メディヴァコンサルブログ

第19回 経営の先行指標という考え方

2009.02.12

 経営の先行指標という考え方
             ―危険を未然に察知するために―               

 経営が悪化したという相談をうける医療機関にお会いすると、なんでもう少し早めに相談をしてもらえなかったのだろうと思うことに多々出会います。病気と一緒だと思うのですが、経営の悪化し始めのころであれば、それほど大きく労力をかけずに立ち直れたものでも、一定以上悪化の状態が進むとかなり厳しくなってしまうからです。

  また別な視点として、開業したてや大型投資をしたばかりの医療機関と話をしていると、今後の見通しに対しての話になることが多いです。いずれ患者さんが来ることは、頭で理解をしていても、足元はまだまだ患者数も少ない状況だと、言いようのない不安にかられるのだと思います。

  これらのお話を伺う時、私が最も意識するのは、”経営の先行指標”という考え方です。先行指標とは、経営の今後を見通す上で、その変化が先だって現れる指標のことを指します。たとえば、わかりやすいところでは、外来の予約患者の入り状況は、外来患者数の先行指標となりえます。つまり、予約が多く入っていれば患者数も増え、予約が少ないときは患者数も少ないという見通しが立つということです。非常に簡単で、なーんだと思われる方も多いと思うのですが、私はこの”先行指標”は経営では非常に重要な視点になると考えております。なぜなら、先行指標はあくまで”先行”であるため、先行指標の動きをみて予測をたてることで、必要な手立てをいち早く実施することが可能になります。

 例で申し上げますと、一般的な内科クリニックにおいては、初診患者数と初診患者比率が一つの先行指標となります。一般的なクリニックの場合、患者数の増減が落ち着くと、初診患者比率は10%前後に落ち着くことが多いです。この数値を頭に入れておくと、たとえば開業時に1日の初診患者数が5-6人で推移している場合は、1年後には50-60人の患者数になる可能性があることがわかります。また、初診患者比率が高い場合には、初診を多くしている要因(高度検査などの初診のみ患者が多い等)があったり、接遇の問題などで再診の患者が思うほどに再来院してもらえていない可能性などが考えられます。つまり初診患者数は、その医療機関の潜在的外来患者数を表しており、初診患者比率はクリニックのサービス内容の特性を表わしていると考えています。

 また、お産を手掛ける病院やクリニックにとって、先行指標は”妊婦健診”になります。妊婦健診は、通常ではお産後~23週までは3、4週間に1回、24週~35週までは2週間に1回、35週以降は1週間に1回とおおむね決まっており、妊婦健診が多ければお産が増える見込みとなることは明白です。また、何週間目の妊婦健診が何人いるかわかれば、更に詳細にお産の数を予測することも可能となります。これがわかれば、競合ができるなどの理由で妊婦健診が減り始めるという状況をとらえることで、お産件数を維持するための経営的な手立て(広告宣伝やサービス強化)を打つことが可能です。

 これ以外にも、入院患者の先行指標としての紹介件数や入院相談などのお問い合わせ件数、救急車台数や人間ドック・健康診断における予約件数や契約先稼働件数なども先行指標としてとらえることができるデータになります。

 先行指標をとらえることで、ほんの数週間から数カ月とはいえ、経営の先行きを見通すことができるようになります。このほんの少しとはいえ、期間的な余裕が生まれることで、サービスを強化したり、広告広報に力を入れたり、コスト削減をするなどの手だてを打つことは可能です。医療機関の経営はますます不透明になっており、経営者に求められるものも日々多くなっているのが実態です。是非、各医療機関ごとに適切な先行指標を整理し、経営の変化をいち早くつかんで安定的な経営を手掛けていただけたらと思っています。