海外医療の現場から メディヴァ海外事業部ブログ

ベトナムを高齢者サービス市場として眺めてみると

2017年04月11日(火)


現在、介護分野での海外人材の受け入れ、および海外での介護事業の展開を目指す動きが活発になっており、在留資格に介護を追加する(介護福祉士の資格保有者)ことが2017年9月、また、技能実習制度の介護分野での受け入れの施行が2017年11月に予定されているとともに、官民連携のプラットフォームとして「国際・アジア健康構想協議会」が2017年2月に開催されるなど、法整備から民間の事業者まで積極的な姿勢がみられています。

メディヴァでは、国際・アジア健康構想協議会の事務局を担当するとともに、内閣官房より、「ICTを基盤とした介護等高齢者関連産業のアジア展開に関する調査」を受託し、アジア諸国の介護市場としての魅力と、介護人材としての魅力を調査しました。

そこで、今回はその調査内容の一端をご紹介します。

 

【アジア諸国の高齢化予測】

(出所)United Nations“World Population Prospects : The 2015 Revision”,2015よりメディヴァ作成

アジア諸国では、高齢者人口は増加することが予測されていますが、中でも中国の高齢者数は2015年で1億3,200万人程度のものが、2030年では2億4,300万人とわずか15年の間に1億人以上増加すると予測されています。さらに2050年にかけて爆発的に高齢者が増え、3億7,000万人を突破する予想がされています。これは中国全人口の28%に達し、2016年時点の日本とほぼ同等の高齢化率です。また同じように高齢化が深刻なのがタイとベトナムで、短期間で高齢化が進展するアジアの諸国では、近い将来に高齢化が社会問題になることは避けられない状況となっています。

 

 

今回は、現在はまだ高齢化が進展していないものの、高齢化問題が将来的な課題として捉えられている国として、ベトナムの例をご紹介します。

ベトナムでは、高齢者に対する公的なサービスとしては、貧困や障害を持つ戦争功労者やその親類、単身や身寄りのない高齢者向けに国やNPOが提供するものに限られており、民間の高齢者サービスは普及していません。しかしながら、ハノイやホーチミンでは、欧米の出資や協力を得た老人ホームが2010年以降設立されてきています。弊社の調べ(2016年時点)では、民間の老人ホームはハノイで14件、ホーチミンで3件確認されています。

現地でのヒアリングでは、一般のベトナム国民にとっては、高齢者を家族以外の人が介護するというのは、まだ抵抗感があるということがわかりました。

 

 

【高齢者の介護人の内訳】

 (出所) Viet Nam Aging Survey (VNAS),2011よりメディヴァ作成

こちらは、高齢者の介護が必要な方に対し、誰が介護を行っているかを示したものです。介護士や医療従事者が関わっているのは、全体の0.1%、0.2%と非常に稀なケースです。ここで興味深いのは、「その他の親戚」という分類で全体の6.4%にあたります。介護をする家族は、まずは子供の中から相談の上で対応可能な人を決めて、場合によっては、仕事を辞めて介護にあたることが多いそうです。しかし、それが難しい場合などでは、地方にすむ遠縁の親戚を呼び寄せて、介護にあたることがあるそうです。

 

 

【ベトナムにおける高齢者の家族の状況の推移】

(出所)Vietnam Household Living Standard Survey 1993-2008 よりメディヴァ作成

ベトナムではまだ高齢化が進展していないとはいうものの、高齢者のうち、子供と同居する割合が減少し、独居、夫婦のみの高齢者は着実に増えてきています。女性の社会進出や、少子化問題等とも相まって、高齢者を社会インフラとして支える必要性が徐々に高まっていくことは確実な状況です。

ベトナムは、介護人材としての魅力を語られることが多いですが、海外からの人材を介護現場で登用することを検討している事業者は、単に労働力として人材を活用するだけではなく、現地の高齢者や介護問題にも目を向けながら、帰国した後に、現地の高齢者サービスのリーダーシップを発揮できる人材を育成して欲しいと考えています。

また、そのような事業者が育成した人材とともに、現地の高齢者サービスの提供者として活躍できるようになるのが理想的であり、まさに国際・アジア健康構想の目標の一つともなっています。

 

 

機会をみて、ベトナムの介護人材として捉えた場合の調査や、他の国の状況などもご紹介できればと思います。

 

鈴木勝也