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在宅医療現場から考える地域包括ケアの質|MEDIVAの在宅・地域包括ケアコンサルティングブログ

2015年1月14日

 

企業・行政コンサルティングチームの神野です。現在、家庭医として在宅医療に従事しながら、企業や自治体をクライアントとしたコンサルティング業務を行っています。

 

当チームが取り組む主要案件の一つに、「地域包括ケアシステム」の構築支援があります。高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるようにするためには、マクロレベルでのシステム構築の一方で、現場での医療・介護サービスの質の向上というミクロな視点も重要となります。今回は少し視点を現場におろし、在宅医目線でこの構築プロセスにおける現状と課題について考えてみたいと思います。

 

 

地域包括ケアの一担い手としての在宅医療

高齢者は若年者の疾病構造と異なり、高血圧や認知症等の慢性疾患と服薬の管理の他に、日常生活動作(Activities of Daily Living=ADL)低下や転倒のリスク、さらに終末期に対して、継続的かつ全人的なアプローチでケアをしていく必要があります。高齢者には、生活の質を維持しながら、こういった複雑な医療・介護ニーズに対するケアを、個々の状態に合わせて調整していく「プライマリ・ケア」の提供が期待されています。

 

昨年11月にOECDから発表された『医療の質のレビュー』では、高齢化する日本において、このプライマリ・ケアの強化が強調されています。そこでは、単に医療費が上昇していく際の抑制手段としてではなく、患者中心で、予防的かつ包括的な高齢者ケアの手段としてのプライマリ・ケアの整備が求められているのです。在宅医療はこのプライマリ・ケアに含まれており、患者のQOLを考えながら長期的で一貫したケアを提供していく、そして地域での生活を支えていくものです。

 

しかし、在宅医療だけでは地域包括ケアはうまくいきません。多職種の連携や介護の充実はもちろん、後方支援病院という連携病院との協力体制がなければ、質の高い地域包括ケアを実践することができないからです。特に、患者の状態が最も変わるフェーズを担当する病院との連携は、その後の在宅療養や終末期への影響が大きいため、在宅医療や介護に携わる者としては、入退院の前後で患者の情報共有を行い、その方にとってどのような医療が適切なのかという個別ケアのレベルで共通認識を立てておくことが重要となります。

 

ここで一つ、「退院前カンファレンス」の例をあげたいと思います。私は普段、施設入所中の方の診療を担当していますが、在宅から入院した病院で急性期治療を終えた患者の退院が近くなると、治療経過や在宅療養での留意点の確認のために退院前カンファレンスの開催を申し出ることがあります。この退院前カンファレンスは、患者・家族へ切れ目のない医療・介護を提供することの他に、病院の担当医や看護師と顔の見える関係を作り、よりスムーズな連携を可能にします。しかし、残念ながらこの流れは十分に機能しているとはいえず、都内のある国立病院の調べでは、退院前カンファレンスの実施率は約30%程度であり、在宅医の出席はその中で約20%とさらに低くなっています。退院前カンファレンスは、再入院率の減少や、在宅での看取り率上昇に有意に寄与しているという研究報告もあり、今後も積極的な啓蒙と実践が必要となっていくと考えられます。

 

24時間365日、地域の在宅医療を支えるためにできること

さて、在宅医療では、昼夜問わず患者の病状変化に責任を持つことが期待されています。しかし、これを1人の医師が、絶えず対応することは非常に困難であることは容易に想像ができます。

 

一例ですが、私が所属する医療法人社団プラタナスでは、この問題を組織的に解決しています。プラタナスの在宅部門には現在約2,000人の患者が登録されています。最初のコールは主治医が受けますが、ほとんどの場合電話のみの対応で可能です。しかし、中には往診が必要な方もいらっしゃるため、主治医が往診困難であれば、グループ内の有床診療所の待機当直医が出動します。実際に当直医が出動する場合、主治医からの患者情報の提供、現場からの状況報告、そして方針決めを共に行います。これにより、不必要な夜間救急受診や場合によっては入院も防ぐことができるため、患者への負担を最小限にしながら、主治医患者間の信頼関係と継続的な在宅療養を支えることができるわけです。

 

上記のような体制づくりは、在宅療養支援診療所だけではなく、訪問看護ステーションにも言えることです。一つの機関ですべての負担を受けてしまう仕組みではなく、ある一定の地域の中で夜間の往診や訪問看護の出動を集約化するといった動きは、先駆的な地域では医師会や特定の医療機関主導で実践され始めています。弊社としても、今後どのような仕組みが地域包括ケアシステムと親和性が高くかつ実現可能なのかを模索していきたいと思います。

 

地域包括ケアシステム構築にメディヴァができること

地域で患者をみていく中で、質の高いプライマリ・ケアとQOLを重視した生活を提供するために、今後も在宅医療のニーズは高まる一方でしょう。在宅医療・介護の担い手が、現場での課題の発見と解決するための努力を継続することが、より良い地域包括ケアにつながるのは言うまでもありません。では最後に、システムとして構築するためのマクロレベルでのアプローチについて、弊社の取り組みをご紹介致します。

 

地域包括ケアシステム構築に向けてまず自治体が取り組むこととして、地域の「実態把握と課題分析」があげられます。地域の人口動態や医療資源の把握を統計データやヒアリング等から分析することが必要です。そこから現状と将来像の予測とのギャップを明確化していくのですが、注意したいのは在宅医療の視点から見ると、在支診数や介護系サービスといった単なる量的な充足を目指すのでは、在宅患者の暮らしの質は必ずしも向上しない可能性があるということです。

 

たとえば、がん患者に対する緩和ケアの提供や神経難病等の医療依存度が高い方をみることができる在宅医や訪問看護師をどう整備していくかという質の面、一人の患者に関する医療機関や介護サービス事業者の持つ情報をどう統合化できるかという横断的な情報共有方法についても検討していく必要があります。他にも、地域資源全般のマップ化や、医療機関や事業所の待機や空き状況といった情報アクセス等があげられます。このように、地域全体を俯瞰したときに、バラバラに存在している情報の共有や、分断されているケアの統合化を推し進めていく努力も必要になるのではないでしょうか。

 

弊社はこれまで横浜市青葉区等の自治体やヘルスケア関連の企業から依頼を受け、地域包括ケアシステム構築を共にすすめて参りました。実態把握や課題分析だけにとどまらず、地域包括ケアシステムが真に機能するための現場目線、在宅医目線の支援を行っています。当チームには、在宅医療をしながらコンサルタント業務に従事する医師が数名います。今後も医療・介護現場の感覚を持ちながら、企業や自治体の皆様と実現可能で質の高いヘルスケアの実践をお手伝いさせて頂きたいと考えております。ご興味、ご関心のある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

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