管理栄養士による
すこやか栄養コラム

高齢者のための健康的な肉の食べ方

2017年10月10日(火)


厚生労働省がおこなっている国民健康・栄養調査によると、高齢者の低栄養傾向(BMI20以下:BMI=体重㎏÷身長m×身長m)にある割合は、5人に1人くらいで、かつ年々増加傾向にあります。

高齢者の低栄養での問題の一つに、要介護リスクを高めてしまうことがあり、なかでも老化に伴う筋肉量の減少に、低栄養による筋肉量の減少が加わると、ロコモティブシンドロームの原因になるといわれています。

ロコモティブシンドロームとは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態のことをいいます。
進行すると、日常生活にも支障が生じてきます。

この飽食の時代に低栄養?!と驚かれるかもしれませんが、ある高齢者の食事例として
【朝:パン、牛乳/昼:ごはん、みそ汁、焼魚/夜:ごはん、野菜炒め】
となると、1日3食は摂っていますが、1日に必要な栄養を満たしてはいません。
特に深刻なのは、肉類を避ける傾向が強いことです。

若いときは食欲が旺盛で好んで肉を食べていた方も、年齢を重ねてくると「年だから」とか「コレステロール値が上がる」という理由で避けるようになることが多いようです。

結果、3食きちんと食事を摂っていても、肉類に含まれる「たんぱく質」が不足して、低栄養状態に繋がりやすくなります。

<肉などの動物性たんぱく質が不足すると…>

・免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなり、回復力も低下する

・老化スピードが速くなり、認知機能の低下を引き起こす

・転びやすくなり、骨折の原因になることもある

・血管を弱め、高血圧や脳卒中が起きやすくなる

「たんぱく質」は、筋肉や血管、免疫細胞などの機能に不可欠な成分です。
魚や大豆にもたんぱく質は多く含まれていますが、肉類は鉄分や脂肪なども含まれているので、効率よく栄養が摂れるという利点があります。
また、肉の種類によっても特徴があります。

<牛肉の特徴>

・鉄欠乏性貧血の改善に効果的なヘム鉄が豊富

・体脂肪が燃焼される際に消費されるカルニチンが豊富

・食物の消化や代謝をサポートする酵素になる亜鉛が豊富

<豚肉の特徴>

・糖質をエネルギーに変えるために必要で、疲労回復効果があるビタミンB1が豊富

<鶏肉の特徴>

・動脈硬化の引き金になる飽和脂肪酸を含む量が、牛肉・豚肉に比べ少ない

・疲労回復効果が期待されるイミダペプチドや、アルコール分解に必要なナイアシンが多い

成人が1日に必要とするたんぱく質の推奨量は、男性60g、女性50gです。
(主治医から食事の指示が出ている場合は、指示に従ってください)。

食品でのおおよその1日目安量は、
肉【男性90g・女性60g】
魚【男性90g・女性60g】
豆腐【男性1/3丁(100g)・女性1/6丁(50g)】
卵 1個(50g)、
牛乳コップ1杯弱を合わせた量になります。
偏らず、バランスよく摂ることが大切です。
肉類を、食べにくい、必要量を食べるのが難しいなどの理由で敬遠されている場合は、調理や摂取量を増やすための工夫で解決し、積極的に食事に取り入れてみましょう。

<食べやすくするための工夫>

・薄切り肉もひき肉も、ある程度、脂のある部位の方が柔らかく食べやすい。

・ひき肉料理には、小麦粉を混ぜると冷めても柔らかく、蒸し焼きにすることでしっとり仕上がる。(ひき肉300gに小麦粉大さじ1と1/2位)

・片栗粉をまぶしてゆでると、つるんとした食感で食べやすくなる。

・梨、キウイフルーツ、パイナップル、リンゴなどを、絞ったりすりおろしたものに15分ほど漬け込むと、果物の持つ酵素により柔らかくなる。塩こうじやヨーグルトでも柔らかくなる。

・片栗粉やコーンスターチ、ゼラチン、とろみ調整食品などを利用し、あんかけ風にしたりとろみのあるタレにからめると食べやすくなる。

<摂取量を増やすための工夫~いつものメニューに肉をプラス~>

・みそ汁に肉を加える。(肉をプラスすると、だしが出て味噌が少なめでもうま味が増す)

・サラダやあえ物にも野菜だけでなく、ゆでたり、蒸した肉を加える。

・ご飯に混ぜる。(細かく切って炊き込んだり、味付けした肉を炊きあがったご飯に混ぜる)

肉類や脂を控えた食事が健康に良いとされるのは、生活習慣病の原因になるメタボリックシンドローム予防のためですが、それが有効なのは40代~50代くらいまでといわれています。

60歳を超えての粗食は老化に繋がり、健康にとって害が大きくなることもあります。

また、肉類には、幸福ホルモンともいわれるセロトニンを作り出す原料となる物質が多く含まれ、精神を安定させ『老人性うつ』予防にもなるといわれています。

一定量の肉を食事に取り入れることを意識して、心と体の健康作りに役立てましょう。

(管理栄養士 石田 晴美)