No.001(2004/05/07)

2004.05.07

目次


ご挨拶

お世話になっています。メディヴァの大石です。 この度、私どもではメールマガジン配信を開始させていただきます。同メー ルマガジンは、「プラタナスPPM」と題して(プラタナスは、プラタナスの木の下で「患者様中心主義」を教えたヒポクラテスの故事にちなみます。PPMはPhysican Practice Managementの略)、医療の受け手(患者さん、ご家族)と提供者(医師、その他の医療者)双方の継続的な満足度向上を目指してマクロ、ミクロの観点から発信させて頂きます。

今、医療界をとりまく状況はどうなっているのか、患者さんは何を望んでいるのか、医療者のキャリアはどう考えるべきなのか、両者の長期的満足を上げるためにはいかに経営効率を上げるか、等々の課題について私どもなりの問題提起をするとともに、メディヴァ、ネットワーククリニック、知己を得た医療機関、企業の動向もお伝えしたい思います。

何分、医療界に入って日も浅いので理解がまだまだ浅い面もあるかと思いますが、どうかご容赦頂き、ご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願いします。ご意見、ご反論は歓迎いたします。尚、このメールマガジンの配信を止めたい場合は、お手数ですがご一報頂けますようお願い申し上げます。

(株)メディヴァ 代表取締役  大石佳能子

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コラム:「医師のキャリア」、、、今後、どうなる?

医師の数は、一県一医大政策の影響もあり、1980年当たりから大幅な増加を見せている。1980年には約15万6000人だったのが、2000年には25万6000人となり、この間64%も増加している。医学部の定員が大幅に増えた80年代の卒業生が40代を迎えている。

医師は年齢を重ねるごとに大学付属病院から一般病院へ、一般病院から院外へ移っていく。1996年から2000年の間では統計に基づいて計算すると、1万2000人が異動し、そのうち9000人が診療所院長に、3000人が診療所の勤務医になった換算である。診療所の総数が約9万であるため、少なくとも1割が若返っているのである。

この流出入は、今後の医療改革により病院の機能分化・病床の削減が行われることにより促進されると予測される。病床数は1990年をピークに10年間で約5%減少した。海外の人口対比の病床数と比較すると、今後10年程度で30~50%減少する可能性もある。仮に30%だとするとさらに4万6000人が開業することとなり、診療所の数は最大現在の50%増加する。

では、診療所を開設するに適した立地は、そんな多く存在するのだろうか?
例えば新規の内科開業医を成り立たせるのに必要な一日40人の患者がある程度容易に集まるには、商圏内に1万人の、ある程度高齢化した背景人口がいなくてはならない。当社ではマクロレベルから落とし込んだ立地調査を行っているが、それだけの人口を抱え、競争がさほど厳しくないところというと、例えば世田谷等の人気地域では3箇所しかない。全国レベルでは、内科の診療所は6万箇所で飽和するが、すでに既存の内科診療所は2000年で6万箇所を越えており、理論的には飽和状態に達していることとなる。

このように書くと、いかにも開業が厳しく、病院に残ったほうが有利なように一瞬思えるが、実際は病院も赤字転落病院が相次ぐ中、医療者にも収益責任が求められたり、人件費がコストカットの対象となったり、人員が削減されたりと、極めて厳しい状況に陥っている。また、診療所経営もマクロ的には厳しいが、これは「患者さんが選ぶ時代」の到来とともに、優勝劣敗がはっきりしてきたことに過ぎない。

ただいずれにしても、従来型の「保険点数を横目でにらみながら、己の信じる医療を実直に行う」だけでは医療者のキャリアは務まらなくなったことだけは確かである。病院においても診療所においても、医療者は医療のプロであるだけでなく、医療経営のプロであることが求められている。今回、私どもが発刊させて頂いているメールマガジンでは、医療者が医療経営のプロになろうと思ったときに、ヒントになるような事例や手法、考え方を少しでもお伝えできたらと願っている。

(株)メディヴァ 代表取締役  大石佳能子

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連載:開業プロセスと成功するポイント ─①<経験、スキルの棚卸とコンセプト設計>

初めまして、開業支援を担当している小松と申します。既に開業準備に入られている方、まだまだ開業する気すらない方、いろいろな方がいらっしゃると思いますが、このコーナーでは、開業のプロセスにそって、その概要と気をつけるべきポイントをご説明していきます。

まず開業を思い立ったら、最初に考えるべきは経験とスキルの棚卸と、コンセプトの設計です。何も考えずに開業することも可能ですが、必要な機器や施設の基準、また患者さんへのアピールを設計する上で、まとまったコンセプトがないと整合性がなくなってしまい、無駄な投資をすることになりかねません。まずは、今までの経験について、以下の項目を書き下してみていただけませんでしょうか。

 ■ 経験とスキルの棚卸項目
- 職歴 〔 どの病院で、どのような役割を果たしたのかなど 〕
- 研究歴 〔 何に興味があって、何に詳しいのか 〕
- 手技 〔 各種検査への対応 〕
- 対象疾患〔 外来、病棟でそれぞれ診ている疾患 〕
- 治療 〔 得意な治療、できない治療 〕
- その他 〔 電子カルテなどのPCスキル、経理など 〕

例えば一般内科であれば特に以下の内容についてはそれぞれ検討が必要です。
- 職歴   ・外来の経験はどの程度か
・小児科も診ることができるか
・外来混雑時、1時間あたり何人診察できるか
- 研究歴 ・今後も続けていきたい研究になるのか
- 手技  ・X線の撮影、読影は問題なくできるか
・腹部エコー、内視鏡検査などはどの程度できるか
- 対象疾患 ・生活習慣病の細かい管理ができるか 
・風邪や頭痛などのコモンディジーズに見逃しのない診療
ができるか
- 治療 ・インシュリン注射は行うのか
・代替医療(漢方、鍼など)も取り入れるのか
- その他 ・在宅医療はやるか、ターミナルまで診療するか
・電子カルテは導入するのか、キーボードやマウスへの抵
抗はないか
・医事、経理などの知識はどのくらいあるのか

いくつかのスキルについては、まだ自信がないものもあるかと思います。しかし、全てを完璧に身につけていなくてはいけないわけではありません。開業までに経験を詰む必要があるものもありますし、開業後に継続して勉強すればよいものもあります。またコンセプトの設計次第では必要ないものもあります。

■ コンセプトの設計
コンセプトの設計には、大きな概念決定と細かな機能決定があります。大き
な概念とは、以下の項目についての答えになります。
- どこで〔where〕
- 誰に〔who〕
- 何を〔what〕
- どのように〔how〕
- どのような思いで〔why〕

具体的には、以下のような質問です。
・どのような医療を実現したいのか、どんな患者さんを診ていきたいのか
・開業を何年のプロジェクトとし、どの程度で資金を回収したいのか
・ジェネラルな外来と専門外来のバランスはどのように考えているのか

例えば、
・家族全体を診たい。子どもからおばあちゃんまで一緒に来院するような、暖かくて何でも診れる町の家庭医になりたい
・内視鏡のスキルを生かして、高度医療機関にも負けない、高い技術と専門性をもった専門クリニックを開業したい
・マンションや商業施設と組んで、情報システムなどを生かして、新しい医療の仕組みを提供するような高機能クリニックになりたい

最初のコンセプトは、細かいところまで検討していなくても構いません。まずはどんな医療を行い、どんな患者さんを診たいのかを明確にしていきます。それができれば、あとは実現性を検討しつつコンセプトの内容をより具体的にしていく作業になります。それが次のステップ、「事業計画の作成」です。

次回は、事業計画とは何か、コンセプトに対して経営的な診断を行うにはどうしたらよいかなどについてご説明いたします。よろしくお願いいたします。

( 開業事業担当 小松大介 )

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病院・クリニック ツアー ─①<有床診療所・グループホーム「希望の家」(神戸市)>

神戸市須磨区の有床診療所・グループホーム「希望の家」に行ってきました。
実は、同診療所は、6月初の開業に向けてまだ建設途中でちょうどトンカチやっている最中でした。ここは、(医)林山朝日診療所に属し、理事長の梁勝則先生は、在宅ホスピスや在宅ケアの概念がまだなかった11年前から高齢者や末期患者への往診を始め、93年にはNPO「日本ホスピス・在宅ケア研究会」を設立されました。

勤務医のころに末期ガン患者の緩和ケアに関わったのがきっかけで在宅医療に取り組み始めた梁先生は、「私が始めたころは訪問診療の制度や仕組みはなかった。でも患者さんのニーズはあった。ニーズがあってきちんとしたことをやっていれば、必ず制度はついてくる」とおっしゃいました。

今回の有床診療所も、「今の時代に何故有床診?」という疑問に対して「ニーズがあるから」と明確に答えられました。今回の有床診療所の果たす機能はホスピスで、その為、各病室は10㎡とかなりのスペースをとり、窓も大きく、家族用のスペースや図書室、食堂も充実しています。反対に「急性期はやらない」と言い切られていました。「この規模の診療所で急性期をやるのは却って危険」であり、医療スタッフも医師は通いで1名に対し、看護師はベテラン10名と充実した配置を予定して、機材もMRIやCTは入れていません。

そこには、明確なコンセプトがあり、背景として強い信念が見えました。全体としての理念は「自分が掛かりたい医療の実現」だそうで、「地域の患者様のために」というようなことを言うと、却って抽象化して自分もスタッフも迷うと、いうことでした。

実は私たちも、「今の時代だからこそ有床診療所」と思っていたところがあり、有床診療所の開設プランを検討した出したところでした。というのは、医療制度改革が進み、病院が機能分化されるなかで、急性期を出されてベッドの圧倒的に足りていない療養型病床の空きを待つ方であるとか、ホスピスを求めている方であるとか、狭間に落ちる患者様が余りにも多く、それを救うのには訪問診療の形態では十分でなく、機能を補うベッドを持った施設が必要ではないか、と常々感じていました。梁先生の「東京でも頑張ってください。良いことはやがて広まります」という言葉は心強く、背中を押された気がしました。「希望の家」の開設は6月なので、また開設後に有床診療所・グループホーム「希望の家」の開設は6月なので、是非開設後にまた訪れて先生のお話を伺ってみたい、と思いながら帰路につきました。

お忙しい中時間を割いて頂いた梁先生、メディサイトの松村さんへこの場を借りて深く御礼もうしあげます。

( 代表取締役 大石佳能子 )

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最近のメディヴァ

─ 用賀アーバンクリニック在宅診療部門 開設 (4/1)
─ 医師向け・学生向けセミナー開催 (4/22、4/23)
家庭医療学 神保真人先生(トマスジェファーソン大学教授)
─ 在宅医療研修会 (4/25~4/26)
講師 中野一司先生(ナカノ在宅クリニック)
─ にしなレディースクリニック 開院 (5/1)
─ メールマガジン創刊 (5/1)

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編集後記 ~ 女性医師のキャリア

『「医師のキャリア」、、、今後、どうなる?』は、雑誌「ドクターズ・マガジン」に寄稿させて頂いたものを一部抜粋、加筆しました。掲載後「流出入のなかで女医さんはどうカウントされているのか?」というご質問を頂きました。統計上は「在職(病院を辞めたが他で働いている)」と推定するしかないのですが、かなりの数が医師という職業を辞められている、とのこと。同じ働く女性としては残念で、何らかの形で医療界への復帰がありえないのか、と思いました。

用賀アーバンクリニックでしばらく開業前研修を兼ねて非常勤で働いておられた女医さん(呼吸器科)で、昨年秋に開業された方がいらっしゃいます。
双子のお母様で、当然旦那様の理解とサポートもあるのですが、一人開業で標榜科目は内科、呼吸器科、小児科、皮膚科とまさしくファミリードクターとして大活躍されています。診療内容がしっかりとされていることに加え、お母様だとういうことが効いているか、病気の子供を持つお母さんの信頼も厚く、大人気の診療所となっています。

自分も小さい会社の社長をやっていて思うのですが、実は主婦、母親と何役もこなさなくてはいけない女性にとっては、勤務するより自営業のほうがフレキシビリティが効いて働きやすいようです。今後、女医さんの開業が増えて、医療界に留まる方が少しでも多くなることを願って止みません。(佳

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