第13回「医師採用: どうしたら応募が増えるのか? 好ましい医師紹介会社との関係とは?」

2010.11.08 [病院/診療所]

コンサルタント 橋戸 政哉

 

 現在、数多くの医療機関において医師不足が叫ばれています。一体、どのようにしたらよい医師を確保できるのでしょうか。あるいは、医師採用が上手な医療機関は、どのような取り組みをしているのでしょうか。

 

 医師不足に悩む医療機関の多くに、ほぼ共通した興味深い性質があります。それは、その多くが医師採用を「最も重要な経営上の問題の一つ」と認識しておきながら、実際には医局へのお願いなど、旧来のやり方や、特定のルートに依存し過ぎていることがあるのです。中には、院長や事務長が「医師が欲しい!」と強く思っているのにも関わらず、外部の第三者からは「この医療機関は特に医師は募集していないのだな…」と誤解されていたケースもありました。
では、なぜこのような事態が生まれるのでしょうか。「いい医師を採用したいのだけれど、特に何をしていいか分からないし、時間もない。でも医師がいないから忙しい。だから医師が欲しい…」彼らの多くはこのような負のループに陥っていたのです。

 

 上記のような医師採用に費やす人的・時間的リソースが足りない医療機関を支援する目的で、当社では、多くの医療機関の医師採用の支援を行ってきました。それらから多くの教訓を学び、現在では、多くの診療科目、そして、日本全国の都市・僻地に対応した多種多様な医師採用の蓄積があります。
今回は、そのノウハウの中の一つ、「医師紹介会社(以下、紹介会社)との関係」について紹介します。

 

さて、皆さんは、紹介会社に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
Ÿ・募集要項を送ったのに、いい先生を全然紹介してこない
Ÿ・気が付くと連絡が来なくなるちゃんと医師を探しているのか
Ÿ・まぁ、成功報酬なのだから、いい先生を紹介してくるまで放っておこう
このような考えをお持ちではありませんか? このような認識をお持ちの方は、これらを今すぐにでも一新すべきです。紹介会社との関係が良好な医療機関へは、実際にいい医師が紹介会社から紹介されてくるのです。以降で、紹介会社との「正しい」付き合い方を見ていきましょう。

(1)募集要項
 紹介会社は募集要項を通してあなたの医療機関を知ろうとします。従って必然的に募集要項の位置付けは高くなります。では、あなたの医療機関の募集要項はよい出来栄えと言えるでしょうか? 試しに、紹介会社の担当者に率直に伺ってみましょう。「特徴がないので、医師へ紹介しづらい」との返答が返ってくることもあるでしょう。しかしこの場合、特徴が「本当にない」のではなく、「特徴はあるのに伝わっていない」だけの場合も少なくないのです。紹介会社と言えども、魅力的でない募集案件に医師を応募させるのはとても困難なことなのです。このような事態を避けるため、実際に私が用いる方法の一つは「今度、○○病院の医師募集を始めるのだけれど、どのように売り出したらよいか、分かりかねている。相談に乗ってもらえないか」というものです。こちらが真摯に対応することで、紹介会社は良きパートナーとなってくれます。「紹介会社なんだから、言われた通りに医師を探してくればそれでよい」という見下すような考えでは、「募集要項を送ったのに、いい先生を全然紹介してこない」という状態になるのです。

 

(2)コミュニケーション
 よい募集要項が出来たところで、次に理解しなければならないのが「紹介会社とのコミュニケーション」です。紹介会社を介した医師募集の最も重要な鍵はここでしょう。まず、紹介会社から見た、嫌われる医療機関の対応例を挙げてみましょう。
・医師の匿名履歴書を送ったのだが、返事が来ない。
・対応が遅く、書類審査の結果や面談日の調整が遅々として進まない。
・募集要項をもらってからかなり月日が経っているが、まだ募集しているのか不明。
・本当に医師を取ろうという意欲が感じられない。
・どのような医師が欲しいのか、明確でない。

 

 紹介会社から医師の匿名履歴書が届いたとしても、多忙な日常業務の中で、ついつい返答を怠ってしまう場合もあります。これを紹介会社からみるとどうなるでしょう。
「あそこの病院は医師が充足しているのかな? それとも忙しくて対応できないのかな? せっかく紹介したのに。対応の遅い病院だと先生に積極的に薦めるのは難しいな。下手に薦めて先生から「何でこんなところ私に勧めたんだ?」と怒られたらこっちの立場が悪くなる。別の病院を当たった方が安全かもしれない」一度このように思われてしまうと、以降、紹介数が少なくなるかもしれません。審査結果については、いずれの結果であっても可能な限り、早期に返答をしましょう。

 紹介会社には、毎日、数多くの医療機関から膨大な募集要項が送られてきます。彼らは「届きたての新鮮な募集案件」に集中する性質があり、以前に送られてきた募集案件への関心は非常に低くなるのです。そこで、必要となるのは「電話営業」です。医療機関側から「まだ○○のポジションを募集しているが、マッチする先生はいないか?」「××は充足したので、募集を取り下げる」といった簡単な連絡を月に一度するだけでも構わないのです。すると彼らの中で、あなたの医療機関の募集案件が記憶に残り、医師が紹介される可能性が高まるのです。このようなきめ細かい対応が無い場合、「気が付くと連絡が来なくなる。ちゃんと医師を探しているのか」とイラついてしまうのです。
 
 当社では、私以外の担当者も含めて多くの紹介会社とほぼ毎日連絡を取り合い、多くの医療機関の医師募集を同時並列的にマネージメントしています。実際には、紹介会社との関係については、ここで述べた以外にも様々な取り組みを行っています。また、紹介会社を通さない(=紹介料が発生しない)、いわゆる「直接応募」が増える工夫も積極的に行っています。これらについては、別の機会に取り上げたいと思います。

 

 現在、数多くの医療機関において医師不足が叫ばれています。一体、どのようにしたらよい医師を確保できるのでしょうか。皆さんも、自分たちの医療機関における「医師採用」について見直してみませんか。