第15回「メンタルヘルス リワーク支援」

2011.04.21

                     コンサルタント 園田紫乃

 

厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、1996(平成8)年には43.3万人だったうつ病総患者(調査日には通院しなかったが前後に通院している者を含む)は1999(平成11)年は44.1万人とほぼ横ばいでしたが、その後、増加を続け、2008(平成20)年には104.1万人と9年間で2.4倍に増加しています(これらの数字は「気分障害」(うつ病、躁うつ病、気分変調症等)の総患者数であり、医療機関に看てもらわない患者は含まれません)。

 

総患者数が増加した1999年から2008年にかけての男女・年齢別の増加数を見てみると、男女とも30歳代の増加が最も多くなっています。2007年のNHKの番組調査では、「若い働き盛りの世代に”うつ”が増えている。上場企業200社のうち6割が、この3年間で「心の病」が増加したと回答。年齢別に見ると、心の病は「30代」に集中している。長期休業につながるケースも多く、企業の現場はその対応に追われている。」ことが明らかにされています。メンタル不調者の割合は今後ますます増加すると予想されており、健康管理の問題にとどまらず、企業にとっては組織的かつ計画的な取り組みが必要な大きなテーマとなっています。近年多くの企業で、うつ病などの心の病で休職した社員に対するリワーク支援の活用が検討されています。

 

リワーク支援には、「心の病による休職者、その方の復職を考えている事業主に対して、主治医等と連携し、円滑な職場復帰に向けたコーディネート支援を提供すること」と、「休職者へ適切な復職トレーニングプログラムを提供すること」の二つの機能が含まれます。両方の機能を含むプログラムを『リワーク支援』と指している場合もあれば、復職トレーニングプログラムの提供だけを指している場合もあるようです。

 

リワーク支援の提供者には、公的機関である障害者職業センター(雇用保険対応)や精神科ないし心療内科の医療機関が挙げられます。ただし、障害者職業センターでは、雇用保険に入っていない教職員や公務員はリワーク支援を受けることができません。また、都道府県に一つしかないという問題や、職業センターの職員は主治医ではないため、医療機関がリワーク支援を行う場合より連携のための調整に時間がかかるという難点があります。他方で、医療機関で提供されているプログラムでは、診療報酬は精神科デイケアという復職トレーニングにしかつかないため、コーディネート支援機能が含まれていないケースも多く、産業医との連携が難しいという企業からの声もあがっています。現状のリワーク支援の課題は、プレーヤーとして、休職者、事業主(産業医)、主治医、復職トレーニング提供機関の4者が関係しているため、円滑に連携することが難しく、企業や休職者が満足する結果が得られないことも多いようです。

 

昨年、メディヴァのコンサル部門でも企業(79社)と医療機関(16件)を対象としてリワーク支援についてのニーズ調査を行いました。リワーク支援に対する企業のニーズは「社員には適切な状態とタイミングで職場復帰をしてもらいたいので、主治医とリワーク支援提供機関が同じであるほうが良い。外来・復職支援一体型の復職支援デイケアへのニーズが高い。さらに、初期のカウンセリングから行ってもらえるとベストである。再発予防の効果を重視しており、復職支援デイケアはそのひとつの方法と考えられている」、医療機関のニーズは「外来が競合するため、医療機関が行う復職支援デイケアに患者を紹介することへのインセンティブは限定的である。患者の希望があれば、復職支援を行う公的機関に紹介するが、復職支援のためのやり取りにひと手間掛かるため、紹介するインセンティブはあまり高くない」との結果が得られています。休職者のニーズは一般に「復職するために、一定期間内に企業の求めるレベルまで回復する必要がある。自己負担はできるだけかからないほうが良い。企業との良好な関係を維持したい」等が考えられます。

 

上記のとおり、まだまだリワークのあり方については議論があると思いますが、社会的ニーズがあることは確かで、メディヴァでも医師やクリニックと提携しながらリワークセンターの設立に向けて取り組んでいます。直近では、湖聖会銀座医院に開設します。準備が整ったら、オープニングセミナーを行いますので、ご興味のある方はメールを頂ければ、ご案内状をお送りいたします。

 

リワークの円滑な仕組みが整備されると同時に、そもそも”心の病”を患う人を増やさないために、きめ細やかな予防の仕組みを整えることを、企業も、個人も、考える必要があります。そのキーポイントとなるのは個人を孤立させない”コミュニケーション”にあるのではないかと思います。メディヴァ社内でも、メンター制度や研修会や懇親会、社員旅行等が仕組みとして準備されているだけではなく、社員一人ひとりが普段から相談のしやすい雰囲気作りを工夫するなど様々な取組みを実践しており、その結果なのでしょうか、「働きやすい」と感じている社員が多いようです。職場で一工夫されてみてはいかがでしょうか。