第6回 「経営分析の考え方」 柿木 哲也

2009.04.20

                                                                                  コンサルタント 柿木 哲也

普段の業務で経理・財務データを扱わない方も、”経営分析”という言葉はよく耳にされると思います。「今期は赤字に陥ってしまったので、経営分析して改善策を検討しなくては!」「患者数が減少している感があるので、経営分析して実情を把握しなくては!」など、仕事をしていると”経営分析”の話を聞くことがあるのではないでしょうか。
今回は”経営分析”についてお話ししたいと思います。
“経営分析”とは、医療機関が求められている「良質な医療を適切にかつ効率的に提供する」ことを実現するため、病院の置かれている状況を把握し、今後の病院経営に役立てる、経営管理手法の一つです。
経営分析では大きく3つの視点で考えていく必要があります。
① 自院内の比較
過去と比べて現在はどういう経営状況にあるのか、を把握する必要があります。たとえば前期と比べて収益が伸びたのか?減ったのか?過去5年で見た時、収益は増加傾向にあるのか?減少傾向にあるのか?など。
できるだけ長い期間のデータを収集することがポイントとなります。期間が短いと当該期間の値が特別である(異常に高い値、異常に低い値になっている)ケースがあります。
② 他院との比較
他の医療機関と比べてどういう経営状況にあるのか、を把握する必要があります。たとえば、近隣の他の医療機関と比べ、収益は高いのか?低いのか?開設主体が同じ医療機関と比べ、収益は高いのか?低いのか?など。
ここでのポイントはできるだけ類似した医療機関と比較することです。たとえば、病床数100の病院と病床数1000の病院を比較した場合、100床の病院は1000床の病院より、収益が低いのは明らかです。この収益差をもとに対策を検討しても、各病院に求められる役割が違うので、あまり意味をなしません。
③ ベンチマーク(ベストプラクティス)と比較
経営状況の良い医療機関(ベストプラクティス)と比べて、どういう経営状況にあるのか、を把握する必要があります。たとえば、自治体病院を分析対象とした場合、民間の黒字病院と比較してみる などが該当します。

話だけではイメージがつきにくいので、上記の3つ視点を踏まえ実際に経営分析を行ってみたいと思います。当社は関わっていませんが、最近、各方面で注目度の高い銚子市立総合病院のデータを使い、一般的な分析を行いたいと思います。
図表1「収益推移」、図表2「主な経営収支の状況」をご覧ください。

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■自院内の比較(図表1「収益推移」参照) 
平成15年度収益は約37億円。うち入院収益が約26億円、外来収益が約11億円。平成19年度になると収益は約21億円に減少。うち入院収益が約13億円、外来収益が約7億円に減少している。
⇒収益は年々、減少傾向にある。(収益が減少しているのは、ある年に生じた特別なものではなく、複数年にわたって減少している)

 

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■他院との比較(図表2「主な経営収支の状況」参照)
銚子市立総合病院の全職員の給与費(月額)平均は約60万円。同規模自治体病院においても約60万円。
職種別に比較すると、市立総合病院の医師は約115万円、同規模自治体病院では約125万円。さらに看護師、准看護師、事務職員の給与を見ると、市立総合病院の場合はそれぞれ、約51万円、約55万円、約58万円。同規模自治体病院では、約50万円、約65万円、約58万円。
⇒同規模自治体病院と比較した場合、全体および職種別給与において、大きな差異はない。

■ベンチマーク(ベストプラクティス)と比較(図表2「主な経営収支の状況」参照)
銚子市立総合病院の全職員の給与費(月額)平均は約60万円。同規模の民間黒字病院は約40万円。
職種別に比較すると、市立総合病院の医師は約115万円、民間黒字病院は約107万円。さらに看護師、准看護師、事務職員の給与を見ると、市立総合病院の場合はそれぞれ、約51万円、約55万円、約58万円。民間黒字病院の場合、約32万円、約33万円、約30万円となります。
⇒ベンチマークと比較した場合、市立総合病院の給与費は、民間病院よりも約20万円高い。改善の余地がありそうです。ただし、職種別で比較した場合、医師給与はほとんど差異がないが、看護部門、事務職の給与が20万から30万程度差があります。この職種別の差異を考慮して改善する必要がありそうです。

経営分析をしてみると、ぼやけていた医療機関の状況が見えてきます。一度、経営分析にトライしてみてはいかがでしょうか。