「iPhone、iPadを活用した在宅医療システムの運用とその取り組み(後編)

2011.09.30[ニュースリリース]

「iPhone、iPadを活用した在宅医療システムの運用とその取り組み
 ―スマートフォンとクラウド型地域連携カルテで切り拓く未来型地域医療連携―」

                         桜新町アーバンクリニック 院長 遠矢純一郎

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1.急増する在宅医療のニーズ
2.在宅医療の特殊性
3.スマートフォン、クラウドサービスと在宅医療

4.クラウド型地域連携システムEIR(エイル)の開発

在宅医療が抱えている問題として、そのひとつに在宅医が少ないという現状がある。それをカバーするためにもパラメディカルの活躍が期待されるが、さまざまな職種が別々の事業所から関わるため、同じ患者でありながらもその多職種間の連携は困難が多い。
 そのため、お互いのケアやキュアに統一性を欠き、患者の療養上の問題や目標を見えにくくしている。やはり地域連携においても「情報共有」を基軸とした地域医療チーム力の強化が必要である。
 そこで筆者らは、院内の情報共有の仕組みをさらに広げて、地域の医療チームとの情報共有にスマートフォンやクラウドシステムが応用できないものか検討した。その結果開発されたのが「クラウド型地域連携システム~EIR(エイル)~」である。これはシステム会社ライトハウスと共同開発したもので、グループウェアの考え方を応用したWebアプリケーションである。在宅医療に関わる多職種多事業所のさまざまなプレイヤーが、全員で情報を共有しながら日々の記録を積み重ねていくことで、病状の把握やケアの進捗管理をすることができる。新たなハードへの投資が必要ないように、パソコンやスマートフォン、普通の携帯電話からでも利用が可能である。チーム内での連絡をスムーズにさせる「お知らせ」機能やスケジュール管理機能があり、訪問時に必要な書類帳票作成などもできるように設計されている。クラウドシステムを採用することで高いセキュリティを確保できることやOSなどのプラットフォームやデバイスにこだわることなく使用することが可能となった。日々すさまじい勢いで進化し続けるネットやアプリケーション技術、これにGoogleなどに代表されるようなフリーのクラウドサービスを組み合わせ、最先端のIT技術を自分たちのシステムに取り入れることができるのもクラウドシステム採用の決め手である。いつでもどこでも速やかに患者情報を引き出し、遠隔にいるもの同士が情報を出し合いひとつの患者カルテとして共有することで、ケアとキュアの質が向上し患者や家族の安心感にもつながるものと確信している。今後クラウド型情報共有システムは在宅医療には欠かせないツールとして定着していくだろう。

5.今後の課題

このクラウド型情報共有システムでは医療情報という非常にセンシティブな個人情報を扱うため、そのセキュリティについては最大限対策を施す必要がある。その反面これまでのガイドラインは医療・介護の情報を地域内で円滑にやりとりするにはあまりにもハードルが高すぎるところがあり、在宅医療という地域連携のなかでこそ成立するような医療においては、より柔軟な対応が必要と感じている。また在宅医療ケアに関わる各事業所は規模が小さく経営的に厳しいところが多いため、かなりコストを抑える必要がある。加えて、より簡単な操作でだれでも使えるようなユーザーインターフェースの工夫や利用者へのITリテラシー向上のための教育が欠かせないだろう。更なる普及につなげるためには、既存の電子カルテ等のシステムに連動するような仕組みが求められるだろう。

6.まとめ

在宅医療におけるスマートフォンやクラウドサービスの活用は、遠隔にいる者同士が必要な情報を十分に共有でき、いつでもどこでもコミュニケーションできるという特徴において有用である。患者に関わる全てのプレイヤーが情報を共有、蓄積していくクラウド型情報共有システムは、未来型地域医療連携の常用ツールとして今後更なる進化と普及が期待される。東日本大震災による被害で診療や処方などの情報を損失し、治療の継続が困難となったという。今後医療情報のクラウド化は、情報の保管という意味でも医療にとってかかせない存在になるに違いない。

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