海外医療の現場から メディヴァ海外事業部ブログ

アジア

メディヴァ海外事業部の2017年上期

2017年06月19日(月)


こんにちは、鈴木将史です。早いもので2017年ももう半分が過ぎようとしています。メディヴァ海外事業部では、この約半年もまた色々と新しい動きがありましたので幾つか取り上げてみたいと思います。

 

①サウジアラビア王女さまが来日→乳がん検診プロジェクトがスタート

②日本政府が進める「国際・アジア健康構想協議会」の事務局を担当

③ベトナムに自前クリニックを設立することに

 

まず①に関しては、今年の3月12日にサウジアラビア国王が46年振りに来日されました。この訪日団の中に同国で女性の健康増進活動を行っている王女がいらっしゃったのですが、当社の乳がん検診の取り組みの話に興味を持たれ、関連施設(イーク表参道)の見学を行うと共に、同国への乳がん検診の展開について協議を行いました。その結果、今年より首都リヤドにパイロットサイトを作ろうということでプロジェクトがスタートしています。

次に②に関しては、既に当社の様々な所で書かれているので詳細は省きますが、日本政府は、「日本式」介護、すなわち「自立支援介護」のブランド化、「自立支援介護」を進める優良事業所の底上げ、介護人材の効率的な教育などに力を入れています。これを進める内閣官房 健康・医療戦略室のお手伝いを我々のチームが行っています。2月9日に開催された「第一回 国際・アジア健康構想協議会」では事務局を務め、約400人の出席者が集まりました。

最後に③に関しては、ベトナムのホーチミンに隣接するビンズン省において、ベガメックス東急社(東急電鉄さんと現地国営企業ベガメックスIDCの合弁企業)が開発を進めるビンズン新都市内に当社主導でクリニックの開設を行う運びとなりました。目下開発中のこの新都市(まだ医療施設はほぼありません)において理想の地域医療の構築を実現すべくまずGPクリニックの開設を目指します。

 

この3つ以外にも、順調に進んでいるベトナムのバックマイ病院のプロジェクトでは、4月に病院長ご一行が来日され、同行されていた保健大臣とも様々な協議ができました。中国は相変わらず動きが激しく、中でも亀田総合病院と共に進めるプロジェクトはかなり大きなものになりそうです。もうすぐ全貌が見えるので誰かが本ブログで書くことでしょう。その他、ミャンマー、イギリス、台湾などプロジェクトの卵たちが孵化を待って?いるところです。この半年間も昨年に違わずドラスティックな期間でした。

 

 最近では私を含め皆さん出張が多く、全員が一同に会することが少なくなってきましたがようやく来月の上旬には久々の飲み会も開催できそうです。世界各国から集められたお酒と食材で楽しい会にしたいと思います。日々色々とはありますが、チームメンバーのレベルアップも進んでいますし、また年末には面白い報告ができそうです。

 

写真はビンズン新都市の完成予想

 

既に完成しているこのタワーの1階にクリニックができます。

 

タワーの上層階から見た風景。これからどんどん街ができていきます。

 

 

サウジアラビア健康・医療分野における協力関係構築の第一歩

2017年03月13日(月)


今年2月のサウジアラビア保健省局長の訪日の際に、MEJ(Medical Excellence Japan)の主催により日本のヘルスケア分野の企業がプレゼンをする機会があり弊社も発表をしてきました。

 

今回のサウジアラビア保健省一行の来日は、サウジ・日本政府間の協力関係の一環として行われたものです。この後にもサウジアラビア関係のイベントは続いており、3月12日から3月15日にかけてはサウジアラビアのサルマン国王が訪日されます。国王の訪日としては46年ぶりとなります。

 

サウジアラビア政府は、石油依存型経済からの脱却のために2016年4月に2030年までの経済改革計画である「ビジョン2030」を発表しました。「ビジョン2030」は3つの柱(「活気ある社会」、「盛況な経済」、「野心的な国家」)からなっており、それぞれにさらに細かなテーマと具体的な達成目標が立てられています。その1つの柱である「活気ある社会」の「強固な基盤」というテーマの中の1つとして「医療制度の充実」があり、具体的な達成目標として平均寿命の延伸(74歳から80歳)などが挙げられています。

 

これに対して、日本政府は2016年9月のムハンマド・ビン・サルマン副皇太子の訪日の際に安倍首相が「ビジョン2030」への協力の意を示し、「日本・サウジ・ビジョン2030共同グループ会合」が立ち上げられています。2016年10月にはサウジアラビアで第一回の会合が開催され健康・医療がテーマの1つとして議論されました。中でも健康寿命の延伸や人材育成に関して日本政府や企業に期待するところは大きく、今回の保健省局長一行の訪日の実現もその表れの1つと言えます。

 

サウジアラビアの健康・医療分野の目標に対しては、これまでの日本の取り組みと成果を確実に伝えることで日本は十分に貢献することができます。その1つとして日本が世界でもトップクラスの長寿の国であるということが挙げられます。日本人の平均寿命は1950年には60歳でした。それが現在では83.7歳まで伸び、世界一の長寿国となっています(WHO 2016)。また最近話題になっている健康寿命に関しても74.9歳で世界一となっています(WHO 2016)。その要因には様々なものが考えられるのですが、主なものとしては国民皆保険制度の整備、定期健診制度導入などの予防医療への先進的な取り組み、医療機器などのテクノロジーの開発とその有効利用などが挙げられています(Ikeda et al 2011)。

 

例えば、サウジアラビア国民の健康増進の施策に貢献できる一例として日本の健診システムが挙げられます。日本は健診の制度を世界に先駆けて導入しており、長期間にわたって培ってきた知見があります。また富裕層向けの健診は世界的にも珍しくはないのですが、2008年から導入されている40歳から74歳の全国民を対象にしている特定健診は、イギリスで一部取り入れている他は世界でもほとんど例はありません(Kohro et al 2008; Thom 2015)。

 

このような流れの中で、メディヴァとしても予防医療の分野でのこれまでの知見をうまく生かし、サウジアラビアでも人々の健康増進に少しでも寄与していきたいと考えています。運営支援先として関わっているイーク丸の内やイーク表参道といった女性向けの健診センターやAIO(アイオ)と呼ばれる乳がんに特化した検診車で培ってきた立ち上げから運営までの経験や、弊社保健事業部が取り組んでいる特定健診や特定保健指導に関連して、その分野において得られた人材育成、サービス運営、データ分析などの見識は特に大きな効果を与えることができると考えています。

 

このように日本では私たちが当たり前に享受している制度やシステムが他の国々の健康や医療に大きく貢献する例はまだまだあります。今回のような機会をうまく生かすことで、日本という枠を超えて人々の健康増進に少しでも貢献できるのではないかと考えています。

木内大介

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参考文献

Ikeda, N et al 2011, ‘What has made the population of Japan healthy?’, Lancet, 378, pp. 1094-1105.

Kohro, T et al 2008, ‘The Japanese national health screening and intervention program aimed at preventing worsening of the metabolic syndrome’, International Heart Journal, 49(2), pp. 193–203.

Thom, F 2015, ‘The NHS health check’ in Tordrup, D et al (eds), Research Agenda for Health Economic Evaluation, pp. 42-53.

World Health Statistics 2016, WHO, accessed 9 March 2017, < http://www.who.int/gho/mortality_burden_disease/life_tables/en/>