透析施設における医薬品費削減による財務改善の取り組み

2017.12.07 [病院/診療所]

コンサルティング事業部 コンサルタント 星野宏仁

今回は、透析施設を有するA病院で実施した医薬品費削減による財務改善に関する取り組みについて記載します。

A病院は数期連続赤字の状態でした。経営改善に取り組むにあたり、売上向上とコスト削減の取り組みが必要でした。売上改善策は、病棟の再編成等が必要であり、中長期的な取り組みとなります。一方、コスト削減策は、削減金額が経常利益に直結し、短期間で効果が得られる取り組みであり、優先して着手しました。

通常であれば、医業費用の削減を進めるにあたり、損益計算書の医業費用項目について、1.医業収益に対する割合と2.稼働病床(1病床当たり)の金額の2つの視点でベンチマーク比較を行います。

ベンチマーク比較によって課題が見えてくるので、その詳細確認として現場ヒアリングも行いながら課題を特定していきます。
そして、本ブログのテーマである医薬品費の削減を検討する際には、
・納入価格のベンチマーク比較による見直し
・包括における新薬の使用量分析による後発品の検討
・薬価差益(薬価-納入価格)
などを検討します。
しかし、A病院のケースでは、透析施設で使用する特定の医薬品を見直すだけで短期的にコスト削減が実現できることを過去の知見から推測できました。その特定の医薬品とは、腎性貧血治療に用いる注射剤です。この医薬品は、貧血にならないよう赤血球をつくるはたらきを促進するエリスロポエチンというホルモンを補充する注射剤で、透析患者のHb値を一定に保つ効果があります。

なぜ、この医薬品を見直すだけでコスト削減に繋がるかというと、この医薬品は、診療報酬(人工腎臓)に包括されており、出来高算定が出来ない為です。だからこそ、新薬から後発品へ切り替えた差額分が、そのまま経常利益に直結します。
A病院においても同様の状況であった為、新薬から後発品に切替える事で、経常利益の向上を目指しました。

後発品への切替をスムーズに実行していく為には、経営的視点だけでなく治療的視点も必要だと個人的には考えています。医薬品を取り扱っている医師、透析技師、看護師、薬剤師の方々と患者の状態を考慮しながら、医薬品の用量設定等に関する話し合いに参加できるようにする為です。 私は、治療ガイドライン、薬剤特徴、治療成績などについては、常に把握できているよう心掛けています。

今回のケースで最も議論になったポイントは、新薬から後発品への切替換算比率の設定でした。新薬と後発品では、効果の持続時間が異なります。その為、異なる作用時間の医薬品を同じ効果に調整する為に、投与頻度や用量を設定する必要がありました。
候補となる換算比率は、
・200:1(後発品:新薬)
・300:1(後発品:新薬)
の2種類を検討しました。
換算比率が高い方が、高い貧血改善が得られますが、一方で換算比率が低い方が、得られる医業利益は大きくなります。
今回は、患者ごとの貧血度合いを示すHb値を確認し、透析に関わる医師、透析技師、看護師の医療関係者の見解を調整し、300:1の比率で切替を実行しました。

今回の切替により算出したコスト削減金額は、年間で約450万~500万円でした。また、切替1ヵ月後のHb値も安定していました。
経営的視点と治療的視点の両視点を持ちながら取り組むことが、病院経営における経営改善には大切であることを再認識する取り組みになりました。
なぜならば、治療的視点も導入することで、1.医療者の理解が得られ、協力を得やすくなる、2.医療の質を維持することが出来るからです。
結果、後発品への以降がスムーズにでき、医療の質を落とさずにコスト削減が、約2ヶ月間という期間で達成出来ました。