に実施し、ヒアリングシートにまとめ、当院で改善できることはすぐに実践に移しました。現在は、競合病院より多くの情報を集めたことにより、次のステップへ進むべく新たに営業活動を開始しております。結果、徐々にではありますが、紹介数も増加の兆しが見え始めています。

 

おわりに

 今回、あらためて連携室のデータを見直すことにより、基本的な紹介依頼の営業活動に追加して他の施策を検討・実施することができました。たとえ手元にあるのがシンプルなデータであっても、データを目的に沿って見直し、ヒアリング等をもとに情報を付け加えるだけで、これから取るべき方向を検討できることがあります。加えて医局、事務管理部門も参加する委員会を組織したことにより医師に任せきりになっていた入院受け入れ患者のルール見直し等も全体感をもって取り組むことが可能となりました。今回はもともと他院への営業活動をあまりしていなかった極端な例でしたが、データの一面的な活用や周囲の医療環境の変化への無関心などから、うまく機能していないことはほかのケースでもあるかと思います。限られたリソースであっても目的に沿って改めて見直し、全体感を持って活用することで次のアクションや成果につなげていけた例であるといえるでしょう。

 


執筆者:浅野 悠 Yu ASANO
株式会社メディヴァ コンサルティング事業部コンサルタント。奈良県出身。立命館アジア太平洋大学卒業。在学時は、休学して衆議院議員事務所にて長期間のインターンシップを経験。大学を卒業後、外資系製薬会社にてMRとして主に大学病院や地域の基幹病院を担当。医療現場にダイレクトに関わりたいとの思いからメディヴァに参画。現在は、クリニックの運営・開業案件を中心に、現場に入り病院の経営改善支援も行っている。