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地域包括ケアシステムの作り方|MEDIVAの在宅・地域包括ケアコンサルティングブログ

2014年6月20日

在宅医療・企業コンサルティングチームの増崎です。

 

今春2014年度の診療報酬改定は、(7対1要件厳格化や、同一建物への訪問診療の減算等)一部の病院や在宅クリニックにとって波乱の内容となりました。しかし、地域包括ケア病棟入院料の新設や、診療所の地域包括診療料の新設等、今回の改定が根本的なレベルで念頭に置いているものは、明らかに"2025年へ向けた地域包括ケアシステムの整備"であると思います。

 

 

診療報酬面からの誘導も加わり、いよいよ明確化する地域包括ケアシステム整備への動きですが、メディヴァは2年前の2012年に始まった横浜市青葉区での取り組みを皮切りに、茨城県筑西市や、東京都練馬区等、現在様々なエリアで地域包括ケアシステムの構築支援を、自治体行政や地区医師会と協力しながら進めています。今回は、自治体職員の皆さまが参照されることを念頭に、これまで複数エリアの支援に関わってきたコンサルタントの肌感覚から、自治体単位での地域包括ケアシステム構築に有効と考えるメディヴァの各種支援を、手順に沿って整理してみたいと思います。

 

下図は、事務局と、協議会やWGを構成する地域の医療・介護の現場のコアメンバー、その外側に広がる一般の医療・介護多職種(フォロワー)、そしてさらにその外側にいる住民、というアプローチするべき対象者を縦軸に取り、支援メニューの流れを視覚的に図解したものです。各フェーズでどんな支援をしているか、順を追って説明しましょう。

 

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▼メディヴァ流、地域包括ケアシステム構築支援のイメージ図(流れの整理)

地域包括ケア(増崎)ブログ挿絵.png

 

①【"呼び水"としての初期調査】

 

 メディヴァは、何よりもまず、地域包括ケアシステムの"現状の供給状況の把握"と、"今後の高齢化によってもたらされる将来の需要の推計"を行い、そのギャップを正確に把握することから始めます。

現状の把握には、関係者へのヒアリング調査や、アンケート調査なども行いますが、インパクトがあるのが、自治体が保有している「死亡診断書データ」の分析です。この死亡診断書データは、人口動態調査死亡小票とも呼ばれ、統計法に則って、自治体から厚労省へ利用申出することで、分析にかけることが出来ます。

死亡診断書分析では、自殺や事故死といった"異常死"を除外した、純粋に病死・自然死で亡くなった市民が、「どこで」「どんな死因で」「誰によって」看取られたのか、クロス分析を行うことで、一般に公表されている自治体の衛生統計からはわからない、地域の詳細な"看取りの実態把握"が可能となります。

 さらに、患者調査病院票(※こちらも厚労省へ申出を行い分析)から、ベッドの利用状況等を把握し、それを元に、これから死亡者数が増加していく中、将来いつ病院ベッドでの看取りが限界を迎え(市民がベッドで死ねなくなる)、死亡者が在宅(自宅や施設)側へ溢れ出すことになるのか?それはどれくらいの人数なのか?といった各種の将来推計を行っています。

 この将来の看取り需要の増加に対応するために必要な在宅医の数、そして彼ら一人ひとりが在宅看取りしなければならない人数を推定すると、現状の実態と大きな乖離があることがわかります(特に高齢者増が集中する首都圏のベッドタウンエリアで顕著になります)。地域の医師会にとっては、このままこの乖離状態を放置することは、看取り難民の発生という事態を招くだけでなく、地域における非医師会勢力の伸長を許す事にもつながるので、このギャップの提示は医師会を地域包括ケアシステム構築へ向け巻き込んでいく上で、非常にインパクトがあると考えます。

医師会以外の地域の医療・介護主体に対しても、この数字ベース、ファクトベースでのギャップの提示は有効であると考えます。医療と介護の間に存在する、表面にはなかなか現れてこない積年の確執や誤解といった"溝"は、行政がお膳立てした「顔の見える連携」といった場作りを、すぐに"絵に描いた餅"にしてしまいます。しかしこの数字ベース、ファクトベースでの調査結果の提示によって、少なくとも、共通の課題意識と目標の共有を可能にし、「わだかまりもあれど、まずは話し合いましょう」というキッカケとして機能します。上の図で言うところの、"コアメンバー"の積極的コミットに基づいた持続可能な推進体制構築の"呼び水"の役割を、これらの調査が担っている、と言えます。

 

②【持続可能な推進体制のデザイン】

 

初期調査の結果を受け、それまで例えば行政主導で「頼まれたから」「世の中の流れだから」といった "受け身"で、地域包括ケアの協議会体制(実行委員会や部会、という名称の場合もあります)にアサインされていたかもしれないコアメンバーの方々の中に、「何とかしなければ」というプロ意識が喚起され、"主体的・内発的"な、推進体制へのコミットメントが期待できるようになります。

 この段階で、コアメンバーの心理的変化を上手く掴み取り、地域包括ケアの推進体制を、行政が"お膳立て"や初期の集中的なファシリテートがなくなっても、地域のコアメンバーのコミットメントによって支えられ、"自走"していくような、持続可能な推進体制へと、誘導していく事が重要と考えます。

 具体的には、全体意思決定を行う会議体(例えば協議会)と、ルールやツールの検討・活用を実務レベルで推進する会議体(例えばワーキンググループ。これは事案に応じて複数走らせるべきであると考えます)の階層構造を作り、下部構造ではそれぞれ地域の実務者が座長やファシリテーターを務めるような体制を組み上げていくべきだと考えます。特に在宅の診診連携や病診連携といった医療連携に特化したワーキンググループに関しては、医師会内部の既存の委員会組織と合体させる等し、また病院協議会(地域によって名前は異なると思います)のような既存の病病連携の合議体とも連携窓口を設け、地域包括ケアに関わる論点で積極的かつ継続的に相互連携できるような体制を構築するべきです。

 コアメンバーによる推進体制がこのように既存の医師会等組織と連携して、継続的・高頻度なシステム検討体制を展開させることで、ルール作り・システム作りの生産性が一気に高まります。こういった持続可能で生産性の高い推進体制を、地域の実情に沿いながらデザインしていくことが、大変重要であると考えます。

 

③【WGで検討される各種のルール・ツール・企画の支援】

 

推進体制のデザインで整備された各種ワーキンググループ(以下、WG)では、実際に当地での地域包括ケアシステム構築に必要な各種取り組みを、具体的に検討・推進していくことが求められます。取り組みは大きく、

■地域包括ケアシステム稼働時の連携ルール作り

■クラウド連携システムを含む、ICTの活用

■多職種のスキル向上を目的とした研修会、事例検討会の企画・開催

■多職種の顔の見える関係性醸成を目的とした交流会、ワークショップの企画・開催

■シンポジウム、講演会等、住民向けの啓発イベントの企画・開催

に分けられると思います(図で、5つのグリーンの丸で示しました)。それぞれが多岐に渡るので、順に説明してみたいと思います。

 

地域包括ケアシステム稼働時の連携ルール作り

ルール作りは、ある意味で地域包括ケアシステム稼働の基本ルールのような位置づけとなり、非常に重要かつ広範な作業領域になります。整理すると(下図)、在宅ケアのフェーズ毎に大きく6つに分類出来るかなと思っています(もちろん他にも決めていくべきテーマは個別に出てくると思いますが)。

▼フェーズ毎の連携ルールの分類イメージ

地域包括ケア(増崎)ブログ挿絵②.png

字数の関係でこれらの個別テーマについて詳細には触れませんが、メディヴァでは、WGの検討段階に、各テーマについて全国各地の先進事例の紹介と、多職種連携WS(※後述)で現場から吸い上げた課題やアイデアの紹介を組み合わせながら、WGメンバーに対し議論の素材を提供、ルールの構築を支援します。ルール化が一定のレベルまで煮詰まった段階で、実際にコアメンバー+その外側の少数のクローズドなメンバーを巻き込んで、作ったルールを実際に運用してみるパイロットスタディーを行います。適切なモニタリング・アセスメント体制を組んだ上で、パイロットスタディーからベストプラクティスを収集、課題の抽出や対応策の検討を行っていくことで、パイロットスタディー後の本運用へとスムーズに移行させていくことが出来ると思います。まとめられたルール群は、多職種連携ルールブックのような形で冊子化し、地域の多職種へ配布してもいいかもしれません。

 

ICTの活用

ルール作りと同じく、こちらもWGでシステムの選定や整備に関わる実務と検討作業を進め、クローズドなメンバー間(コアメンバー+α)で、パイロットスタディーを展開していくべきと考えます。

多職種連携のICTシステムの検討で何より重要なのは「使いやすい(使ってみたくなる)システムを導入すること」です。込み入ったシステムや、既存の連携から二度手間が発生するシステムは、結局現場の人に使ってもらえません。ミクシイからフェイスブック、ツイッター、そしてLINEに至るまで、SNSのコミュニケーションやユーザーインターフェースは日々進化しており(もちろん端末の進化も同時進行)、少し前の"定番"が、既に時代遅れになっていることもしばしばあります。これからの地域包括ケアシステム構築におけるICTの導入では、なるべく一つの巨大システムと心中するような投資は避け、低コストで、可変的で、気軽で、誰でも自分の端末で参加できる、そんなハードルの低いシステムが(場合によっては複数組み合わさって)地域に展開され広がっていく、といった方向性を目指すべきではないか、と感じています。

とは言え、(一部無料のものもありますが)システム導入費や、タブレット端末を事務局で整備、パイロット参加者に配布する等、ICTの整備には、ルール作りとは異なりそれなりの財源が必要になります。国や県の補助金を引っ張ってくる等、お金周りの実務で工数発生が予測され、それらを含んだ事務局のリソース確保に注意しなければなりません。

ルール作りと同様、システムの整備と運用要綱等のルール整備が一段落したら、適切なモニタリング・アセスメント体制を組んだパイロットスタディーを展開、ベストプラクティスの収集と課題抽出・対策検討(システム仕様修正含む)を行い、12年後には地域全体にシステム利用者を拡大させていくことになります。

 

■多職種のスキル向上を目的とした研修会、事例検討会の企画・開催

■多職種の顔の見える関係性醸成を目的とした交流会、ワークショップの企画・開催

 

 こちらは、いずれも多職種向けのイベントの企画開催ということでまとめて論じてしまいますが、前者が"具体的なスキル向上"を目的とし、各種ベンチマークを設定する等、目に見える成果が求められるタイプの企画で、後者は"顔の見える関係性の醸成"を目的とし、数値では測れない、「医療と介護の間にある壁・距離感といったものをゆっくりと溶かし・縮めていくような、そんな効果が期待されている企画になります。どちらも、コアメンバーの外側に広がっている地域の一般の現場の多職種の方々へリーチしていく企画になります。

 メディヴヴァでは、様々な目的に合わせ、研修会、事例検討会、多職種連携WSの企画や当日のファシリテート等を行っています。WS等ではKJ法を用いて広く意見(課題意識やアイデア)を収集・抽出することができるので、得られたデータを再度WGの議題に上げ、ルール作りの参考資料として再利用することも重要です。

 

シンポジウム、講演会等、住民向けの啓発イベントの企画・開催

 

 住民(市民/区民)向けの啓発も重要になります。初期調査からも、今後あらゆる地域で病床看取りが限界に達し、在宅側へと溢れ出していくことが示唆されます。仮に供給サイドの体制が構築されたとしても、需要サイドである住民の意識が、現状のような"人間は最期には病院で死ぬもの"という考えから変わらなければ、この溢れ出しは結局"難民化"してしまいます。「(たとえ独居でも)住み慣れた自宅で看取りまでいける体制を、地域として作っていきます」というシンプルなメッセージを発信し、コンスタントに地元の有力者や知名度のある外部講師を招いたシンポジウムや講演会等の企画を打っていくことが重要と考えます。

 

メディヴァでは、連携する医療法人社団プラタナスの現場ネットワークや、これまでの各種コンサルティングで築いてきた在宅医療・介護業界のネットワーク等をベースに、先述の多職種向けの研修会や講演会、住民向けのシンポジウム等で、講師のご紹介やコーディネートを行っています。

 

※他にも、地域の多職種や住民が使える「在宅医療の地域資源マップ」といったWebサイトの構築等の支援も行っており、オンラインからもオフラインからも、地域包括ケアシステムに触れていただく機会を増やすことが重要と考えています。

 

④【いかに地域にスケールアウトさせるか?】

 

最期に言及したいのが、冒頭の図でいうところの④の領域である、現場の多職種であるフォロアー層(もちろんその外側にいる住民も)を、構築するシステムにいかに巻き込んでいくか、波及させていくか、という視点の重要性についてです。初期調査の提示でしっかりと問題意識を根付かせ、コアメンバーによる持続可能な推進体制が出来て、そこでどんなに良い議論と仕組みを作っても、その外側にいる大多数の無関心層が振り向かない、乗ってこられないのでは、地域包括ケアシステムの構築は完結しません。

ここで言う無関心層の重要な一角を占めるのが、医師会の在宅に無関心な開業医のドクターです。医師会の主力を占める開業ドクターにとっては、多くの場合「何もわざわざ24時間対応が必要な在宅医療に参入しなくてもいい」というのが本音で、高齢化の進展で外来需要も引き続き増加することが予測される首都圏では、これは個々の経営判断としては至極当然な発想であると言えます。

この層をいかにして「自分のかかりつけ患者さんぐらいは、通院できなくなった時は在宅で診れる」という"外来メインの在宅医"に変えていくか。これがこれからの地域包括ケアシステムの構築のボトルネックになるであろうと考えます。

経験上、コアメンバーによる会議体やWGの"動いている感"の発信だけでは、この層を動かし、巻き込んでいくことは出来ません。いかにしてパイロットスタディーや、各種研修会や交流会に参加してもらい、しつこく何度も懲りずに地域包括ケアの重要性を訴えていくことで、ジワジワと波及させていくしかないと考えています。この際、初期調査のデータも役に立ちますし、(黄色の両端矢印で示す通り)住民啓発活動の効果で、患者や家族が「先生、在宅で診てください」と訴えるシーンが増えることも、中長期で効果が期待できると思っています。

 とにかく、地域包括ケアシステム構築支援の各種取り組みのかなりのエネルギーは、最終的にはこのボトルネック解消に向かっていると言ってもいいかもしれません。これまで支援してきた事例はまだまだ開始12年という状況で、この④の領域へのスケールアウトに関しては、コレという決定打を我々も持っていません。今後、支援を進めていく中でなにかポイントやコツのようなものを抽出できればいいな、と思っています。

 

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冗長になりましたが、冒頭の支援のイメージ図に沿って、メディヴァが重要かつ有効と考える地域包括ケアシステム構築支援のポイントを説明してみました。もちろんこれは、あくまでコンサルタントの肌感覚からある意味で強引に整理したものであり、実際他にも様々な解があると思いますし、当然ながら現実の支援では地域の実情に沿ってオーダーメイドに対応している、という状況です。とは言え、こういった整理が誰かの一助になれば、と思い、投稿してみた次第です。

追って、メディヴァの地域包括ケアシステム構築支援をご紹介する特設Webサイトをリリースする予定なので、こちらも乞うご期待ください。

 

 

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