産業医目線で考える、緊急事態宣言解除後の働き方

2020.06.09

医師・コンサルタント
澤井潤

5月25日、最後まで継続していた首都圏、北海道の緊急事態宣言が解除され、企業活動は、COVID19流行前に戻っていきます。その中で、今後企業と従業員はどのような働き方をしていくとよいか、産業医目線で考えました。今後も第2波、第3波の流行が生じることが予測される状況で、今後の企業活動では、下記の3点を念頭に置くことになります。

① 今後新型コロナウイルス感染症に罹患しないようにする
② 新型コロナウイルス感染症罹患者が出ても困らないようにする(+困る人を減らす)
③ 感染症対策をしつつも、より生産性の高い企業活動をする

これを労働衛生の5管理(作業管理、作業環境管理、健康管理、労働衛生教育、統括管理)に分け、企業と従業員それぞれの観点から、これからの働き方を考えてみました。簡単ですが、次のチャートにまとめています。

©MEDIVA

 

作業管理と作業環境管理

〜案外上手くいったテレワーク、今後は仕組み化して併用を〜

新型コロナウイルス感染症に感染しない業務体系と環境整備を目指し、企業にも従業員にも「3密回避行動」が求められます。具体的には在宅ワーク、テレビ会議の併用、顧客への「対面」訪問の回避、時差出勤の活用などです。

今回の緊急事態宣言でこれらの制度を導入された企業も多くあるかと思います。弊社でも導入当初は混乱があったものの、次第に「あれ?在宅ワークってけっこういけるんじゃないか?」、「通勤がないし楽かも」、「顧客への移動時間がなくなり、その分事務業務にあてることができる」といった声があがりました。とはいえ、急に始まった在宅ワークに対して、その作業環境が十分に整っている従業員は少なく、お恥ずかしい話ですが、私も小さいテーブルにPCを起き、ベッドに座っての日々でした。ややもすれば、プライバシーが映り込むテレビ会議でしたし、息子が頻回の登場となりました。

このような環境では継続が困難ですが、今後も3密回避のためにはテレワークの併用は重要なポイントであり、今後は各従業員のテレワーク環境の整備が求められますし、どのような働き方で従業員の生産性が向上するのかの検証が必要です(いつかは、プライバシーに配慮したテレワーク環境の職場巡視も行われるかもしれません??)。テレワークを併用する前提で、環境、生産性、業務管理、評価、腰痛対策、運動不足対策などの検討が必要です。

一方で、テレワークによる企業活動が困難である業種業態では、引き続き「濃厚接触者にならない」作業形態、作業環境が求められると言えますし、もう一度テレワーク困難な業務と、「実はテレワークできるかもしれない業務」を整理してみるのも良いかもしれません。

余談ですが、テレワーク開始以降、雑談、いわゆる「ちょっといいですか」が激減しました。企業の風土にもよるかとは思いますが、この雑談の減少は思いの外、メンタルヘルス不調に影響したのではないかと感じています。こういった普段何気なく行っていた行動・環境を、テレワーク環境でも再現することも、案外重要なのかもしれません。

 

健康管理

〜日本の健診と事後措置のスタイルが新型コロナ重症化予防に効果あり?〜

健康管理では「新型コロナウイルスにかからない、ひろげない」ことが最も重要ですが、「かかっても重症化しない(その可能性を低くする)」、「コロナウイルス以外の不調の対策を継続する」といったことにも目を向けなければなりません。

弊社代表 大石が、5月22日に投稿したブログ『新型コロナ 日本の重症化率が低い理由(わけ)』では、「日本人の死亡率の低さの一つとして日本人の健康的な生活や、健康診断、特定健診、特定保健指導が功を奏している」との言及がありました。この仮説が正しいとするならば(正しくなかったとしても)、健康診断の事後措置、特定健診、特定保健指導は今後も徹底して実施していく必要があります。少し言い過ぎかも知れませんが、すでに高血圧、心血管疾患、脂質異常、2型糖尿病、といった成人病疾患に罹患している方の重症化予防、喫煙者の禁煙指導に力を入れることは、「コロナ時代の安全配慮義務」と言えるのかもしれません。

ご参考までに、弊社保健事業部では、「効果の出る」、「寄り添い型」の特定保健指導、重症化予防サービスを、「WEBで」提供することができます。健康診断の事後措置でお困りの場合も、ご相談に応じることが可能です。

■ご参考
特定保健指導:WEB面談を実施しています(メディヴァ)
産業保健サービスのご案内 「機能する産業保健」を支援します(メディヴァ)

また、テレビ会議を利用することで、わざわざ場所を借り、講師を派遣しなくても、様々な健康セミナーを多くの従業員にお届けできることもわかってきました。弊社産業保健チームでは、契約企業様に様々な健康セミナーをお届けしています。在宅勤務に伴う運動不足解消のためのヨガセミナーは、特に好評です。

 

労働衛生教育

〜新しい働き方で働くことができる従業員教育を〜

今後も第n波が起こりうること、その際に適切な行動を取るためには、企業も個人も「正しい情報」を取得することが必要不可欠です。一方で、情報に溢れている現代において、正しい情報を取得するのは容易ではありません。ここは産業保健職を中心にして、一次情報のある正しい情報を従業員に伝えていくことが求められます。

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、宣言前と同じ働き方に戻るわけではありません。やり方次第ではありますが業務効率化による過重労働対策、通勤時間がなくなることによる余暇、睡眠時間の増加は、従業員の心身の健康にプラスに働くと考えられ、同じ働き方に戻すより「新しい働き方」を目指すべきです。

その上で新しい働き方(テレワーク併用など)でのマネジメント、生産性向上法」、健康管理などについてはまだわかっていることが少ない状況であり、後述しますが、是非組織として新しい働き方に対応できる力を身につけ、産業保健職がそのお手伝いができればと思います。

 

統括管理

〜新しい働き方は従業員の健康に効果あり?PDCA管理で効果的に〜

およそ2ヶ月間と前後の自粛活動は、企業活動を停滞あるいは減退させ、これを取り返すには多くの時間を要すると思います。しかし、この期間を無駄にせず、糧にするためには、緊急事態宣言下の働き方を振り返り、検証していくことが求められます。例えば新型インフルエンザの流行後に作成された企業も多かったBCPは今回機能したでしょうか。新型コロナウイルス感染症の第n波により、状況が悪化すれば、再宣言も起こり得るわけですから、記憶のあるうちに、できるだけ速やかに検証と改善をすることが望ましいと考えます。

また、新しい働き方も、ただ漫然とテレワークを継続する、といったことにならないようにすることが重要です。より労働生産性のあがる働き方や新しい働き方での従業員マネジメントなどについて、企業、産業保健職、従業員が一体となってPDCA管理を行なっていくことができるかどうかが、停滞した企業活動を回復させる大きな岐路になるのかも知れません。

緊急事態宣言解除後の働き方について、産業医の目線を入れつつ考えてみました。改めて、産業保健の役割というものが、また新しい時代に突入してきたのではないかと感じていますし、この経験を糧にして、よりよいサービスをご提供できたらと考えています。


執筆:澤井潤 Jun SAWAI
医師。株式会社メディヴァコンサルタント。2007年名古屋大学医学部医学科卒業。卒業後5年間、愛知県の病院で初期研修、小児科研修を修了したのち 国立成育医療センターPICU勤務を経て、都内クリニック院長を務める。2016年4月より、医師としての経験を生かしつつ、幅広く医療の変革に関わることを目指し、用賀アーバンクリニック、株式会社メディヴァで、小児科医兼コンサルタントに従事している。

■関連事業
メディヴァ 健康経営・健保組合向け支援サービス