ヘルスケアの「明日」を語る

規制改革推進会議 ―オンライン診療を振り返るー

2021.07.30

 先週鴨川の亀田総合病院に行ってきましたが、すでに夏真っ盛りでした。今年の夏は緊急事態宣言が続くわ、高速料金が上がるわ、おかげで下道は渋滞するわ、でいいこと無しですね。私は、大人しくテレビでオリンピックを観ることにします!
 さて、7月で2年間務めた規制改革推進会議委員の任期が終わりました。医療介護WGの座長も交代します。2年前に頼まれた時は「えー、時間食うし、めんどくさいな、、、」と思ったのですが、意外と面白かったです。インパクトも出たのではないかと思っています。
 一番の有名案件は「オンライン診療」でしょうが、それ以外にも「プログラム医療機器(SaMD)」や、「介護の生産性(ICT活用)」、「施設看護師の看護業務の実施」、「救命救急士の活用」等、以前より気になっていた案件を扱うことが出来ました。
 オンライン診療は就任時に既に制度化されてはいたものの、「初診不可」、「3か月の対面を経た後にのみオンラインに切替え可」等規制が厳しく、診療報酬も対面の半分以下に設定されていました。その結果、レセプトの0.01%の占有率しかありません。医療介護WGでは厚労省を呼んでヒアリングしましたが、「使用実績がない。医療界からも、学会からも、患者からも具体的な要望はない」と突っぱねられる始末。医療界は医師会を意味しているのでしょうし、学会も概ね保守的で、せっかく戦略特区で行った実証実験も患者が高齢で思ったほどの反応が無く、、、。
 流れが変わったのは、新型コロナで医療界も患者も本格的に困り始めた頃です。患者に来てもらったら困るけど、来てもらわないと困る医療機関と、医療機関に行くと感染りそうで嫌だけど、行かないと困る患者と、双方の利益が一致し、臨時的緊急措置として一旦インライン診療が完全解禁になりました。ただ、この時も厚労省は「これはあくまでも緊急措置であり、いずれ新型コロナが落ち着いたら、元に戻すから」と釘を刺してきました。私個人としては何であれ、使用実績が増えることがまず大事かと。
 その後、議論は厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」に引き継がれました。私はそちらの委員にもなり、「新型コロナが収まった後のオンライン診療」の討議に参加しました。但し、厚労省の縦割り行政が原因で検討会は狭い範囲で討議をします。議論は「オンライン診療での初診を認めるか?」という一点に終始しました。例えば「診療報酬を上げないと普及しない」と発言すると「中医協で決めるものなので、当検討会では一切議論はしない」と封じられました。またオンライン服薬指導も別組織なので議論の対象外です。
 しかも検討会では非常に保守的な「安全性」を重視した意見が続きます。それに対抗する革新派は、規制改革推進会議の佐藤主光教授(一橋大学)と私、未来投資会議の金丸恭文会長(フューチャー株式会社)。こじ開けるように「かかりつけ医のいない若い人はどうするの?」、「初診も場合によっては可能では?」、「紹介状や健診結果があれば可能では?」、「かかりつけ医がいなかった場合は可能では?」と匍匐前進の議論が進みます。
 流れが変わったのは、今年の4月です。政治的なプレッシャーのせいなのか、厚労省の人事異動のせいなのかはよくわかりません。6月の初旬には規制改革推進会議の担当大臣の河野太郎氏が記者会見を行い、「かかりつけ医を原則」としつつも「それ以外の初診OK」を政府案として発表しました。具体的には予め「診療録、診療情報提供書、地域医療ネットワーク、健康診断結果等の情報」により患者の状態が把握できる場合や「医師、患者がオンラインでの診療が可能であると判断し、合意した場合」も可能です。その後、規制改革推進会議答申の閣議決定、厚労省の検討会もこの内容を追認する方向性となりました。
 では、オンライン診療が今後無事に普及するかというとそうとは言えません。また、診療報酬やそれに関わる色々な条件(対象疾患、オンライン診療の患者比率上限等々)は、今後の中医協の議論として残っています。これは夏以降の中医協の議論をウオッチしていく必要があるでしょう。
 一方で、河野大臣はオンライン診療と同時に、さらりとオンライン服薬指導の方向性を示しました。オンライン服薬指導は、従来「オンライン診療とセット」でしか使えない制度になっていましたが、「対面診療の後でも可」としました。実はこちらの方がオンライン診療よりインパクトが大きいのではないか、と個人的には思っています。
 診療の場合は、検査を行うなど対面が必須の場面は結構多いでしょう。また対面を希望する患者は要ると思います。しかし、服薬指導に関しては対面である必要性を感じている患者は少ないのではないでしょうか。診察が終わったら、さっさと帰って家から画面で繋ぐだけで十分。薬は後から宅配で届けてもらうか、近くのコンビニで拾いたい、と思う人は多いでしょう。まだ具体的な議論はこれからですが、薬局業界が激変する可能性を感じます。この流れが本格化すると、中小のパパママ薬局はますます危うし!です。
 さて、医療介護WG座長の任期は終わりましたが、引き続き専門委員としては残ることになりました。医療介護界で気になる規制があれば、是非ホットライン等まで教えてください。