プロジェクト事例

『多職種連携サポートから在宅療養ガイドブックの制作、看取りの実態調査まで』

~東京都練馬区の「在宅療養推進事業」支援プロジェクト~

高齢者人口の増加に伴い近年、在宅療養の環境整備に注力する自治体が増えています。本稿では、メディヴァが2014年より支援している東京都練馬区の在宅療養推進事業について、その背景や取り組みを紹介いたします。

東京23区で2番目に多い、約74万人の人口を抱える練馬区。同区の発表によると、2009年から2019年まで区の総人口は増え続けており、中でも増加が著しいのが「後期高齢者」と言われる75歳以上の人口です。

区の公表資料によると、2009年は60,119人だった後期高齢者人口が、2019年には85.813人に達しています。そして今後、後期高齢者人口はさらに増え続けていくことが見込まれます。以下のグラフは、東京23区の各区で2015年から2035年にかけて、後期高齢者人口がどれくらいの割合で増えると見込まれているかを表したものです。

グラフを見ての通り、練馬区における後期高齢者の増加率は23区内で最も高く、20年間で実に67.1%増加すると推計されています。こうした背景もあり練馬区では、他区以上に在宅療養の環境整備が急務と考えられる状況にありました。そのような中でスタートしたのが、区の地域医療課を主体とした「在宅療養推進事業」です。

出所:「日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)よりメディヴァ作成
http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson18/3kekka/Municipalities.asp

メディヴァは2014年より練馬区の「在宅療養推進事業」を支援しており、その内容は多岐に渡っています。以下、事業の内容をいくつか紹介いたします。

医療従事者向けの勉強会の開催、多職種連携サポート

「在宅療養推進事業」における大きな柱のひとつが「専門職ネットワークの充実」です。

区民に質の高い在宅医療を提供するために必要不可欠なのが、区内の医療従事者たちの(在宅療養に対する)理解、そして連携です。練馬区では、区内の医師や看護師、ケアマネジャーなど多様な医療・介護従事者たちのネットワークを強化し、また在宅療養についての知識やノウハウを共有するための取り組みを行っています。たとえば、定期的に開催している「事例検討会」では、有志の医療・介護従事者が一堂に会し、在宅医療・介護現場における具体的な「事例」をもとにディスカッションすることを通じて(ケーススタディ)、顔の見える関係づくりの構築や多職種連携と在宅療養についての学び(相互理解)を深めています。イベントの主体者は練馬区ですが、メディヴァはテーマの選定や企画、当日の運営等を、裏方としてサポートしています。

※2020年9月に開催された「事例検討会」

※「事例検討会」におけるコーディネーター兼講師による講演

2020年(令和2年度)からは、新型コロナウイルス感染症拡大を考慮し、会場参加者の定員を減らす代わりに、Zoomを利用してオンラインでも会の模様を配信。オンラインでの参加者もオンラインでグループディスカッションを行えるようにするなど、ハイブリッドな運営に取り組んでいます。

事例検討会の他にも、医療従事者向けの取り組みとして、区内の17病院における入退院連携のフロー(患者の入退院に際して各職種がどのように連携するか)を図式化した「入退院連携ガイドライン」の作成などを行っています。病院関係者はもちろん、ケアマネージャーや介護事業者の方々にもご活用いただくことを想定し、各病院の連携窓口や提出すべき書類など、必要な情報を整理しました。

区民向けガイドブックの制作、講演会の開催

医療従事者向けの取り組みと並行して、区民への情報発信や啓発活動も行っています。

グラフを見ての通り、練馬区における後期高齢者の増加率は23区内で最も高く、20年間で実に67.1%増加すると推計されています。こうした背景もあり練馬区では、他区以上に在宅療養の環境整備が急務と考えられる状況にありました。そのような中でスタートしたのが、区の地域医療課を主体とした「在宅療養推進事業」です。

練馬区は2015年、区民向けの在宅療養ガイドブック「わが家で生きる」を発行しました。このガイドブックは、在宅療養の仕組みや制度について解説したもので、メディヴァも制作に携わっています。2019年度(令和元年度)はガイドブックの改訂に向けて、新たに「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の重要性を紹介するページを作成しました。

ACPとは、事故や病気など万一のことが自分の身に起きたときのため、自分での判断や意思表示が難しくなったときのために、自身が望む医療や望まない医療について考え、周りの人とも話し合っておくこと、そのプロセスのことを指します。

厚生労働省も現在、「人生会議」というキャッチーな愛称と共にACPの普及を推進していますが、2019年12月には同省が制作した「人生会議」のPR用ポスターが、がん患者団体の批判を受けて「炎上」するという社会的な話題にもなりました。非常にセンシティブなテーマであるだけに「伝え方」は非常に重要です。区民向けのガイドブックで「ACP」を紹介するにあたり、私たちは在宅医へのインタビューを行うなどして現場の声を聞き、伝えるべき内容や表現を模索しました。

ガイドブック制作の他にも、区民向けの取り組みとして、区内の在宅医などを講師に招いての「在宅療養講演会」を定期的に実施しています。講演会では毎回、参加者のアンケートを取っており、参加者の方々からは「(病院ではなく)在宅で生きていけることを知り、参考になった」「エンディングノート(遺言書)を書いておこうと思った」といった意見をいただいています。

医療・介護資源や「看取り死」の実態調査

イベントの開催やガイドブックの制作など「目に見える」施策だけでなく、在宅医療を巡る区の現状を客観的に把握するための調査も継続的に実施しています。

具体的には、医療・介護資源の調査として、公開データをもとに区内の在宅療養支援診療所・病院数や病床数、訪問看護ステーション数などを算出し、その経年変化を追いかけています。また、区内における「看取り死」の実態を把握するため、厚生労働省が実施している人口動態調査(死亡票)をもとに、性別や年齢別の死亡者数、死亡した場所(自宅、病院、施設など)、死因(疾患)、死亡の種類(自然死、異状死など)といった項目別に、死亡者数とその割合を算出しています。

調査結果は、練馬区のホームページにおける「在宅療養に関する調査報告」でも公開されており、今後の施策を考える上での参考情報として活用されています。

本稿では練馬区の在宅療養推進事業を紹介しましたが、メディヴァは他にも、千葉県や神奈川県横浜市、東京都町田市など関東首都圏を中心に、在宅医療環境の整備や地域包括ケアシステム構築の支援を担っています。また、在宅医向けの医療機器開発やマーケティング、在宅療養支援診療所の運営等にも携わっています。在宅医療や地域包括ケアシステムに関するご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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