連携先ヒアリングからみえる紹介患者受け入れにおける認識のギャップについて

2017.09.14 [病院/診療所]

コンサルティング事業部
コンサルタント 安 松 佳 祐

 

「病病連携」、「病診連携」、「医介連携」など、今日ではこれら連携にまつわるワードは、医療関係者の日常の中にすっかり浸透しています。「地域包括ケアシステム」をはじめとして、政策の観点からも連携体制強化が要請されており、各々の医療機関において、円滑な連携関係の構築のため、営業活動や地域連携会議への参加等、日々大変な努力がなされています。

しかしながら、連携を行う関係性の中で、そもそも自分たちの認識している「自己の医療機関の強みや課題」と、連携先から映っている「その医療機関の強みや課題」が本当に一致しているか、改めて振り返ってみることも大切なのではないかなと思います。

私が携わらせていただいた病院の案件で、このことを顕著に感じた事例をご紹介します。その病院では、連携先からの紹介による患者受け入れプロセスにおいて、「当該病院関係者へのヒアリングによる課題の認識」と「連携先へのヒアリングから伺えた当該病院の課題の認識」に大きなギャップが存在していました。その認識のギャップは以下のようなものです。

 

当該病院の病院長や連携室長の認識

① 連携室のスタッフが足りず、周辺連携機関へ営業活動に回ることができていない
② 連携先の医師との関係性は良好で、連携に対する医師間の意識は高い
③ 受け入れの問い合わせがあった場合には、比較的スムーズに受け入れが出来ている

 

連携先の地域連携担当者の認識

➀他の病院と比べて問い合わせ後の受け入れ判断に時間を要する。また受け入れ要請を断られる理由が不明瞭
②受け入れてもらえる患者の範囲が狭い
③何を強みにしているのかが十分に伝わってこない

 

院内の認識は、「連携室の人手が足りないために、十分な営業活動ができておらず、その結果、紹介件数が伸びてこない。受け入れに対する意識は高く、受け入れフローに関しても大きな問題はない」というものでした。一方で、連携先からの話では「あの病院さんは、受け入れ相談をしてもレスポンスに時間がかかるし、そもそもどんな患者さんを紹介したら良いのか分からない。」と、院内の認識とは異なっていました。

これを読んで下さっている方は、「こんなに認識に相違があるケースは珍しいのでは?」と思うかもしれません。しかしギャップの度合いに差はあるものの、ギャップの存在は稀なケースではありません。たとえ、連携先と良好な関係性を築けていたとしても、意識してコミュニケーションを図り、相互理解し合っていないと、認識のギャップは発生してきてしまうものです。このようなギャップの蓄積は、将来的に、連携体制に大きな影響を及ぼし、病院の病床稼働率にも反映されてしまいます。

例えば、本ケースにて院内の関係者が認識している通り、「連携室の人員を増やし、営業にまわってもらおう」という解決策を施したとしましょう。熱心な営業の効果により、一時的には紹介患者数が増えるかもしれませんが、この解決策では根本原因の解決には至っていませんので、時間の経過とともに再び同じ状態に戻る可能性が考えられます。

ひょっとすると「営業に来てくれたから患者さんを紹介したのに、まさか断られるなんて・・・」と連携先からの信頼を失い、今以上に連携を悪化させてしまうかもしれません。そのようにならないためにも、しっかりとした課題認識とそのアプローチが重要となります。

それでは、院内の認識と連携先の認識とを乖離させないためには、どのようなアクションが有効なのでしょうか?ここで、いくつか他の医療機関の例を交えて紹介します。

まず前提として、自院の連携状況の変化を正確に把握しておくことが大切です。そのためには、連携先からの問合せ件数や受け入れ件数、お断り件数、お断り理由などの情報を記録し、モニタリングしていくのが良いでしょう。そして、それを定期的に会議で共有し、対策の検討を行っていきます。

次に、連携先の認識を探る必要があります。とはいっても、電話越しの連携先に、いきなり「当院の印象はどうですか?」と聞いたところで有益な情報は得られません。連携先の本音を引き出すためには、「地道な継続」と「ちょっとした工夫」が効果的です。例えば「定期的に挨拶回りを行い、連携室担当者から、【連携先が困っていること】や【患者さんから上がってる声】などの聞き取りを行う」というのも、一つの手段でしょう。顔の見える関係性を維持するとともに悩みを確認し、その解決に尽力する姿勢をみせることで信頼を得ていきます。

また、「転院の紹介をされた際に、当院のことを患者さんはどう言っているか」等、患者さんから発信された声を聞くことにより、当院にとってネガティブなことも連携先担当者の口から言いやすくなります。

別の例としては、「相談が来た時点で、既に依頼している医療機関はどこか」や「受け入れ相談はあったが、お断りになった場合、その患者さんはどの医療機関にどのような理由で決まったか」を確認しておくことも工夫の一つです。これは、競合の状況を知り、そこから自院の現在のポジションを推測することが狙いとなります。また、前者からは、連携先や患者さんにとっての優先順位も垣間見ることができるでしょう。

ここでご紹介した例以外にも、各々の医療機関オリジナルの「地道な継続」と「ちょっとした工夫」を実行することで、連携先との距離もギュッと縮まると思います。

最後に、連携における課題解決を実施するにあたっては、内部及び外部の情報を適切に把握しておくことが重要です。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」ではないですが、連携面での課題の認識を適切に把握した上で改善することが、課題解決のコツなのではないかと思います。そして、それにより自院、連携先、患者さん、地域医療の全体がWINになれば良いですし、私自身もその一部分でお役に立てるよう今後とも知見を深めていきたいと思います。

 

関連ページ:

 株式会社メディヴァの病院コンサルティング・再生支援


執筆者:安松 佳祐│Keisuke YASUMATSU
香川県出身。岡山大学法学部卒業、九州大学大学院修了。質の高い医療の持続的な提供に貢献できる人間になりたいという思いをもつなか、「患者視点での変革」をクライアントと「一緒に」実現することを目指すメディヴァの理念に共感し、2016年4月より参画。