メディヴァコンサルブログ

第12回:院長という仕事の難しさ

2007.04.18

株式会社メディヴァ
コンサルティング事業部 部長
小松大介

多くの医療機関の経営・運営に関わり、様々な立場の方にお会いしていますが、院長という仕事ほど難しくて悩みの多い仕事はないなあと感じることが多いです。普通の企業でいう社長は、組織の長であり、かつ自分の時間の使い方や能力を発揮する場をある程度コントロールすることが可能です。

例えば、管理畑の社長であれば経営データを押さえて勘所を探り目標設定をすることを主たる業務とし、職人肌の社長であれば逆に管理のできるスタッフを雇って自分は日々の業務改善や新商品のアイデアだしなどに時間を割くことができます。

ところが院長という仕事は、医師の少なさや経営の厳しさなどもあり、多くの場合において、次のような役割を全てこなしていることが多いのではないでしょうか。

 

・  一医師としての診察や手術
・ 病院の最終意志決定者(投資、採用、戦略など)
・ 医師という職業人の調整役
・ 看護師、コメディカルという職業人の管理
・ 経営企画室としての分析や対外交渉
・ トラブル処理

 

週に何回かの外来や回診(入院患者診察)、手術をしつつ、毎週のように行われる各種会議(経営会議、リスクマネジメント委員会、感染症委員会等)に出て、実際に現場を動かすためにそれぞれが個人事業主的な医師間の根回しや調整をし、更に看護師やコメディカルからの要望や苦情に対応し、問題がおこると真っ先に謝る。忙しくて優秀な院長の仕事ほど、このようなイメージです。

正直、仕事をほとんど選べない状況におられるのだと思います。中には職業人として、現場に多くの時間を割く院長先生がいらっしゃいますが、その場合、組織がうまく動いていないことが多いです。逆に、あまり見かけることはありませんが、管理に時間を割いておられる院長先生ですと、現場をリアルタイムで動かすことができず経営と現場が離れてしまっているように思います。

バランスをとりながら上手く経営されている院長ほど、あらゆること(医師としての技術、多くの職業プロを調整する人格、経営の判断・意思決定を行う戦略力)に精通しており、そのような方に出会えると、その多忙ぶりと見識の深さに本当に恐れいってしまいます。

今、病院の経営は難しい時代に入ってきたと感じます。このような時代だからこそ、本当の意味での院長が求められているのだと考えています。しかし、院長になる、なろうとした医師が学ぶための機会や材料は大変限られてしまっているのが現状ではないでしょうか。これだけ難しい職業をこなせる人は、一体どれだけいるのでしょうか。一般企業の社長のように、社長とサポートのスタッフが役割分担ができるといいのですが、現在の病院経営ではまだまだ確立された組織のあり方を見かけることができません。そのあたりが、病院経営の難しいところであり、課題であると思っています。

 


執筆者:小松大介│Daisuke KOMATSU
株式会社メディヴァ取締役。神奈川県出身。東京大学教養学部大学院修了。 広域システム専攻。人工知能やカオスの分野を手がける。マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントとしてデータベース・マーケティングとビジネス・プロセス・リデザインを専門とした後、(株)メディヴァを創業。取締役就任、コンサルティング事業部長。100か所以上のクリニック新規開業・経営支援、150箇以上の病院コンサルティング経験を生かし、コンサルティング部門のリーダーをつとめる。近年は、病院の経営再生をテーマに、医療機関(大規模病院から中小規模病院、急性期・回復期・療養・精神各種)の再生実務にも取り組んでいる。