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メディヴァの「ミャンマー乳がん健診」プロジェクトについて|MEDIVAの在宅・地域包括ケアコンサルティングブログ

2014年3月 9日

メディヴァの「ミャンマー乳がん健診」プロジェクトが3月10日夜10時~、テレビ東京(テレビ大阪)のジパング未来世紀で放映されます。http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/

 

番組上のストーリーでは「ミャンマー保健省の役人が、乳がん死を減らすために日本の医療に助けを求めて来た」という話になっていますが、実はそうではありませんでした。世界の中で日本の医療がおかれている立場は、かなしいかな、とても厳しいです。

 

私たちは、テレビに取り上げられるほど関心をもってもらえたことは素直に嬉しく思いました。でも、日本の医療の「パッケージ輸出」が世界で後れを取っている現状など、私たちがお伝えしたい大事なことが抜け落ちていることがとても残念でした。ここに改めてプロジェクトを振り返りつつ、ここ暫くのご報告をさせてください。

 

メディヴァの「ミャンマー乳がん健診」プロジェクトは、一昨年春に社長の大石が韓国の医療視察を行って、その進んだ医療と医療輸出の勢いに驚いたことから始まりました。


韓国ではサムソン、ヒュンダイ等が数千床の病院を建て、それを基盤として臨床研究、機器の開発が行われています。カルテ、レセプトの情報は電子化、一元管理され、ビッグデータの解析は医療の質の向上と管理のために使われています。韓国政府は医療を「外貨を稼ぐ輸出産業」として位置付け、得意な美容整形だけでなく、各分野で国を挙げてメディカルツーリズムを推奨し、機器だけでなく臨床技術、病院経営まで「パッケージ輸出」する仕組みを構築していました。

 

「日本の医療界はこのままでは、置いてきぼりになる」という大石の危機感を受け、私たちは「日本の優れた医療技術を海外に持っていくことはできないか」を考え始めました。


 メディヴァの知見のある分野で、輸出できるような優れた技術のある分野は?と考えた時、クライアントである医療法人社団プラタナスの健診機関、イーク丸の内で実施している乳がん健診が思い当りました。イーク丸の内は年間12000人もの女性に乳がんの健診を実施していて、マンモグラフィーは日本で最も高稼働で、学会への提供データも、極めて精度が高いと評価されています。


 
対象国には、ミャンマーを選びました。ちょうど国内のミャンマーブームが始まりかけたころで、ミャンマーに行ってみたかった、というのもありますが、非常に親日的な国であることと(スーチーさんのお父さん、アウンサン将軍は日本に留学していたことがあります)、ミャンマー国内で書かれた論文から乳がんは女性のがんの罹患率トップと非常に多く、乳がんが怖いという認知が市民の中にもあるということが分かったからです。

 

当時ちょうど、経済産業省が大石と同じ問題意識を持って「医療まるごと輸出」(=パッケージ輸出)のプロジェクトを募集していたので、助成金を受け、初年度はミャンマーへ調査に行きました。 

 

 ご一緒したのは岡山大学の名誉教授、岡田茂先生です。岡田先生は、ミャンマーの軍事政権が国を閉ざしていた間もずっとミャンマーの医療支援に携わって来られた方です。1996年よりミャンマーとの医療協力を開始し、ミャンマーにおけるC型肝炎の知識普及事業、高価なインターフェロンに頼らない肝炎瀉血療法の普及を行いました。また、それまで売血が行われていた同国に輸血の仕組みを整備し、様々な分野で多くのミャンマー人医師を日本に勉強のために岡山大学に呼び寄せてきました。大学を退官した今は認定NPO法人日本・ミャンマー医療人育成支援協会の理事長として、ミャンマーにおける医療支援のキーマンとしてご活躍されています。

 

私たちは岡田先生のことはネットで検索して見つけ、ちょうど東京にいらしていた先生に「ミャンマーで、乳がん健診をやりたいと考えている」と投げかけたところ、一つ返事でご協力の快諾をいただきました。岡田先生は、70歳を越えてらっしゃいますが、私たちよりもはるかにお元気で、ミャンマービールが大好きで、話が面白いとても素敵な方です。

 

初年度の調査事業の時は、ミャンマーの医療制度や乳がん、健診の実態等を調べました。幸い岡田先生の培ってこられた関係と、大石のマッキンゼーのコネクションで一回目の訪問の時に保健大臣や保健省の高官の方々にも面会できました。


驚いたのは、ミャンマーにおいてはマンモグラフィーによる検診の有用性が全く認識されていないこと。マンモグラフィー自体は無い訳ではないのですが、撮影技術、読影技術が低いため、「マンモグラフィーはひどく痛いだけで、何も写らない」と医療関係者も信じており、高額の機械にもかかわらず週数回の稼働しかないマンモグラフィーがほとんどでした。

 

大石が保健大臣や政府高官に行ったプレゼンテーションで「イーク丸の内では、米粒の半分の乳がんを見つけることも出来る」と言った時は、皆が息をのむのが分かりました。ミャンマーでは乳がんの早期発見ができないので、見つかった時には腫瘍は相当大きく、乳房全摘をするしかありませんし、予後もよくありません。

 

こうした保健省とのやり取りの中で実際に乳がん検診の実証実験に向けての道筋ができたため、今年度は再度経産省の助成金を受けて、実際のスクリーニングをヤンゴンで行うことを計画しました。マンモグラフィーを持ち込むだけでは、「痛いし、写らない」になってしまうので、放射線医と技師の教育にも力を入れました。放射線医と技師に来日してもらい、岡山大学と亀田メディカルセンターで教育をするとともに、現地のマンモグラフィーで撮った画像を富士フイルムのFCRを使いデジタル化し、日本に送って、遠隔読影し、ダブルチェックをするとともに答え合わせをし、精度を上げるようにしました。

 

遠隔読影は、亀田総合病院の放射線科に所属する戸崎先生にお願いしました。戸崎先生は、テレビ番組では「神の目」と表されていますが、乳がんの読影に関して世界的に有名な方です。本プロジェクトを非常に面白いと思って下さり、積極的に協力いただきました。実証実験は、岡田先生の主宰される認定NPO法人日本・ミャンマー医療人育成支援協会、岡山大学病院、亀田メディカルセンター、富士フイルム、メディヴァのコンソーシアムで取り組みました。

 

ところで、富士フイルム以外の日本のメーカーは、この取り組みにそう積極的には関与せず、外資メーカーとの差を感じました。日本のメーカーのなかでは、ミャンマーは「まだ発展途上の国」として位置付けられているため、「後回し感」が否めません。しかし、ミャンマーの民間病院等を訪ねると「日本から来たのか?日本人は『買ってくれ、買ってくれ』と言わないな。韓国人は見学に来たら、その後毎日のように売り込みが来るよ」と言われるのです。その方々は、日本人はうるさくなくて好ましい、というつもりだったようですが、韓国のアグレッシブな売り込み攻勢の後塵を拝している危機感を感じました。

 

韓国もアメリカも既にパッケージ輸出で医療教育と医療マネジメントをセットで医療機器を売ることが常識になっています。このような取り組みは医療者とオペレーション、マネジメントを繋ぐ仕組みと人材があって初めて機能します。GEのように自社内で全て解決できれば良いですが、日本医療機器メーカーはそれが出来ていません。「いいもの」を作るだけでは売れなくなくなっている世の中で、こうしたコンソーシアム形式での医療輸出は非常に有効なモデルで、広がっていくべきだと感じています。

 

メディヴァは本コンソーシアムでは「医療現場が分かり、医療界にコネクションがあるコーディネーター」としての役割を果たしましたが、今回のミャンマーの取り組み後、乳がんの分野以外でも、ベトナムやUAE等の各国の相談が来るようになりました。従来商社が果たしていたコーディネート的な役割より、もう少しオペレーションやマネジメントに関する知識が求められるようになっているのかもしれません。


 
いずれにしても、前回8月のご報告から少し間が空いてしまいましたが、その後順調にプロジェクトは進行し、12月に無事ヤンゴンのCentral Women Hospitalで、約200名のミャンマー人女性に対する乳がんトライアル検診を実施することができ、3名の乳がん患者さんが見つかりました(これは日本の5倍の確率です!)。

 

乳がん患者が数多く見つかったことにより、当初マンモグラフィーに懐疑的だったミャンマー保健省、医師会等も、乳がん検診を公的検診にし、日本の精度管理のシステムを導入し、順次ミャンマー全土に広めたいと言っています。ミャンマーにはかなり大きな金額のODA資金が日本から投入される予定ですが、その一部を乳がん健診整備事業に向けられることができればと思っています。始めはミャンマーに対する興味がスタートでしたが、思わぬところで、大きなプロジェクトになる可能性が出てきました。

 

ということで、以下は昨年8月以降の進捗を写真付きでご紹介します。

 

1) ミャンマー人医師・技師の研修


プロジェクトはまず、医師・技師の研修からスタートしました。具体的には、10月7日から11月22日まで岡山大学病院と亀田メディカルセンターで行いました。実は9月下旬に来日するはずだったのですが、ビザがなかなかおりず、準備をして待っていてくださった岡山大学病院のスケジュール変更など波乱含みのスタートでしたが、岡山大学病院では乳腺・内分泌外科の土井原教授の元、読影の基礎、マンモグラフィー撮影の基礎、治療の全容について実践・講義をしていただき、その上で亀田メディカルセンター乳腺科部長の戸崎先生の元でどんどん撮影と読影を行い経験値を積んでいきました。

 

岡山での研修の様子.png
亀田での研修の様子.png
 

2)啓発プロモーション


研修と並行して進めたのがミャンマー現地での啓発プログラムの開発です。まず10月中旬に保健省のリサーチ部局の元局長で今回の現地側責任者のDr Myo Khin、保健大臣の奥様で母子・女性医療の草の根活動を行うNGO団体MMCWAのプレジデントのDr Mon Mon Aungと同組織のヤンゴン代表のDr May Marlar、医師会女性部のDr Nu Nu Sweが来日し、日本の乳がん検診・治療の最先端を視察、日本のピンクリボンのレクチャーを受けました。

 

また、医療法人社団プラタナスの女性専門の人間ドック施設「イーク表参道」では、医師会女性部の幹部が、実際にマンモグラフィーを体験。「全然痛くなかった!」との感想でした。

 

イーク表参道視察の様子.png

 

こうして、日本での乳がん検診・治療および啓発キャンペーンについて現地幹部が学んだ結果、この後トライアル開始までのわずか1ヶ月半の間に、現地では啓発パンフレットやポスターの配布、ワークショップ開催、テレビ番組放映まで完璧に終了していました。こうした啓発活動の結果、12月のトライアルスクリーニング開始前には、200名の枠のところに500名以上の希望者が殺到。ミャンマー側幹部の能力の高さと、強い意欲に驚きながらも、トライアルスクリーニングが開始しました。

 

啓発ワークショップの様子

乳がん啓発ワークショップの様子.png
 

3)トライアルスクリーニングの実施


いよいよ、12月2日にスクリーニングが開始。メディヴァのメンバーと富士フイルムさんは1週間ほど早めに現地に入り、機器のセッティングとオペレーション確認。ヒヤヒヤしながらも画像が無事出たときは本当にほっとしました。現地の病院スタッフさんもピンクのカーテンをつけたり、掃除をしたりとはりきって準備してくれました。

 

フジフイルムさん導入のFCR

富士フイルム FCR.png 

戸崎先生がミャンマー人医師とディスカッション

ミャンマー人医師とディスカッションする戸崎医師.png
 

キックオフセレモニーでは、ミャンマー保健大臣もいらっしゃり、盛大に開かれました。今回のプロジェクトでも何から何までお世話になり、現地で保健省とCentral Women Hospitalを繋いでくださった上述の岡田先生がご挨拶されました。

 

キックオフで挨拶する岡田先生.png

 

さて、Central Women Hospitalでは、午後の時間を使って1日約10名がマンモグラフィー検診を受けました。今回は学会用データ取得のために、50項目におよぶアンケートが実施されました。

 

検査待ちの女性たち

検査待ちの女性たち.png
 

その後撮影された画像は、1次読影をミャンマー人医師が行ったあと、デジタル化されたマンモグラフィー画像がUSBデータで日本に送られ、亀田の戸崎先生が2次読影。その結果、悪性の疑いのあるものは生検後の病理検査で確定診断となります。結果として3名の乳がんが発見されましたが、日本では1000人に3名の確率であり、日本の先生方も一人見つかればいいくらいだとおっしゃっていましたのでびっくりする結果でした。遠隔読影も始め、USBが届くかどうか不安いっぱいでしたが、大きなトラブルなく、終了。

 

尚、アンケートでは、受診者の98%が「今後もマンモグラフィー検査を受けたい」と回答。検査についても、20,000~30,000チャット(2000円~3000円)であれば、96 %以上が支払う意欲があると非常にポジティブな結果となりました。

 

そして・・今年1月にはヤンゴンでの保健省主催の学会で乳がんスクリーニングのシンポジウムが行われ、また、新ヤンゴン病院の外科からの依頼によって、岡山大学土井原教授のチームが腋窩切除手術のデモンストレーションを行いました。こうして、検診だけではなく、今後治療までをカバーする全体のシステムを構築していくことになります。

  新ヤンゴン病院での手術デモンストレーション.png

 

そして、現在。ミャンマー保健省と医師会、そしてMMCWA(母子・女性医療の現地NGO)は乳がん検診を公的なものにしたいと、中期計画をつくっています。こちら側としてもその意思を実現すべく、資金面を整えるために、日本側で調整を行っているところです。

 

これからは、新しいフェーズに移行するこのプロジェクト。是非今後共見守り、ご支援頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

<過去の参考ブログ等>
2013年9月 「ミャンマーにおける「日本式乳がん診療パッケージ」実証プロジェクト」プレスリリース
http://www.mediva.co.jp/info/2013/09/post-180.html
2013年8月 「激変するミャンマー」
/hbc_blog/2013/08/post-22.html
2012年10月 「ミャンマー報告」
/hbc_blog/2012/10/
2012年8月ミャンマーってどんな国?
/hbc_blog/2012/08/post-10.html
2012年7月 「日本の医療技術/サービスの海外展開について」
/hbc_blog/2012/07/
2012年7月 「ミャンマーでの医療展開調査事業をはじめます!」
/hbc_blog/2012/07/post-8.html


 

 

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