海外医療の現場から メディヴァ海外事業部ブログ

2017年07月

デイサービス「ぽじえじ」中国進出!

2017年07月26日(水)


中国語版

こんにちは。海外事業部の鮑です。
2017年7月13日、弊社の「ぽじえじステーション」(以下「ぽじえじ」)デイサービスが中国で展開することになりました。当日、私も調印式及び記者会見に参加させていただきました。今回のブログは、「ぽじえじ」の紹介及び今後の事業展開の計画、そして、中国人としての思いを書かせていただきます。

調印式は、天津市中新エコシティー病院で行いました。当日、現地政府及びエコシティー病院の関係者、現地メディアの立会いのもと、パートナーである「中国老齢産業開発有限会社」と契約を締結しました。
プレスリリース:https://mediva.co.jp/service/news20170713

 

 

「ぽじえじ」の概要

「ぽじえじ」は、「positive-aging」の略称で、機能訓練に特化した高齢者デイサービスです。2011年に開設して以来、現在都内に、6店舗を展開し、年間延べ約7万人の高齢者にサービスを提供しています。「ぽじえじ」は、従来の介護と違って、年を重ねることをポジティブに捉え、高齢者の「いくつになっても自分らしく、いくつになっても楽しもう」という想いを支えています。

「ぽじえじ」の理念は、高齢者にできる限り自立した生活を送れるように支援するという「自立支援介護」の考え方とも一致します。「自立支援介護」は、その人の「身体的」「精神的」「社会的」自立を改善または維持するよう、介護という方法によって支援していくことです。「ぽじえじ」では、機能訓練を通して、高齢者の身体機能を向上させます。また、「ぽじえじ」は、高齢者にとって、地域における居場所とも言えます。機能低下に伴うコミュニケーション意欲が喪失した高齢者に、居場所と他人との関わりを作る機会を提供し、高齢者の社会参加の促進もしています。また、「身体能力の向上」と「社会参加」の2つの切り口として、高齢者ができることを強化し、新たな人生の生きがいを持てるよう、最終的にメンタル的にも、ポジティブな影響を与えることに繋がります。

「ぽじえじ」のHP:http://posi-age.jp/

 

 

私から見る「ぽじえじ」の特徴は?

ストレングスモデルを実践する「ぽじえじ」

「ぽじえじ」の実践をソーシャルワークの理論モデルから見ると、ストレングスモデルを実践したサービスと考えています。ストレングス理論は、「目的をもった有機体」としての人間を重視する[i]ぽじえじ」の中では、ストレングスモデルの考え方が実践のプロセスの中に見えています。従来のアススメントは、「問題点」を着目し、それらの問題の解決を目標にしています。一方、「ぽじえじ」では、主軸になっているのは目標です。個人の目標を実現するために、回復と改善を目的にしています。

また、ストレングスモデルは、クライアントの弱さに着目するのではなく、個人の内面的な強さに着目し、さらにその強さを引き出します。最近、「ぽじえじ」で次の1シーンがありました。麻痺のある認知症の利用者は、いたずらで機能訓練の道具を踏み潰しました。一般的に、それは「迷惑行動」、「スタッフを困らせること」として認識されますが、「ぽじえじ」では、「最近力が強くなってきていますね」と褒めます。このような気付きと強さに着目することによって、利用者に達成感を味わってもらい、成長に繋げます。

利用者本位サービスの提供

利用者本位は、「利用者主体」ともいい、援助者の価値観・価値基準の基で援助するのではなく、利用者の立場・視点に立って援助観を決定していくこと。[ⅱ]利用者本位のサービスを提供することは、利用者の意見を尊重しながらも、一方的に従うということでもありません。利用者の立場で、本人の行動の本当の意図を理解する必要もあります。前述の利用者を例とすると、「道具を踏み潰す」という行動は、その背景と理由があります。この利用者の場合は、「構ってほしい」「注目してほしい」という思いがあり、行動に移しました。職員は、すぐにこの思いを察し、声かけや会話を増やしました。

また、高齢者にとって大事な水分補給を拒否する利用者もいます。そういった場合、強制的に水を飲ませたり、あるいは飲みたくないと言う意思を尊重し、飲まなくてよしとしたりするようなことではなく、水やお茶以外な飲み物も多く用意して利用者が飽きないようにしたり、運動後など喉が乾きそうなタイミングを見計らって声かけするように工夫するのが「ぽじえじ」流です。

 

 

1980年代以後の世代が直面する困難

1980年代前後に施行される「一人っ子政策」は、人口爆発の抑制に成功した反面に、多くの社会的課題も生んでいました。その1つは、高齢化社会を支える若者の不足と言われています。特に、私のような1980年代以後生まれの若者は、現在親と子供を抱え、夫婦2人で少なくとも親4人と子供の世話をしなければならない状況に置かれています。いわゆる中国の表現の「上に老がいる、下に小がいる」 。80年代生まれの若者のその親は現在50代後半になり、未だに元気な方が多いですが、将来10年、20年、30年のことを考えると、不安とプレッシャーを感じています。

このように、見えてくる様々の困難の中で、如何に親を元気な状態に保つかということは、私のような若者の共通の強い願いです。特に、「親孝行」文化が根付いた中国で、親の元気は、我々にとって精神的な慰めてもあり、日常生活に影響の大きいことでもあります。

「ぽじえじ」は、私が遙から期待していたサービスです。親に元気にいてほしい、楽しんでいてほしい、自分の価値を感じていてほしい、と今でもこれからも、願い続けることです。

 

 

「ぽじえじ」の中国展開に込める思い

「ぽじえじ」を中国での展開に向けて、中国語名称を「普済艾継」にしました。この名称に込めた思いは、以下のように考えています。
普—普遍
濟—困っている方々に対する支援
艾—若さ、美しい
継—継続、続く
「普済艾継」は、「若さと美しさが継続できるように支援する」という意味を含まれています。「ぽじえじ」のサービスを通して、中国の高齢者の生き生きした生活を続けるように、サポートしていきたいという思いを込めています。

「ぽじえじ」を中国で展開する際に、介護保険の縛りがなく、非常に柔軟性を持っていると思います。中核的なコンセプト「positive-aging」を持った機能訓練以外に、中国高齢者に合わせた形にもなれると思います。社交的な中国高齢者に、ソーシャル活動を提供したりすることができます。また、高齢者の家族を巻き込んで、家族が高齢に伴う各種身体的・精神的変化を理解してもらい、高齢者が家族との相互理解とコミュニケーション促進など、現地のニーズと文化に合わせて、新たな試みもしていきたいと思います。

「ぽじえじ」の中国展開を切り口にし、今後中国で多様な「自立支援介護」の形を生み出し、従来の高齢者介護市場に、新たな変革を起こせたら、中国の高齢者にとっても、その高齢者達を支えている若者にとっても、価値があることと思います。

メディヴァの中国人社員として、今後も「ぽじえじ」のような良い介護サービスと医療を中国に持っていき、自分の家族から、普遍的に多くの人の家族まで、少しでも役に立ちたいと思います。

[i]「ストレングスモデル」(2006),チャールズ・ラップ等著,田中英樹監訳,金剛出

[ⅱ]「 社会福祉用語辞典」(2013), 山縣文治・柏女霊峰(編集), ミネルヴァ書房

日本の医療機関での外国人対応

2017年07月06日(木)


 こんにちは、海外事業部の松永絵葉です。2020年の東京オリンピックも控え、今後、日本で医療機関を受診する外国人患者の数が増加することが予想されています。政府も、オリンピックに向けて医療機関における外国人対応の強化を図る公募事業などを実施していますが、多くの医療機関にとっては、費用と手間をかけてまで、外国人患者の受入れ体制を整備するほどではない、と考えられておられるのが実情ではないでしょうか。

 外国人患者の来院で、やはり大きな壁となるのは言語の問題だと思います。そこで、今回は負担なく利用できる多言語対応ツールと、外国人が理解しやすい日本語についてご紹介します。

 まず、日本における外国人数の推移を見てみましょう。2016年に、訪日外国人が初めて2,000万人を超えたことが話題になったのも記憶に新しいかと思います。確かに、日本政府観光局のデータ(下表)の通り、訪日外国人は、ここ数年で著しく増加しており、そのほとんどが観光客だということがわかります。

 政府は、2016年3月に観光先進国を目指す新たな観光ビジョン「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、外国人観光客の増加に力を入れています。具体的には、訪日外国人旅行者を2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人に増やすことを目指しています。

 さらに、入国管理局のデータ(下表)からは、日本に在留する外国人が2012年以降増加し続けていることがわかります。2016年には240万人まで迫っています。

201707_訪日外国人推移201707_在留外国人推移

訪日外国人数推移:日本政府観光局
在留外国人推移::法務省入国管理局

 こうした状況の中、日本滞在中に怪我や病気で医療機関に来院する外国人が増加することはほぼ確実といえるでしょう。しかし、日常的に外国人が来院する医療機関は限られ、多くの医療機関では時々外国人が来院する程度と考えられます。そうした医療機関では、どういった準備ができるでしょうか。

●多言語対応ツール
 最近では、様々な言語に訳された問診票や診察を助ける資料など、豊富に提供されています。いざという時のために、こうした資料をストックしておくのも有効です。ここでは、その一部をご紹介いたします。

・厚生労働省「外国人向け多言語説明資料」
英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語の各種問診票や制度の説明、手術・検査の同意書などが提供されています。http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056789.html

・特定非営利活動法人AMDA国際医療情報センター「問診票等」
外国人患者が医療機関の窓口で戸惑わないように、一般的な外来診療の流れや診察のお願いの資料などが英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語などで提供されています。また、旅行保険などの民間保険利用者に対する支払い済み証明書などもダウンロードできます。
http://amda-imic.com/modules/useful/index.php?content_id=1

<積極的な外国人患者受け入れを検討されている医療機関様向け>
・平成26年度経済産業省 病院のための外国人患者の受入参考書
医療を目的とした外国人患者を受け入れるための業務やリスク回避などについて説明されています。http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/26fy_sankousyo_all.pdf

・経済産業省ヘルスケア産業インバウンド情報
医療通訳の活用例や事業リスト、外国人患者の支払う医療費に関する検討、各種同意書(英語・中国語・ロシア語)等が提供されています。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/inbound.html

●英語よりも、やさしい日本語
 私は、以前日本語教師として働いていたことがあるのですが、その経験から、日本人が考える「外国人にとってわかりやすい日本語」と実際に外国人にとってわかりやすい日本語は、実は違うことがあるということを感じています。私たちは外国人を見ると、英語で話しかけがちですが、実は英語が全く理解できない外国人も多いのです。しかし、日本に在住している外国人は、日本語なら少し理解できるという方も多いです。そこで大事になるのが外国人にとってわかりやすい日本語「やさしい日本語」を使用するということです。

 「やさしい日本語」は、日本語初級レベルの外国人にとってわかりやすい日本語のことを言います。1995年1月の阪神・淡路大震災では、日本語も英語も十分に理解できず必要な情報を受け取ることができない外国人が多くいました。そこで、こうした方々にも、適切な情報を伝達するために考え出されたのが「やさしい日本語」です。近年では、「やさしい日本語」は、災害時のみならず、外国人への日常的な情報提供手段として研究され、行政情報や生活情報、毎日のニュース発信など、全国的に様々な分野で活用の場が広がっています。

<やさしい日本語で話す3つのポイント>

①「です」、「ます」などの丁寧体で話す。
一般的に外国人が日本語を学習するときには、活用のやさしさから、始めに「~です」、「~ます」を学習します。そのため、例えば「そこに すわる」ではなく、「そこに すわります」の方が伝わりやすいでしょう。

②短く切って、ゆっくり話す。
一文はできるだけ短くしましょう。また、話す際もゆっくり話しましょう。ただし、「こ・こ・に・か・き・ま・す」など、一音一音区切ると逆にわかりにくくなります。わかりやすく話すには、文節ごとに区切ると良いでしょう。文節とは、文章を意味のまとまりで区切った単位のことです。
例えば、「ここでまちます」は、「ここで  /  まちます」 と分けられます。
日本人だと、「ね」を入れるとわかりやすいでしょう。
「ここでね  / まちます

③尊敬語、丁寧語は使わない。
受け身文も難しいので、避けた方がよいでしょう。尊敬語、丁寧語は外国人には非常に難しいです。尊敬語、丁寧語を使用しないことは、日本語初級者の外国人にとって、失礼ではなく、親切です。

 また、「~てください」といった表現が伝わらない場合は、主語をつけることも一つの手だと思います。例えば、「ここで待ってください」という日本語は、「あなたは ここで まちます」といえばより簡単になります。

 外国人の母語で話ができれば一番良いですが、それが難しい場合、英語よりやさしい日本語の方が理解しやすいことがあることも、知っていただければと思います。

 医療の場に限らず、今後日本人が外国人と接する機会は増えることでしょう。そんなときに、日本人としてやさしい日本語でおもてなしができると良いですね。

参考文献
法務省入国管理局「平成28年末現在における在留外国人数について」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00065.html (2017/6/30参照)

日本政府観光局「国籍/目的別 訪日外客数(2004年~2016年)」
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/ (2017/6/30参照)

国土交通省観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics01_000205.html (2017/6/30参照)

弘前大学人文学部社会言語学研究室 「やさしい日本語」
http://human.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/EJ3mokuji.htm (2017/7/4参照)

明海大学外国語学部日本語学科准教授 萩原 稚佳子 日本語検定「世界から見た日本語コミュニケーション(16)「やさしい日本語ってどんな日本語?」http://www.nihongokentei.jp/amuse/essay/w_16.html (2017/7/4参照)